稗田阿求が上白沢慧音に、最上級の悪意をぶつけて。暴れても費用は神霊廟と命蓮寺に請求すると言う、また出来ると言う、格と立場の違いも同時にぶつけられてから。
そこから数えて丸三日も経ってしまった。その間中、恐らくはなおまずい事に、上白沢の旦那は○○とも会えていなかった。
いや、会おうと思えば会えた。あそこまでの暴言を冷静に叩きつけておいて、明日からどうするのだろうかと、不安視していたが。
恐怖すら覚えるほどに、冷静さを維持していたからこそ。稗田阿求は上白沢慧音以外には悪意をぶつけなかったし、また見せてもいなかった、つまりは隠し通せたのだ。

無論、稗田○○に関しては例外的な立ち位置である。やや怒りをにじませながら、滅茶苦茶になった室内で、慧音を別室にて待機させながら――その際、一時的とはいえ離れる際、旦那の方から慧音に口づけをした。慧音は非常に喜んでくれた。
そして上白沢の旦那は稗田阿求が一体何を言ったのか。それらを一言一句、聞かせてやることに成功した。
完全記憶能力者の稗田阿求や、高名な歴史家であり、なおかつ妻である上白沢慧音ほどではなかったが。
あまりの怒りに、自分の記憶能力が研ぎ澄まされてくれたらしかった。

上白沢の旦那が稗田阿求からの暴言と悪意と、恐るべきはその冷静さを伝えたとき。
○○、もしくは稗田○○は。目をぎゅっと閉じて、恐れていたことが起こったと言う様な反応を見せてくれた。
この状況を問題だとは思ってくれているのは、彼が稗田阿求に対して明らかに甘い――立場を考えれば甘くならざるを得ないのだろうけれども――とはいえ。
上白沢の旦那からの報告を深刻そうに受け止めてくれたのは、間違いなくこの旦那にとっては朗報であった。失望なんていう感情を抱かずに済んだともいえる。
しかしそこからの○○のどっちつかずとしか言いようのない振る舞いは、実に上白沢の旦那の心を苛立たせた。

重々しいため息に嫌々と言う気配を見て取ってしまったのが、考えすぎかもしれないけれども若干気になったが。
それでも○○は意を決して、まっすぐと稗田阿求の方に向かったが。
「聞きましたか?私が、上白沢ご夫妻にぶつけた言葉を」
まず最初に声を出したのは、稗田阿求の方であった。それが上白沢の旦那には不満で仕方がなかった。
結局は彼女が船頭をすることに、今回に至っても、唯々諾々(いいだくだく)と従うのだろうと言う気配を、予測を、感じ取ってしまったからだ。
○○は阿求からの『聞きましたか?』で始まった一連の言葉に対して、やや挙動不審の態度を見せた。
本来ならば○○が、おそらくは幻想郷の力関係を考えれば○○のみが、稗田阿求にこのことを意見できるはずなのに。
稗田○○は――そうだ、『稗田』○○だ――横目で上白沢慧音の夫である自分を気にしつつ、結局は稗田阿求の方ばかりを見ていた。
この時点でもはや、期待は出来ないなと断じるほかはなかった。実に腹が立った、その腹立ちこそが三日間もの間、こちらからですら○○に接触を持たなかった最大の理由だ。

「ええ、まぁ。謝りませんからね?」
結局のところ稗田阿求も、自らの夫である○○がひどく甘い事を知っているから。この言葉も○○の方向ではなくて、そのやや後ろで腕組みをしながら明らかなにらみつける表情をしている上白沢の旦那の方を見ながら。
絶対に謝らないと宣言した。○○は上白沢の旦那に対して申し訳ないと思っているのか、それでいて何もできないのがいたたまれないのだろう。
気にはしてくれているのは、フルフルと震える背中からうかがい知る事は出来るけれども。こっちを見てくれないのには、ますます腹が立つ。
「……期待はしていない。ああ、全く、期待してないよ」
完全にわざとらしく、上白沢の旦那は二回、それも全く同じ意味の言葉を出した。
一度目は固い口調、つまりは稗田阿求に対して。二度目はやや砕けた、間違いなく○○に対して。
それでもまだ友人だと思いたい、それもまた事実なのだから困る。


