「…そうですか、○○さんは行方不明に…
 …それはなんともご愁傷さまというか…
 …いえいえ、まぁスクープといえばスクープですが…
 …え?よろしいのですか?…
 …はぁ、そう仰るなら記事にさせていただきますが…
 …はい、そりゃ勿論ですともっ、いえいえ…
 …では、今後も文々。新聞をよろしく致します」

 紅魔館から1人の鴉天狗が舞い上がった。
 射命丸文、幻想郷に傍迷惑なゴシップ満載な新聞をばら撒く記者である。
 どうやら記事になるもの得た様だが、釈然としない表情を浮かべている。
 それもそのはず、紅魔館の住人は外来からやってきた人間、○○の事を大切に思っていたはずである。
 その○○が行方不明という。
 しかもそれを記事として大々的に掲載してほしいという。

 おかしい、そう文の第六感が告げていた。

 しかしまぁ、スクープはスクープである。
 許可を貰っている以上、大いに書かせてもらうことにする。
 そう気を取り直して滑空していると、紅魔館から出たすく近くの木の天辺に何か違和感を感じた。
 なんだろうか、そう思って近づいてみると、どうやら手帳の様なものが引っかかっている。

 誰かの落し物だろうか。
 こと幻想郷は空を飛ぶ者が人妖問わず多く存在する。
 落し物なら拾ってやるのが情け、さてさて、何が書かれているのやら、決して好奇心ではなく、純粋に持ち主を知るためである。
 そう文は口の中で反芻すると手帳を開いて中を覗き込んだ。



1月1日
 驚いた。
 今年から日記でも書こうと思ったら俺はとんでもない世界へ来てしまった。
 どうやら幻想郷という神隠しに遭ったら来てしまう場所だという。
 俺は命からがら逃げてきた所が紅魔館という赤い館だった。
 人間がいない、やばい死ぬかも。

1月2日
 殺されたりするんじゃないかと思ったがそうでもなかった。
 みんな良い人だ。

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.(○○さんの日記ですね、幻想郷に迷い込んだ時の初々しい様子が目に浮かびます)
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3月15日
 今日も疲れたっ。
 咲夜さんは手厳しい。
 だけど凄く充実している毎日だ。
 お嬢様は普段カリスマを出してるけど、実はとても愛らしい方だし。
 いやいや俺ロリじゃないぜっ本当だぜっ。魔理沙かよっw

3月16日
 中国wwww
 いやいや美鈴さん、まじハ゜ネェwww
 咲夜さんに説教されて項垂れていると思ったら、実は寝てたwww
 すげぇ、そこに痺れないし憧れないwww

3月17日
 幻想郷と外の世界では季節の流れも違うんだな。
 もう桜が開花し始めてる。
 そろそろ宴会か。
 いや結局、いつもやってる訳で。
 明日は里へ葡萄を仕入れに行かないとな。
 1日でビンテージ物ワインになっちゃうけど。

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4月1日
 外の世界では4月バカというのがある、というのをお嬢様に教えたら凄いイイ笑顔で出て行った。
 その後、ボコボコになって帰ってきた。
「霊夢が本気で怒ったの…」
 涙目、ヤバイって、マジ上目遣いとか危険だから。

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7月7日
 七夕、いいのか?
 吸血鬼だろう、いや、ノリさえ良ければなんだっていいのかも。
 咲夜さんが、永遠亭まで行って来て、貰って来たという笹竹に大量の短冊が下げられた。
 お嬢様は大量に願い事書きすぎ。
 中国…は、紅美鈴ってでかく書かれても…涙が出そう。
 パチェは一言、本って…すでに本に囲まれてるでしょうに。
 妹様の願い事…は、見なかった事にしよう。
 破壊的なお願いはやめよう、ダメっ、絶対っ。

7月15日
 お盆で中有の道が大混雑だってさ。
 冥界の白玉楼で宴会だって。
 俺は行かない。
 怖いじゃん幽霊とか、妖夢は可愛いと思ったけど。
 幽々子さんはナイスバディすぐる、反則。
 え? 幽霊だって? ははは、何をバカな事を

8月未明
 ひ ま わ り 怖 い

8月20日
 よく生きてた俺。
 褒めて使わす。
 ありがたき幸せ。
 マジお嬢様自重。
 吸血鬼は流水ダメなのっ、プールとかダメっ。
 半泣きで俺にしがみつかないで、色々ヤバイから。
 咲夜さんはメイド服だった。
 ラフな格好を一度も見たこと無い、魔理沙が言うように本当にパッ(黒く塗りつぶされている)
 美鈴巨乳、パチェ隠れ巨乳、福眼、ビキニとか眩しすぎる俺の目が焼きつきそう。
 あと、こぁ自重、それ水着違う、主に外の世界でSMとかにあるような危険度MAXな衣装だから。

