たたりいろ
おやおやここはどこだいって顔だねぇ。ウンウンそうだね…。どうだい分からないだろう?行けども行けども暗闇の中。
行きは良い良い、帰りは恐いってねぇ。よく言った物だよ全く…。ふむ、思い出したようだね。早苗は何処だって。
まあ、そう急ぐことではないさ、旅は道連れ世は情け、こんなに狭い人里でそんなに急いでどこに行くってさ。
ボチボチ思い出していこうじゃないか。どうせ私と少し話しをしていく位の時間はあるんだからさぁ…。
さてはてあの子には困ったものだね。遠い御先祖様としても、近くで見守る神様としてもだね。綺麗だろう?
別嬪だろう?優しい子だよ全く。器量好しの愛想良し、里の人気者になるのは親としても当然だね。親の欲目って
言いたいかい?良いんだよ…
神奈子を含めて皆そう言うからねぇ。私としてもそう思っているんだから、アンタが
そう思うのも不思議じゃなしってもんだよ。
そうそう。アンタは今日、早苗に会う積もりだったんだよね。人目に付かないように裏道を通って山の方へ
一目散って。いやあ若いねえ。私も似た気持ちになる日が遠い遠い昔にはあったんだよ。今日の日が近づくにつれて
ソワソワする早苗を見ていれば分かるってものだよ。二人で人目を避けて逃避行ってのは中々洒落ていることだわさ。
ところでさ… なんで… お前達、人目を避けているんだい?
ああ、そんなこと私にッ… よりによってこの私に言える筈がないよなあ…。
アイツを裏切っているんだからなあ!!
ああそうだろう?いつお前が神社に入ったんだい?私が認めたとでもいうのかい?バレないように人の噂に上らない
ようにしていれば大丈夫だと思っていたかい?!残念だねえ!残念、無念、不覚の至りってさあ!笑えよ!笑ってみろよ!
二人して一緒にいたあの夜のようになあ!あのニタニタしたドブのようなそのふてぶてしい馬鹿みたいな顔でなあ!
どうだい?このXX野郎。XXにも劣るようなXXめ!いつもの威勢はどうしたんだい?その色目で下心を隠して私の早苗に
取り入ったんだろう?どうなんだいこのXX野郎!!言えるなら言ってもいいんだよ?二枚も三枚もあるその舌で、
私に言い訳を言ってもいいんだよ!ひょっとすれば私が○○のように言いくるめられるかもしれないからなあ!!
幾らでも言ってもいいんだよ!なあ!なあ!なあ!お前えええ!!
ふふふっ、そうだったねぇ。私ということがすっかりと忘れていたねぇ…。そういえば、さっきXを引きちぎったん
だったなあ。おまけに一発張り倒したものだから歯も抜けてしまったんだから、アンタそりゃあ一言も喋れ
なかったんだねぇ…さあて、そんなお前に一つ質問だ。万が一にも億が一にも正解すれば私は助けてやってもいいんだよ。
仮にも私は神様なんだから人間に示す慈悲ってものがあるからねえ。質問はたった一つだけ…
今から私はお前に何をしようとしているかなぁ? お前の薄汚い命が掛かっているんだからね。ゆっくりと考えていいんだよ……
うんうん、流石だねえ正解だよ。間違えてくれなくて残念だよ…それじゃあ「私は」お前を殺さずに何もしないでおくよ…。
こうしてお前がゆっくりとミシャクジに呑まれていってくれれば、せめて少しだけでも私の心が晴れるからねぇ。
早苗の隣にいることを私が認めたのは○○だけだ。断じてお前じゃない。
ふふふ…それじゃあ…ね。
最終更新:2023年07月25日 23:18