しかし稗田阿求はまだこちらを見続けている、相変わらずニヨニヨとした笑顔を見せながら。
嫉妬を全力で上白沢慧音にぶつける事が出来て、長らく感じていた胸のつっかえをすべてぶちまける事が出来て、非常に気分が良いのだろう。
ニヨニヨとした笑顔は、むしろさっきより強いぐらいであったし。
多分稗田阿求は、上白沢の旦那に対しても下に見るような感情があるのだろう。だからニヨニヨとした笑顔が消えないのだ。
なるほど確かに、稗田阿求が全力で音頭を取り、根回しを行っている点は絶対に見逃せないが。
稗田○○は人里一番の名探偵、数々の依頼人の抱える厄介ごとを解決してくれる、最後の砦だ。
そして実際、解決した数だってたくさんある。名声はもはや十分、むしろまだまだ稗田阿求はその名声を高めにかかるだろう。

それと比べて上白沢の旦那は、あの上白沢慧音の旦那であると言う点以上の価値をイマイチ見いだせなかった。
寺子屋で教鞭は取っているが、それだって元々慧音がやっていた仕事に乗っかっているだけの話だ。
自分自身で思い付き、目指し、そして得た立場ではない。上白沢慧音との婚姻ですら。少なくとも人里の人間の主観でものを見れば、そうなってしまう。
――いや、最後の部分に関しては慧音の主観ですらそうなってしまうだろう。
幻想郷にしては全くもって珍しい、珍しすぎて組織運営の毒となりかねない、唯物論的価値観で上白沢の旦那は生きていた。
いずれは排除される運命であったろう、唯物論を捨てない限りは。
それが排除されずに済んでいるのは、上白沢慧音が婚姻を結んでくれたことによるものである。結局どこまでも自分は彼女に守られていたが。
……それに関する、個人的な慚愧(ざんき)の念は今のところは関係がない。重要なのはどう考えても妻が馬鹿にされたことである。

このままどちらかが根を上げたり、慧音が心配になって見に来るまで、腕を組みながらにらみつけを続けてやっても良かったが。
幸い?にも稗田阿求の方が場を動かしてくれた。
「ねぇ、○○。私は今の状況に満足していませんのよ?私は今よりもずっと、あなたを、○○を、百年先でも言の葉に上るような存在に仕立て上げられるのですよ?」
そう言いながら稗田阿求は、明らかに上白沢の旦那の方を見てきた。稗田○○と比べたら、上白沢の旦那の存在は実に小さいとでも言いたいのだろうか?
「実際その通りだよ。研究者でもない限り特に覚えたり、調べたりもしないかもな。まぁしかし、慧音の旦那でありつつ名探偵様の相棒だから……それなりに?かな?」
稗田阿求の悪意を確かに感じたから、上白沢の旦那としても何も言わないわけにはいかない。
けれども慧音が雲居一輪の発した、自分への暴言に対して即座に怒りを爆発させたのと同じように。
上白沢の旦那も自分自身への何かに対しては、案外耐える事が出来た。
稗田阿求ほど、悪意のこもった笑顔を上手く出す事は出来なかったが。しかし稗田阿求に対して、目線をそらさずにいる事こそが、今できる最大限の抗議だとは理解していた。
さすがに阿求が一点を見つめたまま黙り続けたら、稗田○○も阿求の見つめている先が気になり、ようやく上白沢の旦那の方を見てくれた。

