彼は鉈を手に幻想郷を逝く




彼は鉈を手に幻想郷を逝く

久しぶりだな……××」
「あぁ○○か……俺の感覚じゃ2年ぶりだが、そっちじゃ10年ぶりといった所か?」

目の前の痩せた烏天狗の青年、××を見下ろす作業着姿の一人の男は懐かし気に彼の名を呼び、呼ばれた烏天狗も久しぶりにであった友の声を懐かしそう聞いていた
男……○○の声は、顔の下半分を覆う青い防毒マスクで聞こえずらかったが烏天狗の××にはそれが自分の友の声だとすぐに分かった。

「10年も経っていないよ……俺の感覚じゃ7年ぶりに君を顔を見たよ。もっとも幻想郷じゃ時間の流れはアテにならんからな」
「そうだな……俺が空を飛べたのは3ヵ月前が最後で、それ以降この部屋に監禁されぱなっしだよ」

××は背中の衣服を突き破って生えた黒い烏の羽を忌々し気に見た。その翼は部屋に彼を部屋に縛り付けるように錆が浮かんだ金具と鎖で根元が拘束され、彼の手足にも重たげな枷が取り付けられていた

「あのパパラッチは……君を自由に空を飛ばせてくれないのか、君を無理やり烏天狗に変えたというのに」
「烏天狗にされたばかりの時は、文の監視下でなら自由に飛ばせてくれたけど……三か月前に元同類の女性を逃がすのに手を貸して以来……この様さ」

××は乾いた笑みを浮かべて、右腕を揺らすと右手の枷の鎖の金属音が小さく部屋中に響いた
○○はそれを防毒マスクで表情を隠しているが、その目は彼の惨状を嘆いていると××にも分かるように彼を見ていた

「お前は前からお人よしだからな…自分の立場も少しは考えて動けよ」
「はは……うまくやったつもりだったけどね、女のカンは恐ろしいよ。というかその防毒マスクはなんだ、仕事帰りか?」
「ちょっとしたおしゃれだ……似合っているだろう?」

二人は久しぶりのお互いの声を聞けてうれしかったのか、××は大きく笑い声をあげ、○○も防毒マスクでは隠しきれないほどの笑みを浮かべていた
ほんの数分ほどの雑談を交わした後、××は鋭い目つきで小さく切り出した

「雑談はここまでにして、本題に入ろうか……○○」
「なんだ?」
「ここ一週間で幻想郷で夫殺しが三件も続いている……お前の仕業か?」

××の疑問に○○の顔から笑みが消え、顔のマスクに完全に隠れた。少しの沈黙ののちに彼は口を開いた

「どうして、それを知っている? 文に監禁されていると言っていたじゃないか?」
「アイツが自分が作った新聞を持ってくるのさ……それであいつらが殺されたのを知ったのさ」

××はそういうと少し黙った後に、小さく呟いた

「なぜ殺した……被害者の一人の□□は俺達の親友だったはずだろう」
「親友だから俺が殺したんだよ……なぁ、××」

○○は静かにかつ、確信を持って質問を××にぶつけた

「お前は死だけが真の意味で自由を得られるとしたら、死を選んで自由を取るか」
「それは……」

ふと××は○○の右手に出会った直後にはなかったそれを握られている事に気づいた
厚みのある黒光りする長い鉈を○○は体の一部のようにしっかりと握りしめ、さらに言葉を続けた

「××……上部だけの言葉は要らない……君の本心を教えてくれ」
「……このままだと飼い殺し同然に数百年も生きるというのは実質死んでいるのと同じだな……もう楽になりたいよ」

そう言って、××は黙って頭を下げた……まるで自らの首を捧げるように。
そして、○○はそれを見るとすぐに右手の長鉈を両手で持ち直し、振り上げた。

「××……すべてが終わったら俺も後を追う、先に逝け」

そう呟き、両手に構えた長鉈を××の首に向かって振り下ろすと嫌悪感を感じさせる手ごたえが彼に伝わり、重い物が床に落ちた音が監禁部屋に響いた

全身に××の血が濡れた服から隠していた別の作業着に着替えると俺は、足早に山の中を走っていた……介錯に漬かった長鉈を担ぎながら、人だった頃では考えられない速さで妖怪の山を下る
この長鉈も本来なら捨てるべきだが、これは俺の役割を忘れないように俺があえて捨てず、友人達の介錯に使い続けたのだ

これだけの速さで走りながら息一つ乱れないのは、忌々しいがこの状況では助かる
幻想郷での夫殺し……否、幻想に囚われた友人達の介錯はまだ始まったばかり、ここで捕まる訳にいかない

「私の××をよくも、絶対に逃がしませんよ!!!!!!」

遠くで、××を幻想郷にしばりつけたあのパパラッチの悲鳴と怨嗟の声が聞こえてくる。思ったよりもばれるのが早かった……マスクで顔を隠したから、俺だとバレていないはずだが五感は人間のソレよりも鋭いのだろう
このままだと俺が殺されてしまう、急いで彼女と合流しないといけない
そう考えた時、目の前に例の人物……脇を露出させた巫女服を着た少女、博麗霊夢が立っていた
俺はそれを見てホッとした……助かったと思い、自然と足が止まった
それを見た霊夢がこうなる事を分かっていたように口を開いた

「○○終わったようね……嫌な予感がしたから迎いに来たけど、案の定……バレたのね」
「スマン、思ったよりも早く死体が見つかってしまった……天狗の足止めを頼めるか?」
「もちろんよ……妖怪となった大罪を犯したあなたを殺すのは私の役割。あんなパパラッチ天狗に殺させはしないわよ」

そう言って、霊夢は文の叫び声が聞こえた方へ飛んでいく……俺はただ黙って再び山の麓を目指して走り出した
俺はまだ死ねない……友人達全員を介錯する時までは、俺の後悔をすべて断ち切る日が来るまでは絶対に死ぬ訳にはいかない




以下はSSについての簡単な補足です

○○と××について
彼らは親友あり、同じ友人の△△と同じ時期に幻想入りしました
しかし、○○だけがすぐに外の世界に帰り、××は数日だけの滞在を選びました
だが××と△△は、幻想郷の少女達に魅入られて強制婿入り、妖怪化してしまう

一方の○○も外の世界に帰るも何の因果か、また友人や知り合いと幻想入りを繰り返し
彼だけが帰って、同行者達がヤンデレ少女に魅入られるというある種のループにハマってしまう

オマケに結界の影響で、時系列もバラバラに幻想入りしてしまう

こうした事が積み重なり、○○の中で後悔が蓄積した結果、妖怪となり、完全に幻想入りする


○○と霊夢の関係
基本的には、ヤンデレのそれだが束縛をする事はせずに○○を外の世界に帰還させる
○○が妖怪化後、霊夢が○○を退治することを条件に○○の介錯に協力する






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最終更新:2019年03月25日 21:17