「いい天気ね~」

「そうだな~」

幻想郷の某所、河の上一艘の小船の上で一人の人間と亡霊が横になり空を見上げる。
空は快晴、河の流れも穏やかでのんびりと過ごすにはぴったりの陽気だ。


「しかし、なんでまたいきなり船なんかに乗せてくれたんだ?」

「あら?乗りたくなかった?」

そう言って村紗は体を起こしおれの頭を撫でる。

「なんだよー、なんかいつもと雰囲気違うじゃん」

「…そうかもね……ねえ○○?あなた今幸せ?」

「…幸せだけど……村紗、ほんと大丈夫か?」

普段と違う雰囲気を感じ身を起こす。
なら大丈夫ね。そう村紗は小さくつぶやいた。

「村紗?」

「あら○○大変、浸水みたい」

そう言い立ち上がった村沙の足元には水が溜まっていた。

「うわ、ホントだ。岸まで持つかな?」

口では心配したものの本心はそうではなかった。
岸まで多少の距離はあるが自身そこそこ泳げる方だし、目の前にいる彼女は空だって飛べるのだ。
しかし好き好んで服を着たまま泳ぐ趣味は持っていないのでオールに手を伸ばしたが…ない。

「どうしたの〇〇?早く漕がないと沈んじゃうよ?」

見れば水はいつの間にか足首にまで昇って来ていた。
こりゃ駄目だ、もったいないが船は諦めるしかない。あとで河童にでも頼んで引き上げてもらおう。

「村紗、駄目だ岸まで泳がないと」

「なら急がないとね、ホラホラ早く早く」

妙に急かす態度が気になったが、まあ絶賛沈没中なのだと思えば不思議ではない。
水に入る、少し冷たかったがどうこう言っても仕方が無いので岸に向かって泳ぎ始める。村紗も泳いで付いてきた。
しばらくして急に体が浮かなくなる…というか沈み気味になってきた、水をかいても一向に進まない、それどころか水面から顔を出すのがやっとだ。

「ヤバい、村紗助けてくれ」

あっぷあっぷしながらなんとかそれだけ言う、村紗が近き前から抱えてくれた。
助かったと思ったが沈降は止まらない、というか酷くなっている。

「む、村紗…」

そこまで言って完全に沈んだ。水中なのになぜか村沙の声が聞こえた。




〇〇ちょっと我慢してね



村紗の顔を見る、その目は沈んでいく河底より暗くて・・・・・・・・






数日後、命蓮時では〇〇の葬儀が行われた。
村紗は式には参加しなかった。ショックのあまりで…ということだった。回りも今はそっとしておこう、ということになった。
〇〇の死体は上がらなかった。


しばらくして村紗は立ち直りいつも通りの態度で復帰した。
回りは心配したが、いつも通りに振舞う彼女を見て態度を合わせた。
ただ河へ、〇〇が亡くなった場所へ頻繁に赴くようになった。




「〇ー〇、来たよ」

その言葉に反応するかのように○○が水面から出てきた。
その顔は彼女を恨むような表情を浮かべ、体は少し透明がかっていた。
そんな〇〇に彼女は抱きつき水面下へ沈んでいった。

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最終更新:2010年09月04日 01:12