○○「・・・」
そこは、地下室だった・・・
男が鎖で繋がれていた。
お空「○○、晩御飯持ってきたよ・・・」
○○「・・・」
誰の言葉にも返事をしなかった・・・
○○「・・・」
そこは地下室だった・・・
男が鎖で手足をつながれていた。
服は白くて質素なTシャツにGパン。
お燐「お兄さん・・・だいじょうぶかい・・・?」
○○「・・・」
誰の言葉にも答えなかった・・・
○○「・・・」
そこは薄暗い地下室だった・・・
男は手足を鈍く光る鎖で拘束されていた、鎖の先は壁へ繋がっていた。
顔は下を向いてうつむいていた。
さとり「○○さん、様子を見に来ました・・・」
○○「・・・」
誰の問いにも答えなかった・・・
○○「・・・」
○○という外来人が鎖につながれていた。
髪は黒く、長く洗っていないのか、ぺったりとしていた。
手足はだらん・・・と、床にだらけていた。
こいし「○○・・・だいじょーぶ・・・?」
○○「・・・」
誰の問いにも答えなかった・・・
○○「ははは!もっといけるだろ!勇儀!」
勇儀「ああもちろんさ!」
ヤマメ「もっともっと~♪」
宴会の真っただ中、
地霊殿ではよくある光景。
その中に、簡素な黒いTシャツにGパンという不釣り合いな格好の・・・外来人がいた。
勇儀「さぁ!返杯だ!」
○○「おぅ!ングング・・・」
パルスィ「あんなに酒に強い○○たちが妬ましいわ・・・」
その男は、顔も普通髪も黒い目も黒い、普通の日本人、だが、常人とはかけ離れて酒に強かった。
鬼に匹敵するほどに。
○○「おら!さぁ返杯!」
勇儀「いいだろう!」
それだけで地下の連中にはなじむことができた。
一部を除けば…
○○「おう、いらしゃい。」
お空「うん、こんにちは~」
○○は生計を立てるために店に頼みこんで、いわゆるチェーン店的なものを開いた。
売上を30%回すという条件で手伝いをするようなものだ。
店主も売り上げが向上してまんざらではない様子。
○○「今日は何がいリようかな?」
お空「ん~と・・・なんだっけ・・・?」
○○は、差別とかをしなかった。
地霊殿近くに店を広げたため、地霊殿の物たちが利用することが増えた。
それも店主の喜ぶ要因の一つ、さとり達は地下の嫌われ者、誰も近寄りたがらない、向こうからも近づかない、しかし、彼女らも食べなければ生きていけない。そんな彼女たちに買い物は苦痛だった。
突き刺さる目線、聞こえる悪口。
そして何より、その主さとりには心の声が苦痛だった。
○○「また忘れたのかい?鳥頭だなぁ・・・」
お空「鳥頭じゃないもん!」
そんな中、彼らのあいだを○○がとり持つことになった。両方にとっていい出来ごとだった。
○○「おう、さとりちゃんいらっしゃい。」
さとり「ひさしぶりです・・・」
そんな彼は心の声も綺麗なのか、さとりも彼には近づけた。
以前無理やり入り込んできた腋や黒白は・・・例外として。
○○「ん?俺と一緒に夕食?」
お燐「さとり様が一緒に食べたいんだってさ。」
こいし「一緒に食べようよ○○。」
店じまいの時間、売上金を店主に渡し、帰り支度をする○○にお燐とこいしが呼びかける。
○○「なるほど・・・うん、ごいっしょさせてもらおうかな。」
お燐「いや~わるいね!」
こいし「手ぇつないで~!」
○○「はいはい、じゃあ行くか・・・」
彼らは地霊殿に向かって歩いて行った。
さとり「お忙しい中申し訳ございません・・・」
○○「店じまいした後だし、今日は予定もなかったから、それに人の頼みは断れなくてな。」
白い歯を見せながら笑う○○の顔につられてさとりもくすくすと笑う。
さとり「フフ・・・では、食堂はこちらです。」
さとりは、いや、さとりに限らず地霊殿の者たちは○○に好感を抱いていた。
○○は口で言うことばと心の声が一緒だ。そして○○はさとりの事を気持ち悪がらない。
さとりにとってはそれだけでありがたいことで、○○を意識した。主が気にすればペットもつられる。
姉が興味のあるものは妹も一緒に。
○○「いや~、おいしかった・・・」
腹をパンパンとたたいて椅子にもたれかかる○○。
お空「お腹一杯・・・」
お燐「いつもおいしいけど、一人増えるだけでもおいしく楽しく食べれるね~・・・」
こいし「そうだね・・・毎日こうだといいかも・・・」
さとり「そうね・・・」
○○「いやほんとごちそうさま。」
五人で思い思いに食後の談話、温かい時間が流れる・・・
○○「おっと、もう時間だな…そろそろおいとまするよ。」
さとり「そうですか・・・!?」
その瞬間さとりの笑顔が引きつった表情にいなるのに気づいた人はいなかった。
