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外来人としてこの幻想卿に来て数年、香霖堂に僕は保護されていた。
右も左も解らず当てもなく、当惑していた僕を森近霖之助さんは迎え入れてくれた。
色々苦労しながらも根気よく世話を焼いてくれた霖之助さんには本当に感謝している。

そんなある日、近くの人里への買い出しの役目を与えられた僕に、霖之助さんは言った。

「人付き合いが少ない僕が言うのもなんだけど、くれぐれも人間も妖怪もお付き合いは慎重にしなきゃいけない」

そうなんですか霖之助さん、この店に来る人達はみんな気のいい人なんですけど。
最近、毎日の様に来る紅白巫女さんや魔法使いさんや人形遣いさんは気のいい人達ばかりだ。
まぁ、仲が悪いのか喧嘩し易いのが玉に瑕だけどね。
そんな僕に対して霖之助さんは溜息を吐くと、注意を続けた。

「里も道中も人と魔が沢山居る。優しすぎても駄目、優しく無さ過ぎても駄目。つまり、無関心。これが肝心だ」
「はぁ……」
「特に女性は……、はぁ、君は持てるというか、惹き付け易い。魅入られない様に気をつけなさい」

そんな事を言われ、買い出しに僕は向かった。

①太陽の丘を経由して人里に向かう。
②霧雨邸に行きタクシーをお願いする。
③川沿いに人里へと下っていく。
④最近幻想郷に引っ越してきたと言う、魔界の住人達が住む館の様子を見に行く。


そのルートは比較的安全だった。
何でも太陽の丘周辺は大妖怪と呼ばれる存在の為に低級な妖怪の活動が抑制されてるらしい。
その大妖怪は好戦的ではあるが、弱い存在にはとんと興味がなく縄張りを荒らさなければ大丈夫との事。

だったら大丈夫だ。僕はただの人間だし、太陽の丘の横を過ぎる道を歩くだけだ。
花畑やなんか目立つものに対してちょっかいを出さず、粛々と通過すればいいだけの事。

ただ、日課がひとつ増えた。日傘を差しながら花畑の管理をしている綺麗なお姉さんと挨拶だ。

日中は広大な花畑を巡っているらしく、偶に遠くに姿を見たり直ぐ側に居たりする。
最近は僕が通る時は話しかけれる距離でよく会う。別に深く話したりはしない。
挨拶だけか、良いお天気ですねとか程度だ。
僕だって美人さんから笑顔で話しかけられたら悪い気分ではない。
だけど、恩人の忠告は受け容れるべきであり、あまり深入りはしないようにしよう。

そうして暫くする内に、彼女から昼食を共にしないかとか、言われ始めた。
やんわりと断ってはいるけど、流石に家に来ないかとかは……美人のお誘いだし嬉しいけどね。
ただ、霖之助さんの忠告はキチンと守りたい。ちゃんと線は引かないとね。
だけど、これ以上断るのも悪いしなぁ……明日からルートを川沿いにしようかと思う。
今日は最後だし、丁寧に挨拶しておくとしよう。

……日記は此処で終わっている。


尚、数日後に香霖堂へ某女妖が訪れ、自宅に○○を同居させるから心配ないとの通告があったそうな。


とある○○の日誌(病み強ver)


そのルートは比較的安全だった。
何でも太陽の丘周辺は大妖怪と呼ばれる存在の為に低級な妖怪の活動が抑制されてるらしい。
その大妖怪は好戦的ではあるが、弱い存在にはとんと興味がなく縄張りを荒らさなければ大丈夫との事。

だったら大丈夫だ。僕はただの人間だし、太陽の丘の横を過ぎる道を歩くだけだ。
花畑やなんか目立つものに対してちょっかいを出さず、粛々と通過すればいいだけの事。

日傘を差しながら花畑の管理をしている綺麗なお姉さんが居るが、彼女とも距離を取ろう。
何事も用心が必要だ。道はやや斜面になっていて畑から死角になってる場所もある。
そこを通過しよう。

日中は広大な花畑を巡っているらしく、偶に遠くに姿を見たり直ぐ側に居たりする。
最近は僕が通る時間帯には道側に居る事が多い……が、別に話したり挨拶はしない。
視線や顔を合わせれば会話や挨拶をせざるをえない。だから、見えにくい場所を通る。
僕だって美人さんを無視したり敬遠するのはちょっと、とは思う。思うけどこれも必要な事だ。
恩人の忠告は受け容れるべきであり、深入りは当たり前で挨拶レベルでも気をつけるべきだ。