しばらく、上白沢の旦那と○○の間で、無言状態ではあるけれども目線を合わせ続ける事が出来た。
そのうちに、ふと思った事があった。
上白沢慧音も、そしてその旦那も。自分自身に対する悪意や暴言に対しては、なかなかどうして耐える事が出来るけれども。
自分以外、それも婚姻を結んだ伴侶(はんりょ)に対する場合はどうなのかな?と思った。
言おうか言うまいか、相手は稗田阿求である以上はどうしても、二の足を踏んでしまったが。
稗田阿求の体の弱さを主たる理由とした暴言を吐けば、○○も反応してくれるかなと期待してしまった。
そしてなお、嫌らしい事に。稗田阿求の様な嫌らしい笑顔が、この時にはものすごく自然と、苦労せずに作る事が出来た事であろう。


そんな自然と出てきた悪意のある顔を見たら、○○が急に反応してくれた。少しうれしくなったが。
「やめてくれ、阿求に何かを。言ってやろうぐらいの事、考えたはずだ。顔を見ればわかったよ、悪意が見えた」
慌てながら歩み寄りながら、自分を明らかに止めに来ている言葉を聞くに及んでは。少しのうれしさも霧散した形だ。
「気分が分かったはずだろう?けれども悪意を先にぶつけてきたのは、そっちだ。雲居一輪だけならば、まだ、何とかなったのに」
だから上白沢の旦那としては全くもって珍しい事に、○○に対して本気の苛立ちをぶつけた。
今までの事は、そうは言っても人助けと言う部分が根っこにあったから。苛立ちが全くなかったわけではなかったが、それでも茶化せる程度の物だった。
しかし今のこれは違った、妻である慧音への暴言が確かに存在しているからだ。

「大丈夫だよ、その苛立ちはそう長い事は続かない。君たちは長生きしろ」
けれども○○は……自分よりも間違いなく、稗田に毒されていた。稗田○○にはもはや覚悟が存在していた。
「妻である阿求の体が弱い事は重々承知している、承知したうえで俺は阿求と婚姻を結んだ。けれども阿求の体の弱さ……寿命の事を話題にしていいのは俺だけだ。俺の覚悟は、傲慢だと思われようともこの人里で一番重い」
怒りとは違うが、この時の稗田○○は間違いなく、上白沢の旦那より上に立って物を言っていた。
これは珍しい事であるどころか、初めての事である。

だが上白沢の旦那が○○の事を諦めきれないのと同じく、○○も上白沢の旦那とこれ以上こじれる事は、何としても避けたかった。
「失礼な事であるのは重々承知している、だが今日はもう帰った方が良いと考える」
しかし阿求が暴言をぶちまけて、まだ一時間も経っていないと言うのに、何とかできるはずはないと言うのも。
○○は十分に理解していた。

○○は上白沢の旦那の肩に手をやって、本当に名残惜しそうな表情をしていた。
離れたくはないが、状況を落ち着かせるためには一度離れしかない。そんな感情があるのはすんなりと理解出来て、また受け入れる事も出来た。
「人力車を用意してくれ!上白沢ご夫妻はお帰しする方が良い!」
けれども威厳のある声を出して、稗田家中の奉公人たちに指示を飛ばす稗田○○の姿に。
稗田阿求はもはや、興奮どころか情欲すら覚えているのではないかと言う姿には。
せっかく収まりかけていた苛立ちが、またぶり返してきた。
稗田阿求は相変わらず、奉公人たちが遠慮をして中に入ってこないのを良い事に、最大級の悪意を笑顔に乗せて、こちらに振りまいていた。
上白沢の旦那は黙って部屋を出ていき。隣室で待ってくれている慧音の方に戻っていった。


「こんなもので済ませられるか、貧相な体の上に弱々しくて何もできない、稗田阿求と一緒にしないでくれ」
その日の慧音は中々眠らせてくれなかったが。その理由はこの言葉を聞けば、慧音の怒りも理解できるがために、付き合う以外の選択はなかった。



そんな事があってから、丸三日が経った。
一体慧音と稗田家の関係は、自分も身の振り方を考えるべき時が来るのだろうかと。戦々恐々としていたが。
あったのは、寺子屋に通っている親御さんはもちろん、周りの住人からも○○の行っている探偵の仕事で。何らかの揉め事に巻き込まれたという認識でしかなかった。
さすがに稗田邸で暴れた話までは、隠せなかったが。上白沢夫妻にはまったくの罪がないと言う部分だけは、共通していた。