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.(本当にただの日記っぽいですね、けど○○さんって意外と猫かぶりだったんですねぇ)
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9月20日
 残暑、涼しくなってきた。
 クーラーは無いし扇風機もない、けど大図書館は涼しいから入りびたりの毎日だった。
 俺専用ソファーまで用意した俺も自重するべきかw
 でもソファーのすわり心地がいいからって、たまにパチェまでこっちきて座りだすのは少々つらい日々であった。
 良い匂いするんだもん、ムラってきちゃうじゃな~い。
 それより危険なのは妹様。
 俺めがけてダイブやめよう、ほんと俺ロリでいいや。
 いや、美鈴派だっ!パチェでも可。
 こんな事書いてる俺キメェ、まじきめぇww

10月28日
 さすがの俺でも気づく事がある。
 お嬢様と妹様の喧嘩の原因が俺である事が目立つようになってきた。
 お嬢様いわく節度がない。
 妹様いわく俺の独り占めずるい。
 アルェー、なにこれ。怖い。

10月29日
 美鈴が刺された。
 俺が昼に庭園を散歩してたら美鈴が花壇の世話してて、井戸端会議しただけじゃん。
 最近どうも俺の周りがおかしい。

11月10日
 やばい。
 そろそろヤバイ。
 パチェがこぁとグルになって俺に訳わからん魔方陣の上で変な契約させようとしてきた。
 お嬢様のグングニルが飛んできて凄いことになった。
 俺、超逃げた。
 咲夜さんに心配された。
 しばらく部屋から出ないように、とか。
 親身になってくれる咲夜さんマジやさしい。

11月12日
 違う、これ南京。誤字すぐる。
 軟禁。
 え、まじ、どういうこと?
 食事持ってきてくれた咲夜さんの目がちょっと怖かった。
 一人だと暇だなっ思ってたら窓からお嬢様がやってきた。
 パチェがちょっと先走りすぎた、とかなんとか言ってたが意味わかんなかった。
 でも気になる台詞だ。

11月20日
 今日は雑炊でした。
 うまかったです。
 軟禁じゃない、コレ監禁言うの。
 わーい、俺どうなるのかなっ。

12月1日
 あまりに暇なので外から流れてきた本を持ってきてもらった。
 漫画たっぷり、ニート引きこもり怖くないぜっ。

12月7日
 ジョジョwwwまじってるwww
 レミリアに「俺は人間やめるぞ!」ってシーン、漫画をレミリアに見せながら言ったら、なんか吃驚してた。
 ジョジョに興味持ったのか、漫画を読み出した。
 俺の読んでる巻、奪われた。
 しかたないからマキバオーでも読む。

12月10日
 レミリアが「満足いく結果を出すわ」とか張り切ってた。
 ワケワカメ。

12月15日
 監禁生活一ヶ月以上たちました。
 とても…寒い…です。
 うそですが。
 暖炉あるからね。

12月24日
 外ではイブですね。
 でも残念、ここ吸血鬼の館ですからっ。
 でもなぜかケーキ持ってきた咲夜さん。
 なぞ。

12月30日
 今年は大変な一年でした。
 いやいや色々あったねぇ。
 お嬢様、妹様、咲夜さん、パチェ、こぁ、美鈴。
 お世話になりました。
 年末から、なんか色々おかしくなり始めたけど、来年はきっといい年になるはず。
 パチェの俺に対する暴走がなんだったのか。
 もしかして、夏に入り浸ったせいで嫌われたとか…ありそうで怖い。
 妖怪だらけの幻想郷ですが、俺は元気に一年過ごしてきましたっ。
 …まぁまだ、あと1日あるわけですが。
 明日は大晦日、明けの明星に願いをかける大切な日だから、俺も部屋から出して貰えるんだって。
 ヤッタネ

12月31日
 俺は人間では無くなってしまった。
 よって日記はこれで終わりとする。
 安定するまで地下の棺で眠りにつかなくてはならないらしい。
 さようなら昨日までの俺。
 自由とはなんだろう?
 紅魔館全ての住人がグルだったなんて信じられない。
 もっと信じられないのがみんなが俺のこと好きだって…言う。
 眠りについて、目覚めたらみんな俺の嫁になるからってイイ笑顔で言われた。
 それなんてエロゲ。
 しかし俺は一向に構わないっ!
 おやすみ、SEE YOU AGAIN!






 私、射命丸文は、この手帳を、力の限り、遠くにぶん投げた。

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最終更新:2010年08月27日 14:29