満月の夜は様々なものを高ぶらす。特に幻想郷にいる吸血鬼や妖怪、獣人などの人でない者達にとっては最高に興奮する状態といってもいい。
そんな状態の外に外出する⑨はいない。出れば一緒で捕われ、運が悪ければお持ち帰りである。外から来た自分にとっては一番危ない時間帯なのだ。
だからこそ、今も家に篭っているのだ。早く夜が明けてくれればいいが・・・
「ドンッドンッ」
現実はそう甘くないみたいだ・・・
障子の方に目をやる。
見たことがある影が障子に写っていた。
慧音「○○、ここを開けてくれ。私だ。お前の愛しの慧音だ」
慧音さん。村の守護者で寺子屋で先生もやっているらしい。俺が幻想郷に入って戸惑っていたところを最初に助けてくれた人でもある。
大人の魅力溢れる慧音さんに俺は惹かれていたが、ある事件をきっかけに距離を置くことにした。
前の満月の事で、まだ俺が慧音さんが変身すると知らなかった時である。
いつもどおり部屋でくつろいたのだが、ツノが生えた慧音さんが頭突きで障子を木っ端微塵にしながら突っ込んできたのだ。
俺は何が起きたか分からずただ呆然とするしかなかった。
俺がなにか言おうとする前に慧音さんの言葉によって止められた。
慧音「体が熱い!私の中で何かが暴れている!?○○!この私を抑えてくれえーーーーー!!!」
そう言いながら押し倒してきたのはまだ覚えている。
それ以来、俺は慧音さんとは距離を置いている。
慧音「○○~。ここを開けてくれ~。何もしない!何もしないと誓う!」
障子には博霊の巫女から貰ったお札が貼ってある。前のようにはいかないはずだ。
○○「今日は疲れているので用件があるのなら明日お願いします」
慧音「大事な用件だぞっ!○○!今日じゃないと駄目だ!」
なんともなりそうにないので寝ることにする。お札も明日の朝ぐらいまではもってくれるだろう。
いそいそと布団に入る。慧音さんがまだ何か言っている。明日には元の慧音さんに戻るだろう・・・。
そう信じて眠りについた。
夜中に何かが障子にぶつかっている音で目が覚めた。覚醒しきれてない頭で障子の方を見る。
障子は若干血に染まっていた・・・
・・・まさか?
恐る恐る障子に近くにいく。
やはりそれはお札の結界を破るためにヘッドバッドをし続けている慧音さんの血だった。
俺は得体の知れない恐怖に襲われ倒れそうになる。
だが、倒れる前に障子が壊れた。そしてそこには頭から血を流しつつも平然としている慧音さんが立っていた。
慧音「随分と頑丈な障子だな○○。だか次の時には私が入りやすいようにしてくれ。」
それ以降○○は満月の夜には障子を外れやすくするようになったという。
最終更新:2011年03月04日 00:52