しかもその認識も詳細を聞いてみればマチマチで。
命蓮寺が原因とも、新霊廟が原因とも、そもそもこの二つの勢力がぶつかりかけたとも、衝突を回避するために穏健派と接触を持っただの。
慧音が稗田邸で暴れた後も、稗田○○が両勢力の首魁やらを呼びつけて、話をしただの。
虚実が入り乱れていたし、両勢力の首魁を呼びつけた話など上白沢の旦那ですら、真実かどうかの確認が取れなかった。
――直接○○に聞けばよいのだがな。
そのマチマチな認識の全部が全部、嘘ではなのが嫌らしいところだ。全くのはずれでもない部分が、多少は存在しているのが。
人々の言の葉に上る噂話に、複数の解釈を与えて里の人間を混乱させていた。
その上、上白沢の旦那が○○とは会う気にもならないことを。里の人間たちは、稗田○○様がよほどの事をなさっていると、1人で集中したいと、こちらに都合よく解釈してた。
多分これも稗田阿求が流した噂だろう。


ここら辺が稗田阿求の手回しの上手さと、勝ち取っている信仰心の強さだろう。恐らくは、噂を流した大元の人間は、自分が恐らくは嘘を流していると分かっていたはずだ。そうでなくとも、里の人間の噂話を聞いたとき自分が流した話と違うと気づくはずだが。
稗田家の九代目様、稗田阿求自らお頼みくださった使命の完遂。こちらの方がよほど重要だと認識しているはずだから。
こうやって、人々が虚実入り乱れた話に右往左往している様子を、稗田阿求が満足そうに見る事が出来れば。
噂話を流した大元の人間たちの心は、使命を完遂できたと言う達成感に包まれるのだ。それでこの話は終わりだ。
あとは丁度いいときに、稗田阿求が表向きの発表をすれば、それで万事解決となってしまう。
何だったら○○の口から『もう終わった』だの『衝突は回避された』とでも言わせればいい。
最前線で状況の悪化を食い止めた、名探偵○○の名声はまた一段と高まるからだ。
○○の後ろには稗田阿求がついているのだからな!ならば稗田○○の言葉を疑う事こそ、稗田阿求への不敬となる。
稗田阿求にとってはそれが何よりも重要なのだ、事実かどうかはまるで関係がない、ただ○○の立場の向上こそが重要なのだ。



そんな、極論を言ってしまえば上白沢夫妻にとっては、もう手を引きたい事柄を。上白沢の旦那は、妻である慧音が入れてくれたお茶を飲みながら考えていた。
至極当然の事ではあるが。昨日も慧音はあまり寝かせてくれなかった、さすがに初日ほどではなかったが。
しかしそれよりも、稗田阿求がでかい等と言って罵るだけの事はあり、慧音の体を扱うのは、こちらも大きく体力を使わなければならなかったが。
むしろそれこそ慧音の感じる悦びの本質であった。ぐったりと布団の上で、溶けるように眠ってしまっているが、それが情欲をすべて発散した結果であるからだ。
特にこの三日間は全部、そうであった。
さすがに寺子屋での教鞭(きょうべん)を、教師役をさぼる事はこの三日間、一度もなかったが。
疲れている理由を生徒に言えるはずもないけれども、疲れているから何度かイスに座って説明をしたが。
それすらも、名探偵○○と一緒に活動していたから、名誉の負傷でもなされたのかと言う噂話が飛び交っていた。
たった三日だというのに、である。噂も娯楽の一種なのだろうけれども、その中心に配置されるのは。
はっきり言って、ものすごくやりにくい。たとえ向こうに悪意が無かったとしてもだ。
そもそもこの噂の発端にいる稗田阿求は、悪意を全開にしていると言うのに。


