混入
夕食のラストに差し出されたのはデザートだった。スプーンで突けばフルフルと揺れる緑色のゼリー。
赤色のサクランボが綺麗に上に飾られていた。慎重にスプーンを差し入れて掬えば、一部が欠けたゼリー
が残されていた。甲斐甲斐しく食事の世話をしていた
さとりが僕の横に座る。彼女が僕の手に代わり
スプーンを持った。
「はい、○○さんどうぞ。」
彼女に差し出されたものを食べる。甘い味を舌に残して喉をゼリーが滑るように通っていった。
たちまち最後にサクランボが残される。
「あーん。」
彼女の手がサクランボを掴み僕の前に出てくる。まるで彼女の目に見つめられているみたいだった。
「ねえ、さとり。」
僕は彼女に意を決して声を掛けた。
「食事前に、注射器に何を入れてたの。」
「なーんでしょうねぇ、○○さん…。」
いつものように甘いさとりの声が僕の横から聞こえてきた。
感想
最終更新:2021年05月30日 21:37