東風谷早苗が明らかに稗田阿求を敵視し始めているのに気づいてしまった、その恐怖に比べれば。
「どういう事!?」
純狐がいきなり大声を出しても、さして驚きや恐怖は無かった。
上白沢の旦那は、自身でも驚くほどに冷静な感情のままで、激昂している純狐を見ている事が出来た。
「この家、酒かツマミかいかがわしい物ばかりで!子供の為に用意したものが何もないじゃない!!」
それに純狐が激昂する理由を聞けば、彼女がそうなってしまう理由としては十分に理解をすることが可能であったし。
純狐が家探しかと思うぐらいの勢いでひっくり返したものを見れば、純狐の怒りがお門違いなどではない事の証明でもあった。
酷いものであった。
別に上白沢の旦那は、一線の向こう側を妻としているから、遊郭絡みの話題は極力、可能であるならば完全に避けるべきであるとしているけれども。
実を言えば上白沢の旦那個人としては、誰それが遊郭でよく遊んでいるなどとのうわさを聞こうとも、商売女ごときに破綻をきたすような本気になりすぎるような事さえなければ、そうなんだ程度の認識でいることがまだ、可能であった。それは妻出る上白沢慧音の持つ抜群の魅力による事と、慧音本人も酷く挑発的になりながらも泥棒ネコを相手に戦える、自らの体に対する自信から来る胆力があるからだ、神白砂ら慧音には。
だからこの場で、上白沢の旦那が○○よりも先に言葉を発したのは、実に自然な事であるしまた合理的でもあるのだ。
今回の事件は、依頼人が上白沢の旦那であるしどうやら寺子屋の生徒がロクな目にあっていないと言う、深入りする最もな事情や理由があるとはいえ○○よりは妙な事になりにくかった。
上白沢の旦那は純狐がぶちまけた物品を見回しながら、わざとらしくその周辺を歩いた。
この際、酒とツマミの量に関しては目をつぶったとしても、純狐の言う所のいかがわしい書物の量があまりにも多い事に関しては、やはり、上白沢の旦那は問題視していた。
「家庭環境が悪すぎる……酒好きでツマミも多いなら、まぁ、目はつぶれてもね……」
上白沢の旦那は思った通りの事を口走ったが、純狐にとっては上白沢の旦那のその言葉がえらく気に障ってしまったようであった。
「今更?」
どう考えても気が立っている純狐は、上白沢の旦那に対しての言葉にも荒々しさがあった。
「友人様、友人様。ご主人様も言ってたじゃないですか、稗田○○が動き出したら基本的に、彼よりも動いちゃならないって。稗田○○よりも先に直接的な行動はダメだって、そこだけは約束しましたよね?」
上白沢の旦那が純狐に対して何事かを発する前に、
クラウンピースは急いで口を回し始めた。
クラウンピースの主人である存在も、今の純狐がそうとうにまずい状態と言うのは気づいていたし、何より純狐がクラウンピースの事を気に入っている様子なのも見れた。
純狐の体を揺らすクラウンピースの事を、純狐はその頭をなでたり肩を抱いてやったりしていた。
「ヘカーティア・ラピスラズリとも接触しておく必要があるかもな……クラウンピースの主人だよ」
上白沢の旦那の横合いから、○○が耳打ちをしてくれた。しかし○○の本意は、上白沢の旦那に細かい知識を伝える事ではなかった、○○は彼の腰や背中辺りを軽く何度か叩いてやって落ち着くようにとの考えを示していた。
「ああ、ありがとう」
上白沢の旦那もやはり、○○には迷惑をかけたくはないのでトゲを明らかに飛ばし始めている純狐へ、目線を飛ばし続けてはいるけれどもそれ以上は歯をきしませるのみで耐えていた。
とはいえ純狐はそこまで冷静ではなかった、あるいは彼女は強いからこういう時も我を押し通すことに慣れているとも言えた。
「今更なの?って聞いているの」
クラウンピースの頑張りの影響は、純狐の声色が若干大人しくなったのを聞けば、まったくないわけではなかったけれども……上白沢の旦那へのいら立ちが無くなったわけではなかった。
