かつてエリートサラリーマンだった○○は、とある災害に巻き込まれ幻想郷に迷い込んだ。
失意を抱えながらも里で書類仕事やネゴシエイターを勤める日々。
教養と能力を兼ね備えた○○だったが、1つ、困った事になっていた。
「○○ぉ……」(だから、違うと言うに……全く)
自宅に帰ると何処からともなく現れ、縋り付いてくる少女。
彼女の名前は
諏訪子。妖怪の山にある神社の神様だという。
だが、○○からすればとても神には見えない。妄想に取り憑かれ、有りもしない存在を○○に求めているだけだ。
(すまないねぇ、暫くそうして居てくれないか。報酬や加護は私の方で出す。諏訪子は祟り神も操るから暴れられると厄介なんだよ)
もう一人の神である
神奈子と、済まなそうな顔をした時折人里へ説法に来る巫女の姿が脳裏を過ぎる。
彼女ら曰く、自分はかつて諏訪子と子を為した男に瓜二つらしい。当時存在していた神奈子がそう言うのだから本当なのだろう。
こうして、○○と諏訪子の歪な共同生活が始まった。
最早居ない○○を自分に映し見る諏訪子は、○○に取って厄介な存在に過ぎなかった。
だから、気疲れの多い交渉人や書類仕事で溜まった愚痴を、彼女によく吐き出した。
諏訪子は怒りも憤慨もせず、ニコニコと笑いながら相づちを打つだけ。
○○もそれならとばかりに遠慮せず、開けっぴろげに諏訪子に接していった。
○○は子供の頃から優等生で、周囲の期待を一身に背負ってきた。
それは子供の頃から青年期に入ってからも同じで、彼は常にそれに応えて来ていた。
だが、その分自身の本音なども押し殺して生きている。
そんな彼の生き方は、幻想郷でも変わる事が出来なかった。
諏訪子、忌々しい同居人、彼女に対してだけ、○○は想いのたけをぶちまけていた。
気が付くと、仕事が終われば真っ直ぐ諏訪子が待ち伏せているであろう家に帰るようになった。
いつもはぞんざいな態度をとっていたのに、最近では態度が悪いがなにかにつけ構うようになった。
諏訪子は構えば構うほど嬉しそうに、深みにはまる様に依存してきた。
これが、最初は好意的か普遍的な感情を向けた対象であったら、こうにはならなかったろう。
歪んだ形で始まった同居生活は、半年を過ぎた頃1つの転機を迎える。
「……やってしまった」
1つの布団の中、裸で添い寝をしている諏訪子と○○。
幸せそうに自分の腕の中で寝ている小柄な少女。
何時も通りに晩酌をして、彼女に自分の内側を晒して。
それでも彼女は気味悪い位に笑顔を自分に対して向けてきた。
○○ととてもよく似た、全くの別人に対して。
凄くむかっと来た。例え、それが本当に自分の前世だとしても、凄く腹がたった。
気がついたら、全ての事は済んでいた。
彼女を寝床に引き込み、裸に剥いて荒々しく求めた。
諏訪子は何度も自分の名を呼び、愛してると囁いた。
自分の名前とよく似ていたから尚更腹が立ち、小さな身体を激しく責めた。
それでも、諏訪子の顔はとても満ち足りて穏やかだった。
そんな彼女に包みこまれ、○○は泣きながら諏訪子を抱き続けた。
「こいつ、だけじゃない……」
諏訪子の寝顔を見ながら、○○は呟いた。
「俺も、依存していたんだ……こいつが、欲しかったんだ」
最終更新:2010年08月27日 11:39