笑っていた、モニターの向こうで、彼女は。
楽しそうに、嬉しそうに、クスクスと。
なんの因果も脈絡もなく、ただ外部出力の接触が悪かっただけで、
それが笑う事となんら関係など無いはずなのに。
彼女はまるで見せつけるかのように笑っていて、笑顔を。
なんの変哲も無い、少女が立っているだけのそれは、
偏愛を見たままに書き起こした物で、
強いて言うなれば装束に紅く染みる血痕と、
虚をふらふらと見据える光の無い眼で、
遠巻きに恋敵を撃ち殺したと連想させようという程度のもので、
やはりそれはただの少女であった。
処理落ち、フリーズ。
サムネイルは赤一色に、
拡張子は文字化けし、削除も出来ない屑ファイル。
羅列された小さな画像の中で一人笑う少女はそこはかとなく無気味で、
一人だけ生き延びるのがまた運命的でもあった。
バックアップを取ってなかったのは痛いが、
保存していた物はフォーマットしよう。
ひたり、
後ろから冷たい手が伸びて、マウスを握った。
後ろも向けぬまま、それはそこに居る事を誇示するように、画像をクリック。
モニターに映る自分の後ろには
それは幻覚だったのか幻想だったのかは分からない。
ただ確かな事は、彼女はこうして目の前で笑っている事である。
ならばいっそ、狂ったのは自分だけであってくれ、
そう思いながら重い瞼を閉じ、体を彼女に預けた。
最終更新:2010年08月27日 12:16