クラウンピースは相変わらず純狐の体を揺らして、落ち着くようにと懸命に伝えているが、純狐はクラウンピースにこそ優しく肩を抱いたりしているけれども、純狐の苛立ちを完全に沈める事は叶わなかった。
と言うよりは、と○○は純狐の顔を見て少し考えた。止めようとしているクラウンピースの明らかに子供に近い性格や立場や見た目が、純狐から退くと言う選択肢をなくしているような気がした。
純狐の基礎的な性格や思考は、子供と言う物を好くようになっている。過去の、実子に対する非道な仕打ちを受けられたことを考えれば、無理はないのだけれども。
「つまり?」
しかし上白沢の旦那が、純狐からの鞘(さや)当てを我慢しきれることはなかった。
上白沢の旦那は相変わらず、○○から腰や背中やついには肩のあたりを軽く掴まれて、勢い任せに突っ込んでいかないようにとの警戒心を、それ以上に警告を○○は上白沢の旦那に対して与えていた。
「今更と言う言葉にそれ以外の意味は無いわよ。あの兄弟が苛まれている、虐げられている事に気づいたのが、今更なの?と言う意味よ。何十人も見ているから、と言いたいかもしれないけれどもここに来る前に事情を聞いていた、あのお菓子屋の夫婦だって似たような数をさばいているのにとっくに気づいていたわよ?遅くない?」
言いたい事を全部言い終わっても純狐は、まるで清々したような顔はしていなかった。これは手始めに過ぎないと言わんばかりだ。
「私に、昨日に依頼をしに来てくれたんだよ上白沢の旦那は。あの兄弟の事は気にかけていたよ」
ここで○○が助け舟をだしてくれた、正確には依頼の内容を話したのは今日なのだけれども、その部分は純狐を落ち着かせるためや上白沢の旦那の立場が悪くならないようにと、ぼかしていた。
嘘はついていない、依頼をしたいと言ったのは確かに昨日なのだから。
「友人様、友人様!向こうの立場も考えましょう!アタイ達だって思いっきり動いたのは今日が初めてなんですから」
ついにクラウンピースは純狐に対して抱き着く様な形まで見せた、それだけ純狐の事を警戒していると言う事だろう。
「…………そうね、ピースちゃん。悪かったわね許してちょうだい」
クラウンピースの方をじっと見た純狐は、表情をいくらか変化させて脳裏で色々な事を考えてるなと周りにも分かりやすい姿を見せた後、やや悲し気に矛を収めてくれた。
○○は純狐がクラウンピースに対して、特に悲しそうな目線や気配や言葉を用いながら、あまつさえ許しまで乞うたのが強く印象付けられていたし。
「まぁ純狐も、彼女も考えてくれているし。クラウンピースに対する振る舞いを見れば純粋な物だと理解できるだろう……クラウンピースも頑張ってくれているようだ」
この場で暴れる事に関しては、実はそれhそれで程度に○○は考えていたけれども。上白沢の旦那と純狐の間でひと悶着ある事はいくら何でも、避けたい事象であった。
○○は上白沢の旦那の肩に手を置いて、揉む様な力具合まで見せて落ち着くようにと示しながらも。
「クラウンピース、こんな場所にまで付き合ってくれて本当に感謝している。なぁ、そう思わないか?君だってそう思うはずだ」
○○はいつもの事ではあるのだが、少し以上に演技がかった動きでクラウンピースに謝辞を述べながらも上白沢の旦那に対して無理やりにでも目線を合わせようとしていた。
この場においてはクラウンピースが最も、厄介な立場と言うか状況に置かれることを、主人であるヘカーティア・ラピスラズリから命じられたという部分は大いにあるだろうけれども、この場が何とか大荒れの模様にならないようにと気を配っている存在への謝辞は忘れないでおいたし。クラウンピースぐらいに冷静ならば、この謝辞とその後に○○が見せている動きは、自分は上白沢の旦那の方を抑えておくので、そちらは純狐を抑えておいてくださいと言う言外による意思表示である事は、すぐに気づくことが出来た。
「少なくとも稗田○○の事は信頼してもよさそうだと思いますよ?友人様」
