インタビュー
そうですね、主人と会ったのは丁度3年前の事になりますね。その頃は私も森の外れにいまして、偶々主人と出会ったのです。
まあそこからはそれ程までには大したお話ではありませんよ。主人が良い人でしたから、他の里人とは違っている私も受け入れて下さって、
そしてこうしてあの人を家に迎えることができましたの。未練、ですか…。いいえ、それ程はありませんのよ。まさかあんなに悪い環境の、
魔法の森で新婚生活を送る訳にはいきませんからね。人里の方が主人には過ごしやすいですし。
それに主人に来て頂いてから、この家も大分繁盛しているのですよ。前は里の大店という位置づけでしたが、お陰様で、
今では色々な方に来て頂いていますので。やはりあの人がいないと駄目ですね。外界から来られた人は色々ご存じですから、
それでこんなに家を立派にして下さったのですよ。…ええ、勿論昔から贔屓にして下さっているお客様もおりますし、
それに店の者もしっかりと勤めてくれていますのよ。あれもこれも、主人が上手に引き出して下さるからこそですわ。世の中には、
宝の持ち腐れという言葉もありますし。
いえいえ、本当、私は大して何もしていませんよ。あれも魔女の真似事ですから永遠亭には劣りますが、幸い皆さんが買って下さるので、
有り難いことです。あれも主人が裏では色々と骨を折って下さっているのですよ。表からは見えませんが…。それに魔女のお茶会といっても、
昔とった杵柄というやつで御座いましょう。皆さん今では、主人の顔を覚えて下さっていますからねえ。周りの人も良い人に恵まれましたお陰で、
これまで厄介な事に巻き込まれることも無く大過なく過ごせましたし、人徳という物なのでしょうね。ん?母ですか…。実は病弱で人前には
滅多に出ませんのよ。私の母親としては、主人も一度きりしか会っておりませんし…。ほう…父親が本当の父親では無いと、そう仰りたいのですね…。
付き合いの長い射命丸さんでなければ、体に一つ、大穴が空いている所で御座いましたよ。
ふむ、ならば母親が人ではないと。それはそれは…。中々に無茶を仰いますね。妖怪と人との間から生まれた者は半妖になると、
相場は決まっていますでしょう?お日様が西から昇るような話しですことね。それに幾ら遺伝子が黒が優勢だの、やれ金が劣勢だのと、
外界の遺伝子工学でそう仰られましても、永遠亭の薬師以外には良く分からないことですよ。
ふふふ…、射命丸さんは本当に想像が豊かですね。千年前から金色の髪を持つ人間がこの里に居らずとも、現に私はこうしておりますからね。
妖怪と人間の境界を越える者が私の母親だとは…いやはや、空いた口が塞がりませんよ。私が八雲すら主人の為に利用しているなんて、
そのような噂は否定するまでも御座いませんよ。まあ、確かに母はいつでも私達を気に掛けて下さるのは事実ですが、それは親の贔屓目、
欲目というものでしょう?さてさて、いつもの文々新聞の三面記事となった所で、お終いにしましょうか。これ以上話していると、
母に怒られてしまいそうですし。昔から言うでしょう?壁に耳あり、障子に目ありってね。
感想
最終更新:2019年11月04日 11:43