そうして暫くする内に、彼女から声をかけられた。
この付近を通るのに自分を無視するとは何事かとか言われた。
慌てて逃げてしまったけど。悪い事したかなぁ。
だけど、これ以上あのルートを通るのはどうかと思う。今日からルートを川沿いにする。
安全性は確保されてるらしいので、これで気兼せず里に買い物へ行けるぞ。

……日記は此処で終わっている。


尚、数日後に香霖堂へ某女妖が訪れ、自宅に○○を同居させるから心配ないとの通告があったそうな。
結局、付き合いの浅い深いが問題ではなく、接点が出来てしまったのが問題だったようだ……。




○○はぼんやりと知らない天井を見上げていた。
手足は動かない、首すらも動かない。
トロンとした倦怠感の中で、僅かに口と目を動かす事だけが彼に出来る自由の全てだった。

「あら、起きてた? 今日も調子が良さそうね」

笑顔の彼女が視界に映る。
口を動かして聞いてみた。『何故?』と。
僕達は挨拶する程度の仲だった。
それなのに、なんでこうなってしまったのかと。

この部屋に入れられ、日々怪しい蔦越しに何かを身体に注ぎ込まれている。
胡乱な頭の中でも、自分が人間から乖離されていくのが解る。
次に開放される時には、外観は人間でも中身が人間で無くなってしまう事も。

もう一度口を動かして聞いてみた。『何故?』と。
僕達は挨拶する程度の仲だった。
それなのに、なんでこうなってしまったのかと。

「何故? 面白い事を言うわね○○」

彼女は、世話をしている向日葵の様な眩しい笑顔を浮かべた。
一切の負の感情を感じさせない、青空の様な爽やかさすら感じる笑顔。

「一目惚れをした、あなたが欲しくなった。だから自分のものにする。それだけの事よ」

身体の中にまた何かが注ぎ込まれる中、○○は確信した。
女性にとっての恋愛感情というものは、世のあらゆる不条理を凌駕するものなのだと。

①太陽の丘を経由して人里に向かう。
②霧雨邸に行きタクシーをお願いする。
③川沿いに人里へと下っていく。
④最近幻想郷に引っ越してきたと言う、魔界の住人達が住む館の様子を見に行く。


○日目

川沿いは危ないかと思われていたがそうでも無かった。
聞くところによると、人間の盟友である河童達の勢力圏らしい。
比較的人里との距離も近いし、これなら問題なく往来出来そうだ。

●日目
河童の川流れを実際に見た、慌てて助けて川縁に上げる。
何でも水中で爆発実験したら聴音をやられて気絶したらしい。アホだ。
礼をすると言われたが、謝辞して買い物に向かった。
人助け(?)をしないほど冷淡にはなれないが、それ以上親しくなるのもどうかと判断したからだ。

▲日目
河童に声をかけられたが、挨拶で済ませて通り過ぎる。
途中で行き先を間違えたのか、犬っぽい天狗に制止され道を戻る。

×日目
河童に胡瓜を押し付けられた。仕方ないので貰う。
犬っぽい天狗に声をかけられた。今日は迷ってないので問題はないのにね。

■□日
麓の茶屋で一服してたら犬っぽい天狗に将棋を申し込まれる。ルール知らないので断る。
帰り際に河童の待ち伏せを受けた。何だか後ろから付いてきていた犬っぽい天狗と口論していた。
その隙に帰ってしまったけど、別に悪い事じゃないよね?

◆日
帰り際に弾幕戦が発生していた。
どうやらいつもの川縁で犬っぽい天狗と河童がやらかしてると逃げてきた釣り人に教えられた。
仕方がないので一旦戻ろう。確か、白黒魔女が買い物に来ていた筈だ。
同乗させて貰おう。何だかあの2人最近喧嘩ばっかりだな。

□×日目
行きで川中から飛び出して来た河童に猛然と訴えられる。
あの犬は自分を狙っているストーカーだという、盟友である自分と一緒に居れば安全だと。
帰りで犬っぽい天狗に騒然と訴えられる。
あの水棲生物は君の尻子玉を狙っている。今後は自分を呼べば空中移動で運んで上げると言われた。
……正直、身の危険を感じてきた。どっちからもだけど。

