長編の前のおやつに神綺様好きが書いてみた。


「○○が、死にました―」
「・・え?」

突然だった。
自分の部屋で休んで居た神綺に夢子が告げた言葉。
彼女がそれを理解するのには、かなりの時間を要した。
そして、一言。

「殺してくる」

重い口調で、そう告げた。

「いやぁ~こりゃ良い死体が手に入ったってもんだ!
今日のあたいはついてるねぇ」
お燐は○○の死体を運びながら鼻歌を口ずさみ上機嫌だった。
「お燐、それってついさっき死んでた人間の死体?
ただの人間にしか見えないけど・・何処が気に入ったの?」
空が興味無さそうに尋ねる。
「こいつはただの人間じゃないってあたいの勘が言ってるんだよねぇ。
なんて言うか…そう。神々しいっていう感じ?
そういう匂いがするんだよ!」
「ふ~ん…。ね、ね!一口でいいから頂戴よ!」
「駄目駄目!こいつはこれから立派な怨霊にしてやるんだから!
お前につまみ食いなんかさせちまったらこいつの神様っぽい匂いが
落ちちまうかもしれないじゃないか!」
「む~」
「それにしても、この人間ついてないね。
多分間欠泉の一つが落とし穴みたいになってて、それに落ちて死んだんだね」
「なら、私のおかげじゃない。ね、一口で良いからさ」
「だーめ!」

くぐもった 声。

「そっか…あんた達か…」

「「え?」」

「私の○○を殺したのは…」

可愛らしかった服の赤さは その返り血で黒く染まり
白く美しかった銀の髪は 服よりも濃い赤い返り血を浴びていた。

「・・ひっ!お、お燐、逃げよう!何かこいつ、やばいよ!」
「ち、違うよ!○○って誰だい?!あたい達は―」
ズブリ。
嫌 な 音が した。
空が横を向くとお燐の背中から 何 か が出ていた。
それは 何? い や。 いやだ。違うよね?
お願い、夢なら覚め―

ゴトリ。

「○○…ああ、○○ッ…!!」
何かが切れたように、神綺は泣いた。
先程までの見た者を恐怖させる表情とは一変し
○○の死体を抱きしめ、子供のように泣きじゃくった。

「ううっ・・ヒッ・・グスッ・・うぇぇっ・・!!」

涙が止まる事はなく、神綺は泣き続けた。
その泣き声は、地霊殿全てに響き渡り、三日三晩止まる事はなかった…。



「○○…」
神綺の腕の中に○○は居た。
「お腹が空いたのかしら?それとも、遊びたい?」
優しい声であやす様に○○をベッドに降ろすと
遠くに居た子供を呼び、一人こう呟いた。
「○○を殺した責任がなかったとしても…貴方達には付き合ってもらうわね」
呼ばれた少女達には、猫耳と、烏の翼。
「ままー。どうかしたのー?」
「きっと、あたいとあそびたいのさ!だよね、おかーさん?」
「ちがうよー、ままはごはんのじかんだからよんだんだよー」
「あんたはさっきからたべてばっかりじゃない!」
「うにゅ・・じゃあおやつ?」
「それいがいにないのか!」
「うふふ・・じゃあ、ご飯を食べたら皆で遊びましょう?ね、○○?」
「あ、○○ずるいー」
「○○にはあたいがご飯食べさせてあげるねー」
(○○…今度こそ幸せになってね…この新しい世界で…)

神綺は魔界に戻る事はなかった。
地霊殿の奥深くで彼女を見かけたという話もあったが、定かではない。
確かめに行った者達も
二人の少女と、一人の女性が大切な何かを守るかの様に襲い掛かって来る為
とても近付く気にはなれなかったのだと言う。


そして―月日は流れ。○○が大人になった頃。

「ねぇ、○○。あなたは今、幸せかしら」
「突然、どうしたんですかお母さん。
俺は皆が居れば、それだけで幸せですよ?」
「そう―」

そして、何かを思った彼女の頬に。
一筋の涙が流れた―。

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最終更新:2010年08月30日 20:43