○○は白蓮の滞在して良いという申し出をホイホイと受けた。
鼠ッ子が嗤いながら言った。いいのかい兄さん、ホイホイ付いていって、と。

○○は言った。
僕、寺育ちなもんで寺職に偏見とかそう言ったものはないんだよと。

それから数日間、彼は白蓮から直々に甲斐甲斐しく世話を受けた。
彼女曰く、彼は死に別れた弟と似ているとか。

なるほど、やけに自分へ親身に接する訳だと○○は納得した。

それから更に更に数日後、そろそろ補修も済んだだろうと寺から出ようとしたら総掛かりで引き留められた。
特に白蓮の腹心である寅さんは凄い気迫で○○を寺に永住させようとした。

「だがよサクラ、俺は男、悪いと知りつつ流れ流れるモンなのさ」
「いや、それをいうなら私の方じゃないですか?」

そんなアホな会話をしていたら、超音速で飛んできた飛鉢で意識がブラックアウトした。
いや、凄かった。頭に炸裂した後で音が聞こえてきたのだから。

意識が醒めた後、何故か白蓮の部屋に○○はいた。
部屋の主は直ぐ側に居て、普段通りの穏やかな笑顔を浮かべている。
だが、その僅かに開いた目からは、ズットイッショニイテ、デナイトナムサンヨ? な剣呑極まる雰囲気を放っている。

「○○さん、ずっと一緒に暮らしましょう。あなたは寺男に就職すれば問題ありません」

ここに到り、○○は白蓮が病んで居る事に気付いた。
勿論、大魔法使いにクラスチェンジした彼女が病に罹る事はない。
精神の、歪んだ愛の病だ。

○○は何とか白蓮を説得しようとしたが、全くを持って無駄無駄無駄。
ヤンデレに正論なんざ通じない。論破も出来ない。彼女の精神の中で全て完結しているからだ。
恐ろしきはヤンデレと狂人と泣いた子供だ。論理が一切通じないのだから。

そして、○○の堪忍袋の緒が切れた……。
手にしたのは、宴会用に作った南京玉簾。

ジャラリと広げると、それはミョンミョンと発光する。
……何となく、戦闘用の経典を広げた白連を思わせるポーズだ。


「全く、病んだ恋愛感情とは御しがたい……」

下級妖怪如きに遅れをとったのは、大仕事を終えて消耗しきっていた直後に転移したから。
いまや、万全の力を取り戻し、白連の歪みを矯正せしめんとする彼は―――。


「ヤンデレとは、


誠に自分勝手で、近視眼で視野狭窄、妄挙妄動で、愛欲非道である!


いざ、破っ――――――!!!!」






結果として、夕日の河川敷で男同士が殴り合うようなスポ魂漫画展開の後、○○は丁さんと名前を変え、命蓮寺の寺男になったそうな。

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最終更新:2011年03月04日 01:40