上白沢の旦那と稗田○○が寺子屋にたどり着いたときになって、上白沢の旦那は自分が想像以上に迂闊な事をしていたことに、ようやく気付かされてしまった。
ざわめいている人たちが何人か、寺子屋の正門前にて既に待機の列が作られてしまっていた。
○○の頭に完全に血が上ってしまっているから、遅かれ早かれ、と言う部分は間違いなくあるけれども、少なくとも寺子屋からいきり立って飛び出したのは間違いだった。
あれで騒動の発端が、寺子屋にあると言う答えをばらまいてしまった。○○と上白沢の旦那が走り回っているだけならば、これはいつもの事だしどこからどこに向かっているのかは、それだけでは分からない。
けれども今回は、上白沢の旦那は寺子屋から飛び出してしまった。近隣の住民に不安感を与えてしまい、気になってしまい、寺子屋に集めてしまう理由としては十分だ。その上帰ってきたときには、稗田○○を連れ帰ってしまった。
「まずいな……この話、大きくしてしまった」
上白沢の旦那は自分の不用意な行動を、現状の騒ぎを見て後悔するが。
「大きくした方が良い、退路を塞いでやる」
○○の方はこれで良いと、上白沢の旦那を慰めるように言ってくれた。
少しばかり心が楽にはなったが、それとはまた別に○○に対する不安が育ってくる。今までに見たことがない程に、○○は腹を立てながら動いているからだ。
少しでも更に腹を立てるような事態に、怒りを招く様な堪忍袋の緒が切れるようなことを、誰かがやってしまえば、稗田阿求を唯一抑える事が出来る存在である○○が我を忘れてしまわないか、それが上白沢の旦那にとっては酷く心配であった。
稗田○○が我を忘れると言う事は、人里への甚大な被害と紐づけられてしまう。とてつもなく簡単な予測だ、なお悪い事に上白沢の旦那はそんな薄氷に、今回に限らず乗る事を強いられているのだけれども。今回は特にひどい薄氷であった。

上白沢の旦那は○○に対して、ざわめいている人達を避けてせめて裏口を使おうと提案しようとしたが。○○の足は、焦りがあるからこちらの予想以上に早かった。
「説明は後にしてくれ」
○○は幸いにも、何かを話しかけられる前に、集まってきた人たちに対して言葉をかけたが。後とはいえ、関わる必要が出来たのは若干、心が重かった。どうやって関われば良いのかがよく分からなかったからだ。
いっそ○○に丸投げしてしまっても、とも考えたが。稗田家の怒りを自分の怒りとまで考えるような住民は、奉公人に限らず案外多いから、やっぱり自分が前に出る必要は必ず存在してしまっている。

これは不味いなと思いながら○○の後ろをついていると、○○が少し気を利かせてくれた。
「派手好みじゃないのは分かっている、けれどもこの話は派手にばらまいた方がこっちにとって有利なものになりやすいと、そう確信している」
けれども○○が見せた気づかいは、上白沢の旦那が思っていたものとはピントが残念ながらずれていた。
あまり派手な物が好みでは無いと言うのは、実はも何も○○だって同じであるのだ。
稗田阿求が用意した舞台の上を踊るのも、実は案外と阿求からの演出にすべてを任せているから派手に見えるだけで、○○本人は勝手に考えて勝手に動いているだけだ、その勝手さのせいで目立つのは稗田阿求の演出とは、また別の話だ。
けれども今の○○は、自らの考えで派手に動いて、宣伝を続ける腹積もりだ。
その、いつもとは違う行動を選んでいるというだけでも、不安材料としては十分だが。思慮の末に、普段とは違うやり方をせざるを得ないとなっているのであれば、不安材料はそこまで大きくないが。
今の○○は明らかに、頭が血が上った末で派手に動く事をなし崩し的に選んでしまっているし、なし崩しに対して気づくそぶりもない。
それがたまらなく不安なのだ。

