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 夢の中で

 走る、走る、足を動かし懸命に走っていく。体の感覚は曖昧で、地面の感覚も不確かで、ただ僕はがむしゃらに走っていた。
彼女に会わなければ、それだけを思って足を動かしていく。行く先も考えずに、必死で僕は走っていた。
 ふと目の前に彼女が現れた。脈絡がなく、突然の出来事で、それは余りにも唐突で。だけれども僕は何も違和感を覚えずに、
彼女が居ることに安心していた。彼女が青い帽子を取るといつものように髪がサラサラと零れていた。青い色がトレードマークの
天界の服が、風も無いのにフワフワと揺れている。僕が彼女に手を伸ばそうとすると、彼女が何か僕に話しかけてきた。
「----」
彼女の口が動き、何かを僕に向かって言う。けれども僕には聞こえない。いつもならば聞こえる筈なのに。何か、一体何なのか。
僕が彼女に手を伸ばし、体に触れる瞬間に-

 手にした布団の感触で違和感を感じ、目を開けると暗い部屋が目に入ってきた。寝起きで強ばっていた体を動かすと、徐々に
視覚に情報が入り込んできた。まだ夜も明けない未明の時間。僅かに灯した部屋の明りが枕元に置いた時計を照らし、
都会の静かな空間を作り上げていた。夢で彼女を見たのは何故だろうか。ボンヤリとした頭で考える。それ程までに、そうだったのか。
それとも夢の出来事なのか。夢うつつの頭にとりとめのない考えが浮かび、闇に消えるようにして霧散していた。
夢の出来事だった。そう考えてもう一度眠ろうとした僕に、彼女の声が聞こえてきた。
「ねえ、○○---」
寝耳に水が入ったような衝撃で起きかけた意識が、何故だか急速に色褪せて、僕は無意識の中に引きずり込まれていった。






感想

  • 駄目でしたね。(達観) よ〜し此処からパラダイスだゾ〜。(現実逃避) -- 名無しさん (2020-05-31 15:56:36)
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最終更新:2020年05月31日 15:56