やはりクラウンピースは気づいてくれたようで、純狐に対する抱き着きはなおも継続されていた。
その表情には必死さも現れていた。人里のど真ん中で、純狐ほどの存在が暴れる事が何を意味するか、博麗霊夢がどう思うかについてはクラウンピースが分からないはずはない。
しかしたとえ、純狐が自らの強さが種々の場合に置いて良い悪い両面での影響を与える事に対しては、今現在においては無自覚であったとしても。
気に入っているクラウンピースの困った顔は見たくないと言う思いの方が強そうなのは、まだある程度は人里の規範にのっとった形でこの件を解決しようと考えている○○にとっては、まだ良かった部分として機能していた。
最終兵器にしたって、純狐の力は強すぎる。抑止力以上の実戦は……そう考えたいのだけれども。しかし、そうなっても面白いなと言う考えは、○○としても否定はできないでいた。抑えつけているはずの本気のいさかい、増してや純狐が暴れるのは不味いと言う考えなのだけれども、同時にこんな連中にそんなお上品な考えを持たなくても良いという考えも、強く存在していた。
阿求が子供を設ける事の出来ない、それほどまでに弱い体である事が、この実子の骨を叩き折るような鬼にすら劣る悪辣な連中に対しての、苛烈さを容認するような気配は……阿求ですら持っているのだから。
「……○○?」
上白沢の旦那はいきなり黙りだした○○を心配したが。
「危ないね全く……この状況全部が、登場人物全員が。俺や阿求ですらどこかしらで花火を求めている」
○○は上白沢の旦那に対して返答を見せるような独り言を呟いているような、そんなどっちつかずの動きを見せていた。上白沢の旦那の心配するという感情はつのる。
クラウンピースもあからまさにヤバそうな気配を感じたことで、嗚咽と言うか嘔吐感のようなものを感じていたが。
しかしそれでも、逃げようと言う感情は見えなかった。○○はその心意気に舌を巻く様な表情を見せて、クラウンピースはと言うと早くこいつらを何とかしてくれと言う様な表情で、縮こまっている女の方をあごでしゃくった。
「分かっている、なんとかする」
○○はクラウンピースが見せた、嫌悪感に対して前向きな返答を見せた。
「あの兄弟さえ無事なら、割とどうでもいい」
「それならいくらでも、手はある」
「じゃあ、やってよ。稗田様」
クラウンピースからの様付の呼び方は明らかに皮肉のそれだったが、○○はそれに対して怒ったりすることはなく神妙な面持ちでうなずいていた。
「クラウンピース、君はあの兄弟とは?」
「遊び仲間。お菓子屋の近くでよく遊んでるの……まぁ、こんな環境だから、他の親にとってもあの兄弟って、ちょっとねって感じだから……でもあたいなら大丈夫だから。巫女でもない人間なら、ほとんどの場合はだから」
「クラウンピース、多分君が一番冷静だ。不味いと思ったら俺が相手でも止めてくれ」
「止めないよ、その方が面白い。あたいが気にしているのは友人様が不味い事にならないようにってぐらい」
○○はクラウンピースからのややもすれば獰猛な考えに対して、ヒステリックに笑った。どう考えても攻撃性の強い笑い方だけれども、クラウンピースはその様子を見て静かに冷たく笑うのみであった。しかし楽しそうなのは、間違いがなかった。
「あのう」
しかし○○のヒステリックで攻撃的な笑い声はある人物の声で、ぴたりと止められた。東風谷早苗だ。
「ああ……失礼した」
○○はそういえばそうだった、と言う様な面持ちで東風谷早苗に対して謝罪の様な気持ちで声をかけた。
実際問題、東風谷早苗が声をかけてくれなかったらいつまでも○○は笑いかねなかった。
「誰も声をかけなかったので、私がね……調査が進まないなと思ったので、差し出がましいとは思いましたが」
東風谷早苗はそう言いながらちらりと、上白沢の旦那の方を見やった。
「ああ…………そうだな、なぁ」
