我に返った俺を、後ろからアリスが羽交い絞めにしていた。
「私達ね、分かり合う事が出来たの」
 アリスの顔は見えず、しかし、ゆっくりと左側の眼の視力がおちてゆき、失われていくのが分かった。
「そうね」
 頷き答える様にして、本を読んでいたパチュリーが振り返った。
「わたしは、あなたが欲しいの。アナタ(ココロ)が」
 呼んでいた本は、白紙だった。
 が、失われていく視力の感覚が、何故か本の方から、呼び寄せている様な感覚がする。
「私も、貴方が欲しいの。アナタ(カラダ)が」
 パチュリーの濁ったガラスの様な眼に、アリスが映る。
 その表情は、まるで狂――


「本にして手元におけば、動かずとも一緒に居られるでしょう?」
「人形にして飾っておけば、永遠に命を享受出来るしね」

 ええ、そうよ。わたし、私たち、達。
 あなた、貴方をあいして、愛しているんですもの。
 苦しんで欲しいなんて、これっぽっちも思ってないわ。


「大丈夫よ、○○」
「どっちも壊れない様に、痛まない様に」

「ずぅ~っと。……手入れしてあげるから、ね」
「は、あは、あははっ、ぁははははっ」


 刹那、まだ動く右側の体の力を振り絞るようにして、俺はアリスを突き飛ばして

 パチュリーの前へと、跪いていた。

 な、ぜ。

 自然と、見上げたパチュリーの顔が眼に入った。

 残った右の眼の視力が、うっすらと、それを映した。

 酷く寂しそうな――
 何処か壊れた、純粋な、少女の瞳を

「また私を置いて……帰る、つもりなの……?」

「もう、置いてけぼりは嫌……」

「……嫌…………嫌……」

「置いていかれるのは、もう……何処へも……」

「……ドコニイクノ?

 ワタシヲオイテ……」

 彼女の言葉に動く事が出来ずに

 後ろから触れた

 恐らくはアリスの、何かが


 自分を、縛り上げていた。


 日の差さない、その図書館は薄暗く。
 色濃く、その闇を強調するかの様に静まりかえっていた。

 所々で働いている筈の小悪魔達の姿も無い。

 ただその奥でパチュリーは、椅子に座り幸せそうに、眠っている。
 一冊の本を、大事そうに抱えながら、ゆっくりと

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最終更新:2010年08月27日 14:24