そして不安を増強する材料としてまた一つ、○○は派手な動きと音で、授業中の教室へと乱入した。
上白沢の旦那の、その妻である慧音も戸口を派手に乱暴に開けるその音に、中々に気が強い部分があるから明らかに苛立った顔を見せながら、戸口へと顔を向けたが。
明らかに冷静さを欠いているとしか言えない○○の顔が、教室の出入口に立っているのを見れば。苛立つ顔も鳩が豆鉄砲を食らったような顔に移り変わり。
「骨を折ったと言う子はどこにいるんだ!?」
○○は上白沢慧音の唖然とした顔にも一切気付かずに、教室の内部へと乗り込んだのを見るに至っては。
言葉からは、異常事態に対して骨を明らかに事故以外で折ったような気配を持つ、生徒に対して寄り添っているけれども。
異常事態への寄り添い方と対応に、また別の異常事態、稗田○○の精神状況が明らかに悪い事に、まだ冷静な上白沢慧音は気づかざるを得なかった。

上白沢慧音は持っていた教科書を教卓に置いて、せめてこれ以上は荒れないようにと前に出てきたが。
「この話は出来るだけ大きくした方が良い」
相変わらず○○のピントはずれていた、お前の考え方じゃなくてお前そのもの、そちらの方が明らかに危険だと思われているのが、それに気づけていなかった。
普段の○○ならば、もう少し冷静と言うか、裏側に隠れながらある程度以上の準備をしてから表に出る、その程度の思慮は存在していた。名探偵として踊る事に楽しさを見出してしまっている、そんな状態であってもだ。

「助けに来たぞ!誰が骨を折ったんだ!!」
完全に切れている状態を見て、前に出て止めたほうが良いだろうか逡巡していた上白沢慧音も、頭に血が上っているうえに義憤と言う奴、それに突き動かされているような姿の○○を見るに至っては、前に出ようとした足を引っ込めたのが、上白沢の旦那の目には確かに確認できた。
「この依頼、堪忍袋の緒を切ってしまう物だったよ……○○だけじゃない、夫妻そろって緒が切れてしまった」
止めようとした足を引っ込めた慧音を見て、上白沢の旦那は謝罪交じりに慧音に対して、小さく言葉を紡いだ。
「いや……遅かれ早かれこうなるのであれば、早い方がいいかもしれない。少なくとも遅くする利点が見当たらない……稗田夫妻にとって子供はあこがれの対象だからな」
上白沢の旦那は、妻である慧音の言葉が向いている方向、あるいはピントと言うのにいまいち心当たりと言う物を付けれないでいたが。
――いずれその、いわゆるお気楽さをこの旦那が、自分で自分を呪う事になるのだが。
少なくとも今の時点においては、方向やピントを完全に理解できていなくとも、稗田夫妻がともに子供が好きだから、と言う様な軽い認識しかまだ上白沢の旦那は持っていなかった。

○○は助けに来たと言ったとはいえ、やはり、大きな声でしかもほとんど乱入しながらやってきたと言う事だったので、生徒たちは完全にあっけに取られていた。
幸いな事は、子供たちが決して怯えてなどはいなかったことか。○○は阿求の演出のおかげで、大層な有名人となっていたので、子供たちも彼の事は知っている。
むしろ、今日○○を見たと言う事を自慢すら出来るぐらいいは、もう既に○○は真っ当な意味で有名人となっていた。
けれども、その、子供たちが怯えていないと言うのが全員と言うわけではなかったのが、上白沢の旦那が覚えた違和感の中では、もっとも初期の物であった。
何せ怯えている子供は、あの、不明な理由で骨を折った子であったし。その不明な理由で骨を折った子を、その子が怯えているのを見たときの○○が、身を震わせて様々な感情に耐えているのが見えたからだ。

「ああ、君か……骨を折ったと言うのは」
しばらく○○は自分の感情と戦った後、そうとうに無理をしながらと言うのが誰の目にも分かるぐらいに、優しい声を何とか作り出そうとしていた。
「――だ」
しかしその、骨を折った子は。相変わらずで怯えたような様子を見せながら、ついでに横合いにいた弟もやっぱり、怯えていた。
「大丈夫です」
その怯えた様子のまま、その腕の骨が折れた子は近づいてくる○○の事を、遠慮と言うよりは拒絶した。
上白沢の旦那が覚えた最初期の違和感の中でも、これは、状況の悪さを理解、あるいは感知する最初の物であった。
骨が折れているはずなのに、何がどう大丈夫だと言うのだ。しかしまだ、そこで思考は止まっていた。