ΛΔ日目
もう、霖之助さんの教えも意味が無くなりつつある。
自分がどうリアクションしようが、あの2人は僕と接触しようとしてくる。
あまつさえ喧嘩すら絶えない有様だ。
このルートは危険だ。明日を最後に別のルートを行く事にする。

×××日目
問題が解決した。
川縁で2人に掴み掛かられ、もみ合いになっている所をとある人に助けて貰ったのだ。
「南無三―――!!」のかけ声を共に犬っぽい天狗と河童は吹き飛ばされ、下流に流されていった。
助けてくれたのは白蓮さんという。何でも人里で最近話題に上がるお寺の住職さんらしい。
上流の滝で修行をしてた所、僕の抗議の声を聞きつけて助けに来てくれたそうだ。
今後は修行がてら僕の事を送迎してくれるらしい。いや、ホント助かった。
安心して買い物に行けるし、霖之助さんへの恩返しも出来るようになるぞ。
いやはや、徳のある人に出会えて良かった。


日記はここで途絶えている。


数日後、某寺の住職が香霖堂にやって来て、○○が寺男を希望しているとの事で問題はないと通告していったという。


店番ver

「やっぱり、君に任せるのはちょっと早いかもしれない。僕が行ってくるよ」

と言うわけで霖之助さんが買い物、僕は香霖堂に残って店番。
……と言ってもやって来るのは2~3日に1回の割合で魔理沙か巫女さんなんだけどね。
だからまぁ、僕がやることは掃除と座ってぼーっとする事ぐらいだ。

○日目
退屈だな、なんて思ってた時期が僕にもありました。
最近になって地上に降りてきているらしい天人がやって来るようになった。

×日目
散々な物言い(ゴミ屋敷)している割にゃ、結構な頻度で天人……天子はやって来る。
こっちゃ店番モードなんで素っ気なくしている。買い物なら兎も角、店番でも態度は素っ気なくってどうなんだろな?


□日目
天子はやってきちゃ、アレは何だの説明しろだの泥臭いのを我慢するから茶ぐらいだせだの言ってくる。
霊夢曰く自分の暇潰しに神社粉砕した奴だ、この店を癇癪で潰されては堪らない。
仕方がないので茶を出してやる。苦いだの熱いだの文句言われた。だったらお代わりすんなと言いたい。

××日
茶の礼だの言われて天界の桃を貰う。うめぇ、すげぇ、甘い。1個食った時点で魔理沙が来て残りを食べられた。
激怒した天子と魔理沙の間で弾幕戦開始。外でやれ外で。
すげぇ光線とか岩盤とかが飛び交って外にあったガラクタの一部が消し飛ぶ。
一段落付いた辺りで、天子に人付き合いを見直せだの言われる。友達居ない君にンな事言われたくないなぁ。

□●日目
天子が天界に遊びに来ないかと言ってきた。店番があると言うので断る。

●○日目
ここしばらく、天子の機嫌が悪い。
毎回来る度に誘われては素っ気なく断っている所為だろうか。
何も言わず店内に居て僕の方をジト目で見ている。帰り際にまた誘われたが断る。

□●■日目
天子が最近来ない。お目付役を名乗る竜宮の使いが探しに来た。どうしたんだろ。

□。日目
今日は少し睡眠不足だ。何だか床の下でゴリゴリ鳴っていた。でかい鼠でも居たんだろうか。
久し振りに天子がやって来た。何だか妙に機嫌が良い。
今回は天界へのお誘いは無かった。その代わりに勝手に土間に上がられたりする。
何やってるんだあいつは。
帰り際のアイツの笑みが妙に目についた。
……次回来たら天界へのお誘いに乗ってみるかな。断り続けるのも悪いし。


日記は此処で途絶えている。


翌日の文々。新聞一面
『魔法の森の香霖堂が崩壊!?』
局地的な大地震により香霖堂の一部が倒壊した模様。
店舗側や他の居住区は奇跡的に無事で、店主である森近霖之助は無事。
ただ、地震の中心地に居た外来人○○氏の行方不明となっている。
瓦礫を撤去しても姿を確認出来なかった為、付近を有志が捜索中との事。
現場には負傷らしき痕跡は無かったものの、○○氏の安否が気遣われる。






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最終更新:2019年02月09日 23:40