東風谷早苗の意味深な見やり方に呼応して、と言うよりは対応を必死で考えるようにしながら、○○は上白沢の旦那に声をかけた。
「これが終わったら家庭訪問の制度を寺子屋に作れ、しょっちゅうでなくても良いから生徒の家を確認しておくのは、悪い案じゃないはずだ」
○○が急いで上白沢の旦那に声をかけた様子を見ながら早苗は、鼻を鳴らして不機嫌そうにしていた。
「東風谷早苗の事は気にするな、俺も気にしていない」
○○は上白沢の旦那に対して耳打ちしながら、調査を再開させるように歩を、この家の奥さんであろう女性、そしてあの兄弟の母親であろう女性の前に立ちなおした。
○○が何かを喋る前に、純狐が荒らした部屋の中をもう一度見直した。
「まだ寺子屋で勉学を学ぶような兄弟が、子供がいるような家庭環境とは思えないが……まぁ良い、まぁ良いが……いや今はそれより先に」
独り言のように○○はごちるが、それは明らかに目の前の女性に一応は母親であるはずの者に聞かせるような、そんな大きさの声であった。これは放ってはおかないぞと言う予告と言えよう。
けれども○○の中にも順番があって、それを優先していた。
「旦那さんはどちらに?ここの旦那ですよ、あの兄弟の…………」
あの兄弟の事と言った瞬間、○○は言葉を詰まらせた何かを考えているかのようであった。
「あの兄弟の……父親で良いんだよな?」
ほぼほぼ間違いないのだけれども、○○は怒りや苛立ちを必死に抑えながらつぶやくように言った。
しかしながら、○○から質問を敵意全開でぶん投げられている目の前の女性はと言うと、ヘラヘラおどおどとした態度であった。
ヘラヘラはこびるような、おどおどは恐怖だと分かったがよくこびれるなと上白沢の旦那は思った。
「ええ、まぁ……」
「じゃあその旦那はどこにいる?」
「……さぁ?」
この言葉に○○は目を向いた、無論の事だが悪い意味でだ。
「……旦那の仕事も知らないのか?」
「力仕事をするようなって事ぐらいしか」
「力ね……」
力と言う言葉に少し○○は引っ掛かりを感じるような、それでいて疑う様な事を隠そうともしなかった。
上白沢の旦那にも○○の懸念は、何となく理解できた。力をまともな意味で使うとは、少し思えなかった。
「こっちで探しましょうよ、その男の事は」
苛立ちと皮肉気な笑みを混ぜ合わせた様な○○の姿を見ながら、東風谷早苗はまた言葉をかけた。
「……」
○○は早苗の事を全く無視するわけにもいかず、無言で彼女の方を見た。
しかし早苗は無言であろうとも、○○から認識されている事が楽しいようで見られただけで笑顔がはじけて、家屋内であるから大した距離でもないと言うのに、手をひらひらと振って精いっぱいに東風谷早苗は自分の事を○○に対してアピールしていた。しかしその早苗からのアピールが完全い終わる前に、○○はサッと顔を上白沢の旦那の方に向けた。
「お、おう」
「行こう、ここにいてもあまり情報が手に入るとは思えん」
上白沢の旦那はいきなり顔を向けられた事で、驚いたように短い言葉しか出せなかったが、○○はもう動くつもりだったので上白沢の旦那からの返答は大して重要ではなかった。
けれども東風谷早苗は、完全に無視と言うかむしろ避けられた形なのだけれども、ご満悦な顔をしていた。
「あの!」
○○はバタバタとここでの情報収集を手仕舞いにしてしまおうと、もっと言えば東風谷早苗を振り回してできる事なら撒いてしまおう、そんな気配も見えてきたころ。
非常に間の悪いことに、ここの奥さんが声をかけてきた。
それも相変わらずヘラヘラと、はっきりと言ってこびを売る様な顔である。○○と最も付き合いのある上白沢の旦那ならば分かるが、○○が最も嫌がる表情だ。
ただでさえ○○は、自分が阿求と比べて随分とそう言った力がない事を気にしている。こうやって媚を売られると言う事は自分の後ろにいる阿求を汚されたような感覚に、○○は陥ってしまう事を分かっていない、あわれな存在の末路を考えて上白沢の旦那は身震いしたが。
