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時代の流れ


「嘘だよね…。」
「……。」
「ねえ、蓮子、嘘だよね!この時代に残るなんてこと!」
金髪の女性が向かいあった黒髪の女性に、涙を流しながら詰め寄っていた。訴えかける女性の激しい感情の渦に飲み込まれまいとするかのように、
蓮子は一歩後ろに下がり○○の腕を取った。男の体に隠れるようにする蓮子の行動に、メリーの感情が一層激しくなる。
「どうして…ねえ、どうしてなの!」
「……ごめん、メリー。」
短いながらも、しかし決定的な別れの言葉を告げられたメリーの体が揺れた。ハンマーで頭を殴られたかのように、体を震わせ頭を押さえるメリー
ドラマで見るかのように粘りけのある血が、メリーの頭からしたたかに流れ出しているようですらあった。血走った目で○○を睨むメリー
「あなたが蓮子を誘惑したのね…。私の親友を…。」
メリーの迫力に押されて蓮子の体は恐怖で震えていた。○○の腕が一層強く握られる。それを見咎めたメリーの視線が一層厳しくなった。
「返しなさいよ…。」
「私の蓮子、返しなさいよ!!」
○○の方に詰め寄るメリー。蓮子を後ろに庇うようにして、○○がメリーの前に立ち塞がった。
「こんな古くさい過去に残って、蓮子が無事で済むと思っているの?テクノロジーも進歩していない、娯楽も無い、病気になれば死んでしまう、
おまけに蓮子にはパスカードすら無いのよ。ただの小旅行で済んでいたのとは訳が違うの。解るでしょう?」
-野蛮な過去の人間の頭でも-嘲るようにメリーが付け足した言葉に、蓮子が叫んだ。
「○○はそんな人じゃない!」
「未来の人間を囲おうとするゲスじゃない。」
「違う!私がこの時代に残ろうと思ったんだから!私が残りたかったんだから!○○のせいじゃない!」
反論する蓮子にメリーが負ける物かと言い返す。
「そんなの一時の気の迷いよ!」
「私は本気よ!一生この時代に取り残されてもいい!」
「蓮子…。」
激しい蓮子の訴えによってメリーの言葉が詰まった。彼女の視線がグルリと回される。決して改心したのではない。むしろ逆の、違う道を探るように
取って置きの方法を選ぶかのように-弱点を突くかのように。
「そう。じゃあどうやって生きていくのかしら。蓮子は。」
勝ち誇ったかのように宣言するメリー。嬲るかのように蓮子に事実を突きつけていく。
「いくら昔の時代と言っても、この時代にだって戸籍は必要よ。フラリと迷い込んだ得体の知れない女性が一人、勝手に生きて行くなんて、
それこそホームレスになるしかないわ。正体不明の人物と一緒に住むなんてペットを飼うのとは違う。不可能よ。」
「大丈夫よ。」
「何がよ?言っとくけど、蓮子にはまともに生活するお金すら無いのよ。」
「お金位幾らでも稼げるわ。未来を知っていれば。ほら。」
蓮子のポーチから紙片が取り出された。数日前に購入されていたクジは、そこそこの等級の当選を射貫いていた。大口の当選金ではなく、
身分確認が不要な程度の当選金を蓮子が当てたことに気が付き、メリーの表情が曇る。
「それに身分だって大丈夫。この時代にはSBT生体端末なんてないのだから。役所なんてハッキングし放題よ。」
「あなた、それ本気で言ってるの?!」
「ええ、本気よ、メリー。」
自分の右手を見せつけるようにして、○○の影から蓮子が出てきた。メリーに反対するために。自分の意思を貫くために。



メリーの顔がはっきりと歪んだ。







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最終更新:2020年05月19日 23:12