指輪

 「そういえば、最近幻想郷も西洋かぶれになってきたようだ。」
目の前の当主の椅子に座る友人が語る。暖炉の火は赤々と燃えて紅魔館の一室を暖かにしていた。薪が申し訳程度に
添えられているが、恐らくは館にいる魔法使いの作品だろう。数時間前に見たときから燃えている箇所と灰の様子が
一向に変わりが見えないのだから。それに第一あれだけの大きさでこの部屋全部を暖めるのは、普通の暖炉ならば困難だろう。
「どういう趣旨だい?吸血鬼の館に収っていながら、西洋化について一言述べるなんて。」
まるで、外来人を辞めてしまったみたいだ、という言葉を飲み込んで僕は彼に言った。まあ、赤き月の伴侶となって
いた以上、昔の外来人なんていう立場は消えて無くなってしまっているだろうことは容易に想像がついていた。
 僕の懸念を素知らぬ風に、彼は利き手の逆を使って僕の指を差した。
「それ、流行っているようだね…。」
僕の薬指に鈍く輝く輪っか。これをはめられた時に何の金属で作られているかまではは彼女に聞いていなかった。
「別に欲しいと言った訳じゃないさ。むしろ逆に押しつけられた位だ。」
強がりのようにも聞こえる言葉を彼に発しながら、ふと僕の脳裏に閃きが走った。理性を押しのけるようにして自分の細胞が勝手に働いていく。
動かさない腕、流行の指輪、そして彼の諦めたような顔つき。
「おい、そっちの手を見せろ。違う、右だ。」
彼は僕の予想が当たっているかのような表情をしていた。僕は椅子から立ち上がり、彼の手を無理にテーブルの上に載せた。
包帯が巻かれた彼の右手は、一本の指が明らかに短かった。
「酷いな…。従者がやったのか?」
「違うよ。」
それは別の指という意味なのか、そう問いかける衝動が自分の中で沸き起こる。それを無理にねじ伏せながら、
彼を勇気づけるように声をかける。
「流石にそっちは無事だった様だな。」
「……まあね、持つべきは器用な魔女様という訳さ。」
皮肉気に彼が言う。彼が右手を動かすと、机の上に銀色の指輪を付けた彼の綺麗な指が転がっていた。





感想

  • レミリアーーーーーーーーー -- sr (2022-08-01 05:40:21)
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最終更新:2022年08月01日 05:40