「なんだ?」
酷く不機嫌そうな声であるけれども、こう言ったときに無視して突っ走っていかないという優しさが、○○の良い所だと思っているのだが今回に置いては足を引っ張っているような気配しかない。
「付いてきてくれている人にやらせていいと思うぞ」
東風谷早苗を振り切るためとはいえ、この現場に対する嫌悪感を抱いているのは上白沢の旦那も理解していたので、二種類の理由があるだけに○○に対してこんな奴は無視しても構わんだろうと言ったが。
「いや、まぁ……気になる」
若干の皮肉気な笑みを浮かべながらではあるが、○○はその女の言い分を聞いてやろうと思ったようだ。喜劇でも見るかのような気分だと本人は思おうとしているのだろうけれども……無理をしているのは明らかであった。
「○○さんかわいそう……本当に、本当にかわいそう」
上白沢の旦那は良くないなと思って苦悶の表情を浮かべているが、東風谷早苗はもう少し踏み込んでいた、はっきりとした言葉を用いて○○に優しくしようとしていた。
「…………」
少し○○は固まってしまった、思考を作り直しているかのような目線の動きが上白沢の旦那には見えた。
「早く言え」
組み直した思考で○○は、相変わらずへらへらとこびた顔をしている女に対して、先ほどよりも明らかに強く命じた。
上白沢の旦那はそんな姿をする○○に心痛を覚えるのと同時に、場の状況を考えないこの女にもイライラし始めた。
あの兄弟の母親がこんなのとはな…・・あの兄弟はそれなり以上に頭が良いはずなのだがな、その親がこんなのとは、上白沢の旦那はやはりこの世界には神も仏もいない、いたとしても随分と自分勝手な連中だと言う考えを更に強くした、そう思うには十分な感情を見る事が出来た。
「あのお菓子屋と、言いますと……婆さん嫁にしている変な男がいるお菓子屋の事ですか?子供がよくワラワラしている妙にうるさい店」
この女は、嫌な感触しかない言葉を並べ立てていた。上白沢の旦那は何とかこらえたが、こびを売られている○○はと言うと耐えられるはずもなく目をカッと見開いていた。むしろこうやって耐えようとしている気配もあった。
「なんか変な服を着た、子供もいると聞いて及んでいます」
けれどもこの女はこびを売るのに精いっぱいで、周りの、特に○○の変化には気づく余地も無かった。
「あんな店ですから、夫の方も変な噂が……キツネつきなのではと言う噂も」
えへえへ等と言う様な具合で、変な笑い方を見せながら○○に対して懸命に気に入られようとしていたが。残念ながら○○はそう言うのを思いっきり嫌がる性格であった、むしろちょっとばかし能が無いぐらいの方が、やれやれと思いながら手を貸してやれるぐらいだ。
しかしながらこれは……上白沢の旦那も嫌になってきた。
「キツネつきねぇ……まぁ、覚えておくよその証言は、聞いてよかったよお前から色々と聞いておいて。行こう、次だ」
くっくっくと言う様な笑みを見せながら○○は背中を見せて……この家屋を後にする事にした。
上白沢の旦那は無論であるが急いで○○の後を追いかけるが、東風谷早苗も○○を追いかけた。
あまつさえその時に、上白沢の旦那は早苗と肩がぶつかった。もちろんそのぶつかり方に、甘い何かと言う物を感じ取る事は出来なかった。
東風谷早苗は別に、ぶつかっても良いと思いながら突っ込んできた、そんな気配があった。わざとぶつかりにこそは来ていないけれども……。
そう思っていたら○○はこの場面を見ていたようで、彼は上白沢の旦那の腕を引っ張って自分の隣に置いてくれた。
上白沢の旦那の耳には、東風谷早苗からの悔しそうな息遣いが聞こえた。
目の前の事件、それも上白沢の旦那自身が持ってきた依頼だからこれを最優先にしているけれども。
後々、東風谷早苗が原因であるいは中心に据えられて、何かが起こるだろうなと言う予測は、強く持たざるを得なかった。
感想
最終更新:2021年06月06日 15:59