最近、俺の部屋に何かの気配を感じる。
おまけに家具やらが少し動いていたり、冷暗庫に閉まっておいた惣菜の味が変わっていたりもする。
不安に感じた俺は、雑貨屋の店主と河童の協力を経て監視カメラを付けてみた。
隣家の屋根の上に設置されていて、俺の部屋の中に誰かがやって来たら写るって寸法だ。
俺の外出中、一体何が起きているのか。ちなみに俺の外出時間は朝九時から夕方五時くらいだ。
その日の夜、俺は帰宅して屋根にあったテープを回収、河童が持ち込んだモニターで確認してみる。
AM9:00~12:00 異常なし。
PM12:00~15:00 異常なし。
15:00~16:00 異常なし。
あれれ、何事もないじゃないか。
薄暗くなった部屋で、モニターだけが灯りになっている中、俺は首を傾げた。
そして16:30を過ぎた頃……部屋の押入が僅かに開いた。
と、言うか、良く見ると押し入れの床が外れてて、中に穴が開いてるし。
オマケにそこから金髪色の女が這いだして来た。
女はカサカサと辺りを這い回り、小さな声で「妬ましい」と繰り返している。
……って、この間地底に行商に行ったらいきなり攻撃してきて散々俺を手籠めにした女じゃねぇか。
俺が行商人だって何度主張しても聴く耳持たず、知らない男の名前を出して自分の家に監禁しやがったんだ。
やっとの思いで逃げ出して来たってのに、地上までわざわざ追い掛けてくるだなんて。
女はご丁寧に床の板を元に戻し、押入の襖を閉ざしてからカサカサとカメラの位置から消えた。
…………そして、僅か10分後、俺が帰宅してきたと。
………………待てよ。となると、アイツは何処に行った?
丁度、コイツが消えた位置と、カメラの向きを鑑みると。
パシ、と膝に手が当たる。
モニターが置いてある、雑貨屋で買ったでかい机の下から、白い手が伸びている。
全身を悪寒が包み込む中、机の下を覗きこんでみると……。
「わ た し を ま た お い て い く な ん て、 ね た ま し い わ」
歓喜に満ちた、病んだ緑色の瞳が2つ、暗がりに浮かんでいた。
その日から、その家は空き家になったと言う。
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最終更新:2011年03月04日 01:35