この時点で○○、と言うよりは稗田夫妻は、最悪の可能性を既に考慮して動いていたのだが。
後から知る事になるが、既に稗田夫妻は慧音以上に深刻でどす黒い未来が訪れる可能性を、懸念ではなくて最もあり得る可能性としてとらえていた。
稗田夫妻にとっては、慧音が言う通り子供と言う存在は憧れであったのだ。だからこんなにも、触発性の高い動きを取る事になったのだ。
最も上白沢の旦那を責める事も出来ない。
なまじ頭の良さが道徳心につながり、最悪の可能性と言う奴をいくらなんでもそこまでは、と言う考え方に無意識に矯正されてしまった結果とも言えた。

「大丈夫とは思えん、永遠亭に行くぞ。治療が必要だ……何ならしばらく永遠亭にいたほうが良いかもな」
○○の中では筋道がもう立ってしまっているのか、更には今この瞬間にも立てて行っているのか、目の前にいる骨を折った子と相対しながらも、会話しながらも、常にではないがどこか別の場所を見ている事があった。

しかしながら、○○の視線が定まっていないのははっきり言って気持ち悪いぐらいであったけれども。
骨折が未治療と言うのは確かに問題しかない、○○のやり方はいまだに上白沢の旦那にとっては、筋道が見えていないけれども何もかもが理解できないと言うわけではない。
「良い……です……が、我慢、できます」
だが視線が定まっていないとはいえ、かなり優しく永遠亭への移動を提案した○○に対して、年齢に見合わないような遠慮を、この子は見せていた。
「ああ……」
○○には何かが見えていると言うか、感じ取れてしまったようで。露骨に落胆したような、そして焦りの感情も見えた。
「そうだな……無理強いは不味いか。君の、いや」
○○はここで、骨を折った子の弟、横合いにいる子にも意識を向けた。
「君たちのトラウマを刺激したくない……最も大人がこんなに圧力をかけている時点で、と言う話かもしれないが」
○○がよく分からない横文字を口走ったが、それがはっきり言って悪い意味である事ぐらいは、さすがに上白沢夫妻にも理解できた。
それは明らかに怯えているこの兄弟を見れば、明らかであった。○○が名探偵として活動しているのは、子供ですら知っているし、その解決と調査の為に色々な所に神出鬼没的に訪れるのも、稗田阿求が宣伝している。
だから今回のこれも、はっきり言って突拍子も無さ過ぎて呆れの感情も、無くはないが。こういう事もあるんだなと、理解をすることは可能である、事実他の子供たちはキョトンとしてたり、何かあるなとワクワクするような心持のどちらかぐらいしか、上白沢の旦那の中での予想はなかった。
だから、この怯える兄弟、しかも兄の方は骨が折れていると言う事態は上白沢の旦那にとっては意識の外からの出来事であった。

○○は怯える兄弟を、苦渋の表情で見ながらいくらかの時間が経ち、ようやく考えがまとまったのか上白沢の旦那の方に目を向けた。
「永遠亭から誰か呼んでくる。あそこなら移動式のレントゲンもありそうだ」
「そこまでやるのか?」
上白沢の旦那は何の悪意や他意もなく、疑問に感じたことをそのまま口に出したに過ぎなかったし、今まではそれでいても何も問題はなかった。
けれども上白沢の旦那が疑問を口にしたとき、○○は明らかに苛立った表情を見せた。考えの至らない、あるいは遅い者を前にしたときに、品のない話だが上白沢の旦那も何度かやったことがあるはずの、そんな表情であった。。
「そこまでやるしかないんだ、時間がない」
そう言って○○は寺子屋の外に出ていき、案の定で付いてきていた稗田家からの護衛に○○は色々と指示をしていた。
そしてそのまま、○○は護衛を全員連れて永遠亭の方向に歩いて行った。
また鈴仙さんやてゐさんが苛むだろうな、とは考えたが。あの様子では、そんな発想はまるでないだろう、相手が何を考えているかに思いを馳せる、その余裕すら無いと見るしかなかった。

