一日の仕事が終わり里の外れにある自宅に向かう。
一人暮らしなので誰も待っていないし、当然明かりも点いていない。
戸を開けて中に入り明かりをつけると土間に食事の準備がされていた。まだできたてなのか湯気が立つ夕食二人分。
茶碗の下に手紙がある。

-今日もお疲れさま、夕食を作っておいたのでしっかり食べてね―

食事を問答無用に残飯入れに突っ込み、食器類は水に浸け新しい食器を出し夕食を作る。

夕食ができたので食べる。
食べ終わり一服しさて片付けるかと食器を運べば既に洗われて棚にしまわれているし、寝る前に厠に立てば既に敷かれていた。なぜか枕が二つ。
枕を一つぶん投げ布団に入る。人肌に温かかった。

ここのところずっとこの調子だった。
最初の頃はなんとなく受け入れてしまっていたが、冷静に考えると怖くなり色々な人に相談してみたが。
私のとこにも来て欲しいぜだの食事の支度をしなくていいなんて便利じゃないだのでまともに取り合ってくれなかった。
幻想郷の住人は怖くないのだろうか?


朝になり朝食の臭いで起きる。
和食と洋食の二種類、例によって手紙が添えられている。

-昨日は御免なさい。まだあなたが何を食べたいのかよく分からなかったの、なので今朝は二種類用意しておいたから食べてみてね-

無視して仕事に出た。


家に帰ればまたもや昨日と同じだった。手紙をむしりとり読んでみる。

-今日もお疲れさま、今度は絶対に口に合うと思うので食べて…

途中まで読んで手紙を破り捨てる、いい加減我慢の限界だった。

「誰だ!いい加減出て来い!」

誰もいないはずの家に怒鳴る、その途端直ぐ隣でカタッと何かが落ちる音。
反射で手を振る、バシンと人を叩いたような音が響く。もちろん自分を叩いたわけではない。
手探りで周囲を探ってみるが今度は何もなかった。

なんだか分からないがどうやら一つ進展があったようだ。
もしかしたらこれでこの不気味な日常から抜け出せるかも知れない、楽観的かも知れないがそう思った。


朝、今度は朝食もなかった。
思わずガッツポーズを取る、元の日常が返ってきた。そう思いながら雨戸を開けようとするが…開かない、戸も同様に開かなかった。
薄暗いなか蝋燭を点けてみると枕元に手紙があった。冷や汗が出る。

-おはよう、ずっと一緒だよ-

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最終更新:2010年08月27日 11:58