小鈴「……………………」
阿求「なに?そんなに私の顔を見つめて。整った美しい顔以外に何かついてる?」
小鈴「いや、その……うーん……」
阿求「なによ、怒らないから言ってみなさいって」
小鈴「じゃあ言わせてもらうけど……阿求、あんたよく○○さんと夫婦になれたわね」
阿求「あら、そんなに意外?」
小鈴「意外というか、どうやって誑し込んだのかって話よ」
阿求「誑し込むなんて酷い言い草ね。私達のは純愛よ、純愛」
小鈴「いやまあ、あんたが○○さんに向けてる愛情は純粋過ぎるくらいだけども……他が苛烈過ぎて怖いのよ!」
阿求「そう?」
小鈴「そうよ。阿求の独占欲と嫉妬心は異常としか言いようがないわ」
阿求「愛する男性が他の女と仲良くする様を見て、心穏やかな女の方が少ないと思うけど」
小鈴「そりゃそうでしょうけど、金と権力にものを言わせて排除なんてするのはあんたくらいよ」
阿求「私と立場が入れ変われば同じように実行する女性は少なくないと思うんだけどなあ」
小鈴「……ともかく、そんな阿求と、○○さんはよく結婚してくれたなってことよ。あんた、実は○○さんのことも脅してたりするんじゃないの?」
阿求「私があの人に、愛する人にそんな無粋なことをすると思う?」
小鈴「ありえないわね。だからこそ不思議なのよ。一体どんな手を使ったわけ?」
阿求「……うーん、小鈴は勘違いをしているみたいだけど、そもそも○○さんは私が嫉妬深い女だと知らないわよ?」
小鈴「……へ?」
阿求「ええ、たしかに私は嫉妬に狂い、○○さんが私だけを見てくれればと常々思っている。障害になりうるモノも排除してきた。けれど、それを欠片でも○○さんに見せたことはないわ」
阿求「だって、そうでしょう?多少の嫉妬程度なら愛嬌と捉えてくれるでしょうけど、その嫉妬に身を焦がすような女を傍に置きたがる男性などいないのだから」
小鈴「か、隠してる?あんたのあの激情を?どうやって?」
阿求「我慢よ、ひたすらに我慢。○○さんが他の女と話している所を見た日にはそれこそ狂いそうになるけれど、本心を見せて○○さんが私に嫌悪感を抱くことに比べれば、その程度天国だもの」
小鈴「…………」
阿求「私の想いは異常だけれど、異常であることを認識していれば正常を装うことはできるから……どう?疑問は解けた?」
小鈴「……ええ、阿求の重すぎる想いも一緒にね」
阿求「それはよかった……ああ、よかったといえば、貴女、私の友達でよかったわね?」
小鈴「?……なんで?」
阿求「いやあ、私の旦那様って本が好きじゃない?それで、独り身の時から鈴奈庵にもよく通っていたと思うのだけれど……」
阿求「私はそれが妬ましくて妬ましくて……たまらなかったのよね」
小鈴「っ……!?」
阿求「……なんて、ね。まあ、私の想いもどんな人間かも知ってる友人が……敵になるなんてことはないわよね?」
小鈴「……も、ちろんよ」
阿求「うんうん。さて、聞くことも聞けたし今日は帰るわ。ああ、○○さんが来ることがあれば程々に仲良くしてあげてね」
小鈴「え、ええ。わかったわ。またね」
阿求「ええ、また」
小鈴「…………は、は。○○さん、来ないといいなあ……」
感想
- 夫の前ではできた嫁、敵の前では嫉妬の権化、実にいい -- 名無しさん (2019-12-24 01:58:43)
最終更新:2019年12月24日 01:58