―――1人暮らしの利点は、他人が居ないことだ。
面倒がない。煩わしい事がない。
―――1人暮らしの欠点は、他人が居ないことだ。
助けがない。いざという時、孤独になる。
質の悪い風邪を引いた時、俺はそれを痛感した。
現在体温39.0。全身が重い。体の節々が痛む。吐き気がする。視界が回る。
食事もろくに作れなかったので腹が減ってたまらないが、体は少しも動いてくれないのでどうしようもない。
体が熱い。熱くてたまらない。熱に浮かされた曖昧な意識の中で、虚空に向けて手を伸ばした。
辛い。寂しい。誰か。誰か。
暗転する意識の中で、誰かが手を握ってくれたような気がして――――
次に目が覚めた時、頭上には
メリーの姿があった。何故か膝枕。
額には冷えピタ。キッチンでは蓮子がお粥を作っている。
どうにも看病に来てくれたようだ。ありがとう、と掠れた声でお礼を言うと、
メリーも蓮子もなんでもないのよ、と微笑んでくれた。それが何故か、とても嬉しかった。
二人は風邪も治るまで献身的に看病をしてくれた。
治ってからもなし崩し的に蓮子とメリーと同棲関係にある。
一人暮らしは面倒がないが、やはり誰かがいるというのはいいものだ。
………しかし、疑問は残る。
彼女たちは【どうやって俺が風邪を引いたことを察知し】、
【どうやって鍵がかかっているはずの家に入ってくることができたのか】。
自分はそこまで勉強熱心という訳ではなく、大学を2-3日休むことなど頻繁ではないにしてもそれなりにある。
同棲する前は、彼女たちは家に遊びに来るほど親しい関係ではなかったはずだ。
それをピンポイントに、風邪を引いた時に限って?不条理だ。明らかにおかしい。
鍵の問題もそうだ。彼女たちに合い鍵を渡した覚えなどないし、そもそも合鍵自体作っていない。
本来我が家は密室状態であったはずなのだ。
……でもまあ。その疑問を口にしようとは思わない。
口にしてしまえばまた一人になるかもしれない。それは寂しいからだ。
感想
最終更新:2020年02月08日 22:18