そして相手が何を考えているかと言う、そこを考える余裕がない事は○○の考えている事を稗田家の力を全面的に使う事にも、ためらいを見せなかったのか。
○○が永遠亭から人員を、しかも八意永琳を連れて戻ってきたのは、予想以上に早かった。
○○は戻ってきたとき、また肩で息をしていたのでやっぱり走ったのだろう。その上、稗田家の力自慢たちが護衛として付いていてくれたお陰か、上白沢の旦那が見たこともない様な機械を移送していた。
「隣の部屋は、すぐに使う予定はないか?」
○○は一応、上白沢の旦那に対してそう聞くけれども、答えは聞いていないと言う動き方であった。
隣の部屋に特に、何より機械を安置させられる広さを見て取るや、○○は上白沢の旦那に聞きながらも手の方では、機械を持ち運んでいる者たちに対してここに持って行けと指示をしていた。
骨を折った子とその弟は、オロオロしていたが○○から優しく促されて八意永琳が機械を動かして待っている、部屋の方へと移動していった。
結局、上白沢の旦那はこの兄の方をこの後で見る事はなかった。



昼前になって、○○はまた上白沢の旦那の所に、まだ授業中なのだが呼びつけてきた。
「話がある、それから依頼の手伝いもしてくれ」
せめてこの授業が終わるまでは待ってくれればな、と思ったが。
「行った方が良い」
妻である慧音からそう促されたこともあり、しぶしぶではあるが上白沢の旦那は○○の方向へ向かった。

「ますは博麗霊夢からの依頼を説明しておく」
○○はイスに座って話を始めたが、まるで落ち着いたり楽にしている様子はなかった、むしろ苛立ちや焦りは朝の時より酷くなっていた。
「待て○○、あの兄弟は?」
上白沢の旦那は見当たらないあの兄弟の事を聞いたが、○○は。
「永遠亭に保護させた」
○○は相談もなしに、勝手な事を始めていた。
「おい!?」
思わず上白沢の旦那は大きな声で、問いかけると言うより詰問したが。
「全部つながっているんだ!」
○○の見せた怒りの方が、より鮮烈で確固たるものであり、上白沢の旦那は押し込まれてしまった。

そして○○は、上白沢の旦那がストンと座ったのをしっかりと確認してから、話を始めた。
「博麗霊夢からの依頼はこうだ……最近、純狐とクラウンピースがあるお菓子屋。子供たちが放課後にお小遣いを握りしめて遊びもかねてやってくるような、そういう場所で度々見かけられるようになった。それだけならば、まぁ、人里にも人間以外は買い物に来たり遊びに来たりしている、それだけならばいいお客だ、洩矢諏訪子のような太い客になる可能性もあるからことさら話題にする必要も恐れる必要もない。けれども純狐とクラウンピースは、特に純狐の方がどこかからの時点で明らかに怒りながら、子供たちから何かを聞き取り始めていて……段々とある子供に執着を見せるようになったんだ。博麗霊夢の依頼は、純狐の目的となぜとある子供に執着するのか、場合によってはその子供を保護するべきかもしれないと言う物だ……まぁその子供は保護するべきだろうな、ただし純狐からじゃない、実の親からだ」
話の結論を告げた時、○○は吐き捨てるような態度でとある子供の実の親に対して、ことさら酷い感情をぶつけていた。

けれども上白沢の旦那の理解が遅くなっては不味いとも、同時に思っているのか○○自身の横に置いていたカバンから、冊子を取り出した。
手書きの文字が多い、しかも達筆な字であった。
「阿求の直筆だ、純狐に対する調査書とでも言おうか」
とんでもない物まで、○○は持ち出していた。稗田阿求は達筆である事でも、評価は高い。直筆の書状は神棚にでも飾りかねない程の人間は、人里に多い。
それをざっくばらんに使える○○の、立場に驚くべきか周りが見えていない事に懸念を感じるべきか、上白沢の旦那は少し迷いながら読み進め始めた。
「純狐に関しては、決定稿ではないがその調査書を読めばおおよその性格や……いわゆる触れてはならない部分を理解できる」
なるほど確かに、○○の言う通りであった。その中でも特にと言う部分は、赤いインクで稗田阿求が丸で囲んでくれていたが、その内容に思わず息をのんだ。
「彼女……子供を亡くしているどころか」
「ああ、病などでは無くて、よりにもよって夫の手により亡き者にされた」
上白沢の旦那は寺子屋で教鞭をとっているだけあり、子供の不幸に息をのんでしまい。
○○の方は、怒りをにじませていた。