稗田阿求の悪意について思考が走ったら、あの時感じたのと同じような苛立ちがまた、上白沢の旦那の中でうごめいて来た。
これ以上はまずい、そう思った上白沢の旦那は頭を何度か振って。窓の外を眺めることにしたが。
稗田阿求の事が思考の中でうごめかない様に、中々に広い寺子屋の庭と、授業が終わった後もまだ、何か色々と遊んでいる子供たちを眺めておくことにしていたが。
廊下の方から、やや焦ったような足音が聞こえてきた。音の大きさからみて、子供でないのは明らかだった、つまり慧音の足音だ。
凄く嫌な予感がしたが、もはや回避は出来なかった。
正門から○○が入って来たからだ。

稗田阿求の手回しに疑いの余地や、不足している部分などは存在しておらず。むしろ過剰。
寺子屋の月謝が格安である事の穴埋めとして、庭仕事などを提供してくれる大人が、大急ぎで『稗田』○○に対して頭を下げた。
噂好きかどうかは関係なく、稗田○○が厄介ごとを人里の為に抱えているのは、周知の事実だ。
稗田阿求が望んだから、そうなった。

もちろん、庭で遊んでいる子供たちにも手を止めて挨拶をしろと、やや厳しく言いつけていたが。
○○はそんなやや厳しい声を出す大人たちに対して、『まぁまぁ、落ち着いて』とでも言わんばかりの笑顔を向けて、抑えるように命じていたが。――そしてまた評判が上向く。
かなり遠くからでもわかった、○○が疲れている事は。
それも買い白沢の旦那のように、夜の間ずっと相手をしていたことの様な疲れ方ではないのは、明らかであった。
初めは、今日も来ないのかと○○に思っていたが。
○○が男としての部分をまるで発散できていないのを、見るに至っては。罪悪感が沸き起こってきた。
やはり自分は、まだまだ○○と友人の関係であり続けたいのだと、この時に断言する事が出来た。


だが慧音はどう思うだろうか、自分はどちらも大切なのだと、どっちつかずな言葉を慧音には使いたくない。
……稗田阿求の事は、はっきり言ってもう嫌いだから。奴をなだめるために野良仕事に出てくるよぐらいの、下世話な冗談にしてしまおうか。
幸い、この場には慧音と自分の二人しかいない。
そう思って、先ほど部屋の扉が慌ただしく開いた後は、気配こそ感じるが声をかけてこない相手に。
それにこの気配、読み違えるはずはない、慧音に向かって皮肉気な笑みを浮かべながら振り向いて。
「○○が、夫様が来たよ、はははは。稗田阿求と何をやっていたのだか」
そう言うと慧音は思いっきり、自分に向かって抱き着いてくれたが、これはまだ予想できた。けれども予想できない事が一つ降りかかった。

「稗田阿求をネタに、何か下世話な冗談を言いたい気持ちはわかるが。絶対に言うな」
慧音は上白沢の旦那にだけ聞こえる程度の声で、そう警告した。
「私の為に怒ってくれる君の気持には感謝している、だが稗田阿求の事は私に任せてくれ…………何より、どこで誰が聞いているか分からない。私たちの城である、寺子屋ですら」
それは火種となりえる可能性を、出来る限り少なくしておくと言う、安全のための物ではなかった。
それは、慧音の声が耳元でささやかれているからこそ分かる、明らかな震えがあったからだ。
慧音ほどの存在が、である。
「どこで誰が聞いているか分からない、これを肝に銘じておいてくれ。この三日間は努めて話題に出さなかったからよかったが、ここから先は違う。実はさっき、稗田阿求と会ったが。あいつはこの三日間、私たちが何を食べたか全部言い当てた」
「まさか……いや、カラスか?」
「えむぴーすりーぼいすれこーだー……まったく知らない物を使っていた。道具の名前しか教えてもらえなかったよ」
どうやら自分は稗田家の諜報能力を、それを私利私欲で使い倒す稗田阿求の精神性を。完全に甘く見ていたようだ。






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最終更新:2020年08月05日 00:14