あら、またお見えになられたのですね。本当に飽きもしないことですね。うちの家にはそれ程までに大したものはありませんよ…。
へえ…一日密着取材ですか…。それはそれは…色々と射命丸さんもなさっているのですね。天狗の方も色々と大変ですね。
まあそれでは、折角いらっしゃったのですから、少しだけ見ていかれますか?他のお家とは大して違いも無いかとは思いますが…。

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 今は朝食の時間です。村の人や店の者は既に食べてしまっているんですけれども、うちの主人は寝坊ですから。まあ他の店では考えられない
でしょうが、うちは特別ですからね。主人が「ぱそこん」というのですかね、河童の機械を少々叩くだけで、店の帳簿から請求書から何から何まで、
勝手に機械が計算してくれるそうじゃないですか。こっちなら店に十年勤めている手代が一晩中掛かって作ったものよりも、正確ですからね。
おまけにデータを機械にいれてしまえば、売上げの予測すらできるそうじゃありませんか。この前の年なんかは、麦の出来が少々悪いのを見越して
先に動いて下さっていたので、お陰様でそれ程痛手ではありませんでしたのよ。余所様は身代を切り崩して大分苦労されていらっしゃった
そうですから、主人に感謝しないといけませんね。

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 ああ、今から主人と一緒に出かけるんですよ。人里でしたら歩いていけばいいのですが、妖怪の山に行くにはちょっと遠すぎますからね。
私が箒で少し飛べば、主人も助かると言って下さいますので。随分と物珍しそうですね…、そんなに私が箒で飛ぶのがおかしいですか?
「それはおかしいんじゃ」とは…はて、一体どういうことでしょうか?主人は只の人間ですから、空から落ちたらひとたまりもありませんよ。
落ちないようにしっかりと腰紐を付けておくのは当然じゃありませんか。一重では万が一ということもありますからね、
こうやって何重にも結んでおけば、余計な不安をしなくても済むという寸法ですよ。こうやって…はい、これで大丈夫ですね、あなた。
ちょっと動きづらいのは仕方ありませんよね。嫌ですわ…他の女性がいらっしゃるから、主人が恥ずかしがっていますわ。ほら、あなた、
今から空を飛ぶのですから、シャキッとして下さいまし。何も他の女性を抱いているのではありませんよ。あなたの妻を抱いているだけですから、
恥ずかしがらなくても結構ですのよ。

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 いやはや、本当に夕方まで付いてこられるとは思いませんでした。敏腕記者の射命丸さんも、よっぽどお暇ですのね…。ええ、なにせ主人が
あなたを横目で見たのが数十回、顔が二十一、胸は三十五、腰に至っては二十九…まあまあ何とも、嫌らしいことでしょうね…。おまけに
射命丸さんが空中をはしたない格好で飛ばれるものですから、主人が三度も赤面しておりましたよ。どうして、ですって?妻が主人の手綱を、
しっかりと握っておくのは当然のことでしょう?全く…主人が劣情を催しそうに成る度に、私も母の能力を借りて分からないように、
主人の眼を塞いでいたのですからね…。あれほど迄に苦労するのは久々でしたよ。ええ、これですよ。この黒い隙間を丁度、黒目に当てるのは
中々大変なのですからね…。まあ、主人をいつも見ているのは妻の勤めですし、…それに主人の視界を私の眼に映すのは、主人の見ている世界を
見れるようで、密かに愉悦に浸れるものですし…。ふふふ…今も右目の視界の一部には主人が映っていますのよ。どうしてって、そりゃあ世の中には
色々と厄介な者はいますからね。人の家庭を壊すことが生き甲斐の泥棒猫、なんてものに引っかかれたら災難じゃありませんか。そうならないように、
しっかりと家庭を守ることが良き妻と母も言いますからね…。
 ああ、そうです、折角ですから母に会っていきますか。ええ、遠慮は要りませんよ。母も会いたいと仰っていましたし。ほら、あなたの後ろに…
驚きましたか…ええ、実は母は幻想郷の外から来た外来人でしたので、病弱ということにして人前には余り出ないようにしていましたの。私の金髪は母譲りという訳ですね。
外の世界ではマエリベリー=ハーンという名前でしたが、今では……。射命丸さんならよくご存じでしょう…?





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最終更新:2019年12月17日 23:19