いっそ地下の橋姫にでも会ってみようか、
甘える相手がいるだけマシ?
そりゃあそうかもしれないけど。
      • 白蓮は親みたいな奴で、友達じゃないんだ。
ムラサは、ああ、あいつは明るいから、私以外にも友達がいるんだ。
何で物事の邪魔をするのかって、嫉妬してただけなんだ。
友達がいないから、
祭事も、それを楽しむ相手が居ないから。

10月の晦はハロウィンとかいう西洋の祭りだそうで、
仮装した子供が町を練り歩きお菓子を貰うんだとか、
数少ない顔見知りの小傘が誘ってくれたものの、
「ああ、うん、そんな歳じゃないからさ・・・ごめんね」
下らないプライドは理性を押し付けて、口からは思いもしない言葉が飛び出してしまった。
それで、私が後悔するのはどうでも良い、ただ、
「え・・・ごめんね、ぬえの都合も考えずに・・・」
小傘を傷つけたかもしれない、そんな感覚が心を深く抉った。

白蓮は存外早くここに馴染めたみたいで、
家の前に飾られたかぼちゃ提灯と、中から聞こえる知らない笑い声が私の居場所が無い事を教えてくれた。
だよなぁ、
私は嫌われ者だもんなぁ、
そうでなかったらこんな夜に一人で暗闇を歩かないし、
もっと誰かから誘いがくるはずだもの。
「う・・・ぐす・・・」
折角、封印が解けたのになぁ、
一人ぼっちなのは、自分のせいだもんね。
「うあ・・・うぅ・・・」
泣いたって良いじゃないか、どうせ誰も来ないんだし、
涙がずうっと流れ続けて、涙に海に溺れてしまえれば良いのに。

「大丈夫?」
声が聞こえて、顔を隠した。
泣き顔なんて見られたら恥ずかしいし、みっともない。
「ほら、涙拭きなよ」
渡された布で涙を拭くと、
目の前には人間の男が立っていた。
歳は・・・私の見た目と同じぐらいだろうか、
白い大きな布を持っていた。
「こんな時間にこんな所で・・・本物の幽霊かと思ってびっくりしたよ」
「は・・・でも私、妖怪なんだけどね」
ああ、駄目だ。
素直にありがとうって言えば良いのに、
強がって、馬鹿みたいだ。
「あはは、じゃあこれあげるよ」
彼は笑って流して、懐から飴を取り出した。
「これは・・・?」
「うん、いや、結構驚いたからさ、泣き声で」
ああ、そうか、
ハロウィンだから、か。
「優しいんだね」
「そうかな」
表情一つ変えずに、自然に返してくれると嬉しい。
軽さが、重さが、ちょうど良くて、心を埋めてくれる。
「ねえ、君はなんて言うの?」
「ああ・・・○○って呼ばれてるよ」
「じゃあさ、○○、今からでもハロウィンは楽しめるかな?」
どうかな、
彼は気まずそうに時計を出した。
「ハロウィンはもう終わったよ、今日は11月1日だ」
時計は1を指していた。
「あ・・・
 じゃあなんで、私に飴をくれたの?」
「なんか、うん、見た目だけで言うのもなんだけどさ。
 ・・・・・・好きになったから?」
「なっ・・・!///」
う、あ、駄目だ。
嬉しい、凄く嬉しいけど、
こういう時どうすれば良いのか分からないよ。
他人に好かれた事とかないから!
「ご、ごめん、今凄く混乱してる、かも」
「あぁ、いや、その、言ったこっちも軽率だった、ごめん」
「い、いや違うの!嬉しいの凄く、あの、良かったら一緒に」
一緒に、居ない?
「もちろんさ」
お互い、心拍は高いままだけど、
手をしっかり握って、
暗い夜道を、ゆっくり歩いた。



「アンタ最近、気持ち悪くなったね」
ムラサが第一声に発した言葉がそれだった。
「は、はぁ!?あんた人を馬鹿にするにしても言葉を選びなさいよ」
「いや、明るくなって、人当たりも良くなったと思うよ?
あぁ、そういえば、彼氏が出来たんだっけ・・・」
琴線に触れるってのはこういう感じなのだろうか、
彼は、私から離れないように隠してた筈なのに、
私しか友達は居ない筈なのに、
何で・・・!
「でもあんたは性格悪そうに見えてこそあんたらしいって・・・」
「どこで知ったの」
「え・・・・・・」「どこで○○の事を知ったかって聞いてんのよ!」
ムラサの肩を掴んで問い詰める。
友人を失う後悔よりも焦燥が走った。
      • ○○の方が大事だ。
「し、新聞よ、新聞。
 あんた達が夜中に会ってるの、記事にされてたんだって」
「そう・・・なら、良いけど」
「しかしあんたも中々・・・面食いね、○○って結構かわい・・・いや、何でもないよ」
「なんて言ったの?」
「い、いや、だから、
 あんたの彼氏って、結構可愛いなぁ・・・って」
「私から○○を奪うつもり?」
「そんな訳ないって、あくまで感想を言っただけだよ」
忌々しい、何が感想だ。
人の物に気がある癖に。
○○、早く会って、
他の誰かに、見つからないようにしないと。
あなたの友達は私だけなんだから。
だって、そうじゃないと、
あんな晩に一人で居る筈が無いよね?
ねえ、○○・・・・・・

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最終更新:2010年08月27日 12:16