こいし「え~、もっとゆっくりしていけばいいのに~・・・」
お空「今日は止まって行きなよ~。」
○○「悪いね・・・明日朝からはずせない用事があるんだ・・・」
お燐「ん~・・・なら仕方がないねぇ・・・あたいが送っていくよ♪」
○○「ああありがとうな。」
さとり「まって!」
そういって部屋を出ようとする二人いを、珍しくさとりが大声で呼びとめる。
○○「うぉう・・・どうした?さとりちゃん。」
さとり「・・・○○さん、大事な話ってもしかして、店主さんとの店関連の話ですか?」
○○「え・・・?」
さとり「ちょっと小耳にはさみました。○○さんがもっと売るバリエーションを増やしたいとぼやいていたことをね。」
○○「あ・・・うん、そうなんガァ!!」
言いきる前に、さとりの放った弾幕が額を直撃し、派手に横転しながら○○は倒れた。
こいし「お姉ちゃん!なにやってるの!?」
息を切らしながら眼を血走らせる姉に妹が呼びかける。
さとり「・・・○○が嘘ついた・・・」
お空「え・・・?」
さとり「さっき用事があってて言うとき、○○は外界に帰るって心が言ってた、それなのに!!」
お燐「そん・・・な・・・」
四人と倒れた一人の部屋は、冷たい空気に覆われた・・・
○○「・・・ここは?」
目が覚めて、腕を上げて痛む頭をさすろうとして。
○○「ん?・・・なんだこれ・・・?」
手足に鎖が巻きついてるのに気がついた。
○○「なんだこれ・・・!?なんなんだ!?」
必死に取ろうとするが、音を立てるだけ取れる気配は一向にない。
さとり「目が覚めましたか・・・?」
その部屋の中に、さとりがはいってきた・・・後ろにはこいしもお空もお燐もついてきた。
○○「さとりちゃん・・・?みんな・・・?」
さとり「今から私の質問に、ちゃんと答えてください・・・嘘をつかなければ何もしません・・・」
何か言いたげな○○を無視し、さとりが一方的にしゃべる。
さとり「なぜ今○○さんはここにつながれていると思いますか・・・?」
○○「・・・わからない・・・」
ぽつりと答える○○。地下室の湿った空気が漂う。
さとり「・・・では次、あなたはなぜ嘘をついたのですか?」
○○「嘘・・・ばれちゃった・・・?」
相変わらず茫然とした表情で○○が言う。
さとり「質問に答えてください。」
思い切り平手打ちを喰らわすさとり。
お燐「さとりさま!暴力はダメです!」
○○「・・・色々言って心配かけるより、黙って行った方がみんな何も思わないって思って・・・」
頬を抑えながら○○が言う。
さとり「・・・これも嘘じゃないですね・・・じゃあ最後です・・・これが重要。」
座り込む○○と顔が向きあう。
さとり「なんであなたは外界に帰るんですか?」
○○「・・・向こうに残した・・・家族が心配でグゥ!!」
顔にぶち当たった弾幕で思いっきりのけぞる○○。
さとり「うそだ・・・・」
手を○○にかざすさとり。三人も茫然としている。
さとり「嘘に決まってます・・・」
嘘じゃないとさとりはわかっていた。
彼の心が嘘を言ってなかった。
さとり「うそだ・・・!!」
手から弾幕を撃って○○にあてる。
うめき声が響く。
さとりの眼から涙があふれる。
さとり「うそだぁ・・・!!」
人間でありながら、差別しなかった○○。
心が嘘を言わなかった○○。
まるで家族のように接してくれた○○。
さとり「家族が心配・・・うそだ!!」
お空「さとりさま!やめて!○○が死んじゃう!」
はがいじめにして必死に止めに入るお空。
息を荒げて涙をこぼすさとり。
大量弾幕を受けて横たわる○○。
こいし「・・・お姉ちゃん・・・」
さとり「うそよ・・・うそよ・・・」
お燐「・・・」
○○「だしてくれ…ここから出してくれ…」
さとり「うるさいです…想起「恐怖催眠術」」
○○「ぅ…あ…ああああああああ!!」
顔を見せるたびに出してくれという○○を黙らせるためにあの弾幕の痛みを思い出させる。それで恐怖でのたうちまわっておとなしくなった○○に、
さとり「帰らないって、約束すれば、もうここから出してあげます、ですから・・・」
○○「いやだ…俺は帰るんだ…」
それを繰り返すうちに、○○は壊れていった。
痛みから逃げるため、恐怖から逃げるため、何も感じなくなった。なにも答えなくなった、何も聞こえなくなった…
○○「・・・」
そこは地下室だった。
さとり「○○さん…聞こえますか?」
さとりがそばに立って呼びかける。
○○「・・・」
誰の言葉にも答えなかった…
最終更新:2010年08月27日 11:52