「なあ○○、他の女と話すのを止めてくれるか?」

ある日突然真剣そうな顔でそう言った。
勇儀と知り合ってまだ数ヶ月だが鬼でもこんな風にひどい酔いの時もあるのか。
少し心配になった。

「大丈夫か?少し飲みすぎじゃないか?」
「え、い、いや大丈夫だ。おかしなこと聞いちまったね」

そう言うと、急に笑顔になった勇儀はそのまま飛んでいってしまった。



別の日に宴会に参加した。
霊夢が賽銭が入らないわとこぼす愚痴に付き合い飲んでいると、遅れて勇儀がやって来た。
宴会場を一瞥するとこちらへ真っ直ぐ向かってきた。

「よぉ勇儀遅かったじゃな…」

「○○わたしと一緒に飲もう?な?」

そう言うがいなやおれを掴んで宴会場の隅っこへ移動する。

「やっと二人っきりになれたな…?」
「なんだ勇儀、来たばっかでもう酔っ払ってい…」

そこまで言いかけて勇儀が抱きついてきた、そしてそのまま口付けをされ酒を流し込まれる。
鬼が飲む度数の高い酒だ、思わず突き飛ばしてむせ返る。
鬼の陽気さにまじめに付き合っててはキリがないが、今のは冗談にしても少々たちが悪すぎる。
二人っきりと言いつつも宴会の輪から少し外れているだけだし、第一おれと勇儀はそんな関係ではない。

「いきなりなにをするんだ」

思わずそう抗議をする。

「…ひどいなあ○○、いくらわたしが鬼でがさつだからって、そんなに口移しが嫌か…?」
「…勇儀、本当に大丈夫か?今日は帰ったほうがいいんじゃないか?」

予想外の答えにおれは本気で心配しそう言った。
するとそれが通じたのか、○○がそう言うなら、と勇儀は帰っていった。
曇りの無い笑顔だった。



最近の勇儀の動向についてさすがにおかしいと思い萃香に相談を持ちかけてみたところ。
しばらくまともに相手をしなければいい、家に入れたりしちゃ駄目だよ、と言われた。
つまりなるべく会わず、会っても素っ気なくしていろということだ。
正直心苦しいものもあるが言われたとおりにした。

宴会の誘いも断り外出も極力控えた。
だけど、どうしても会ってしまう時もあった、そんな時は極力会話をしないで早めに別れた。
家に勇儀が来たときも居留守を使ったりして出なかった。
最初の頃は返事をしなければ直ぐに帰ったが、最近は戸や雨戸をドンドン叩いたり大声で何時間も呼ばれたりした。
そんな日が何日か続いた頃、ある日突然ぴたっと止んだ。
それからしばらくの間勇儀には出会わなかった。



さすがにずっと姿を見せないことに心配して萃香に相談に行ったところ。もう直ぐ帰ってくるよ、と言われた。
それから数日待つと戸を叩く音と、○○ーわたしだー、と勇儀が呼ぶ声がした。
おれはいても経ってもいられず戸を勢いよく開ける。

そこには腹から血を流しながら立つ勇儀がいた。

「あ…○○…やっと会ってく…んだな…萃…の言っ…通…だ…」

息遣いが荒くよく聞き取れなかった。萃香が、なんだって?
いや今はそんなことはどうでもいい。

「とにかく手当てをしなくちゃ、中に入って…」

そう言い家に引き入れた途端押し倒された。
勇儀が倒れたのを支えきれなかったのかと思ったが、そうではかった。

「あはぁ…わたしでもこんな怪我をすれば○○は心配してくれるんだな…」
「勇儀…なにを言ってるんだ…?」
「○○、わたしだって女なんだぞ?好きな男に心配の一つもされたいんだ…だけど○○はわたしのことを心配なんてしてくれない…」

うわ言のようだったが勇儀の目は本気だった。
これはおれの手に負えない、傷を負っている勇儀を一旦でも放置することに罪悪感を感じながらも萃香を呼びに行こうと勇儀を押しのける。
立ち上がったところで足首を掴まれ、そのまま握りつぶされた。

「どこ行くんだ…?このまま置いていかれたら、わたし、死んじゃうぞ…?他の女のことなんて見ないで、もっとわたしを見てくれよ…」

そう言って勇儀はおれを抱き寄せた。











~以下蛇足~
いつも台詞が少なかったから今回は多めに台詞を入れたけど、むずかしいぜ。
最初は萃香編なんて予定なかったけどいつの間にか続いていやがった。
~以上蛇足~

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最終更新:2010年08月29日 23:19