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「なぁ、これ見てくれよ」

「はあ、これはなんですの?」

「うーん、どこでも誰とでも文通ができるというか、まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか」

携帯、もとい、スマホと呼ばれる物をひょい、と紫に投げ渡す○○。紫はまじまじと、ぎこちない様子で画面を見つめている。

スマホの画面に映し出されていたのは最近流行り(?)のSNS、ツブヤイッターの画面だ。

「こいつ、俺の事をコケにしてきたんだよ。すっげーイラついてさ」

「だからさ、紫」

───こいつのことぶっ殺してくんない?

「容易い御用ですわ」

しばらくスマホの画面を見つめた後、○○にスマホを返すとスキマの中に紫は消えていった。

○○は紫の愛を受け入れた。

……外の世界で歩むはずだった余生をらせること、 そして、自分の言うことをなんでも聞くことを条件に。何も本気で言うことを聞くとは思ってなかった。これなら諦めてくれるだろうと高を括っていた。

……全く、妖怪の恋心というのは恐ろしい物である。

「……」

俺は王様になった。面白半分で大金を要求して、目の前にあっさりと札束を積み上げられたことを皮切りにして。

気に食わない奴はみんな紫に殺させた。気に食わないクラスメイトも、ネットで"俺様"に喧嘩吹っかけてきたやつも。目の前で命乞いだってさせてやった、ざまあみろ。

欲しいものはみんな紫に買わせた。きらびやかに輝く宝石に、名高いあのブランドのバッグ。

「……良かったのですか、紫様」

「ええ、むしろこうしてくれた方が助かるわ」

「……?」

「快楽というものは満たせば満たすほど薄く、つまらなくなるもの」

「有象無象共の命も、輝く宝石も、とってもお高い鞄だって、いずれ、いいえ、この調子だとすぐにでもガラクタになるわ」

「凡人の○○にどれだけの快楽が思いつくのでしょうね。気に食わないやついなくなった、欲しいものも無くなった、じゃあ、次は?」

「……」

「満たされない、つまらないだけの薄い快楽に染った心を操るのなんて訳ないわ」

「ねぇ藍、あなたはどんな○○が好きかしら」

「うふふ。楽しみね?藍」

───机の上に、床に、部屋の至る所に散らばった高尚な宝石にアクセサリー、誰のものか分からないスマートフォンを両手で救いあげると、藍の前にボトボトと落としてみせた。

すっ、と宝石の一つを手に取ってみるが、何かを思考する前に藍はそれを放り捨てた。




感想

  • 宝石に悪いおまじないでも掛かっているのかな? -- 名無しさん (2020-02-21 23:11:59)
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最終更新:2020年02月21日 23:11