「おそらく、純狐が執着している子供とはあの兄弟。兄の方はなぜかいきなり、骨折してしまったあの兄弟に対しての物だと俺は確信している。その生涯を考えれば、不幸な子供に対する執着と不幸にしてしまった存在への敵意は、あって当然だ」
上白沢の旦那が文書を読み終えたのを、しっかりと確認してからまた○○は言葉を続けた。
もっとよく説明してくれと言おうとしたら、○○はもう準備を整えていたようで、八意永琳が部屋に入ってきた。
そのままつかつかとやってきて、何枚かの写真を、はっきり言ってグロテスクな写真を見せてきた。
「八意先生、医療的な話はお願いいたします」
「ええ」
八意永琳の声からも、重々しいものがあった。その立場や強さを考えれば、○○に影響を受けるような弱い存在とは思えない。
と言う事は、このグロテスクな写真に何か意味が?と思う物の、分からないので両名の顔を見て、説明を求めた。
「これはレントゲン写真よ、幻想郷じゃそんなに見かけないから顔をしかめるのも無理はないだろうけれども、これは体内にある骨や内臓の状態を見るのに役立つのよ。今回は骨を見たの、あの骨を折られた子の骨をね、典型的な螺旋(らせん)骨折で笑えて来たぐらい」
「え?」
八意永琳の言葉遣いに違和感を覚えて、思わず聞き返したが。
「少し質問がしたいの、あの子は球技をやっている?」
八意永琳はその聞き返した言葉を無視して、彼女の方が話を続けた。
「いや……やっていない。どちらかと言えば本を読んだりで大人しい子だ、いつも隅の方で読書をしているな」
上白沢の旦那は記憶を手繰り寄せて、説明したが。
「そうしないとうるさいと言われて、殴り飛ばされるんだろうな」
○○は相変わらず、吐き捨てるような感情を見せていた。
「いや待て、○○!お前何か勘違いしてないか!?」
上白沢の旦那は、自分が疑われているのかと思い込み、そう弁明するが。
「分かってる」


幸い○○の敵意は上白沢の旦那に対してはなかったが、けれども、分かっていないことに対するいら立ちは見えた。
「稗田○○」
八意永琳は、その状況をまずいと思ったようだが。○○の立場、妻があの稗田阿求、そして八意永琳は美女と言う事で、阿求の嫉妬をかき乱す可能性を考えて思ったように止めてやる事は出来なかった。
しかし○○は、決して頭が悪いわけではないので、名前をそれも稗田姓もつけて呼ばれれば、言わんとする事は理解してくれて黙る事に専念してくれた。

「ここからは、私が説明するわ」
八意永琳がそう○○に言ったら、○○は首を縦に振ってくれた。少なくとも、まだ、冷静なようだ。
そして八意永琳が上白沢の旦那に対して、説明を始めてくれた。
「旦那さん、私がさっき球技をあの子がやっていないかを聞いたのはね。螺旋(らせん)骨折の原因としてまともな理由で一番多いのは、”自分の意思で”手首や腕をひねる動作を繰り返す、球技によるものが典型的なの。けれどもね……球技をやっていないのに螺旋骨折を起こす理由としてもう一つあるの、こっちは最悪の理由よ」
何かを想像した八意永琳が、言葉を詰まらせたが。頭を振って、気力を復活させた。
「自分の意志によらない、ひねるような動作を食らわされてしまう。暴行や虐待によるものによる骨折が、球技以外での典型的な螺旋骨折の理由なの。はっきり言うわ、あの子は虐待を受けている」

八意永琳が説明を言い終えた後、上白沢の旦那は絶句してしまい言葉が何も出てこなかったが。
「俺は最初から、その可能性を最も心配していた。理由不明で骨を折る、しかも子供がそんな状態に陥るだなんて。運動中を除けば、それが一番、最悪な話だが典型的な理由なんだ。虐待が!」
○○は上白沢の旦那が絶句している分の感情を、爆発させていた。





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  • キツネつきと道化師とキツネシリーズ
  • 永琳
最終更新:2021年06月06日 15:21