「ねえ、生まれ変わったらどうする?」
唐突な質問をする彼女。
吸血鬼である彼女からすれば当たり前の質問かも知れないが、
少々いや多分に、普通の人類代表を自称している私には理解の外にあるものであった。
「うーん。どうだろうね?そんなことは考えたこともなかったから、分からないな。」
「ふう…ん。」
微笑を浮かべる彼女。得てしてこういう時には天使のようなかわいい笑顔の裏で、
悪魔のような考えが浮かんでいるものである。
もっともそうは言っても私が体験した限りではあるが、それでも被験体としては十分を越えて十二分であろう。
「私はどうしよっかなー。」
チラチラと上目で私を見る彼女。小さく整った口から白い歯が零れる。
「次はあなた以外の他の人を好きになろうかなー。そうして…」
舌がペロリと唇を嘗めた。
ドクリ、と心臓が鳴る。魂が震え、全身に流れる血液が冷たくなって逆流する。
「許さない…。」
彼女の小さい肩を掴んでそのままの勢いでベットに倒れ込む。
押し倒すなどどいうものではなく、衝動に任せて乱暴に叩き付けた。
「絶対、許さない!!」
彼女をマットレスに押しつけて大声で叫ぶ。
隣近所に聞こえることなどということは沸騰した頭の中からは消え去っていた。
叫んだために荒い息をつく私を、彼女はやはりニヤニヤと笑って見えていた。
「本当に…?」
試すように意地悪く言う彼女。
悪女のように、そして悪魔のように。返事の代わりに唇を奪う。貪るように口内を犯し、部屋に音が響いた。
「本当に私が欲しい?この命だけでなくって、生まれ変わってもずっとずっと?」
「他の奴になんて渡さない。」
「私が嫌っていったら?」
「そんなの潰してやる!無理にでもそうさせてやる!」
「えへへ…。」
だらしなく溶けた笑みを浮かべる彼女。口の端からドロリと唾が零れていた。
「あなたがそう望んだんだからね…。」
彼女が何か小さな槍のようなものを虚空から引き出す。
小さな、紅い槍。外見は大したことないようなそれが、私の運命を変えるものだということは、直感的に理解できた。
「あなたが悪いんだからね、私に騙されて人間じゃなくなっても、やっぱりまた挑発されて騙されたんだからね。
二度も私に運命を変えさせたんだからね…。」
彼女が槍を私に突き刺す。痛みも熱さも感覚すらも、何も感じなかった。
「はい、終わり。これで○○は私のものになりました。一生、これで私のもの。死んでもずっと次の運命でも私と一緒。」
彼女は前と同じように、グチャグチャになりながらひどい顔で笑っていた。
感想
最終更新:2018年12月30日 14:17