最近、○○さんに対するパチュリー様の依存が強くなっている。
今日も普段の読書を中断し、司書の仕事をしていた○○さんを自室に連れ込んでしまった。
最近はずっと部屋の方でパチュリー様と○○さんは愛し合っている。
少し前までは図書館内でも普通に致していたのだが、

「あれー、2人とも何しているの? ばっくどろっぷ?」

よりによって妹様に見つかってしまい、お嬢様に教育上悪いと怒られていた。
何とか妹様には「パンツレスリング」と誤魔化して事なきを得たが、それ以来は部屋の方でするのが基本だ。

全く、御自身の研究すら最近は進捗してない様子。
私がお仕えし始めた頃からずっと、殿方には一切目をくれなかったのに。
全く、困ったモノだ。よりによって○○さんだから。ね。
最初に強引な方法(魅了魔法)で関係を持ってからこっち、どんどん独占欲が強くなってしまって。
最近ではお嬢様、メイド長、中国にも会わせずに図書館から出ることを禁じている。
おかげで外来や図書館外との仕事が私に集中してしまって困っていた。
○○さんに任すと言った仕事だって、パチュリー様が甘えたり部屋に引っ張り込んだりで完全に滞っている。
当然、あの白黒魔法使いも盗みたい放題。
ただ、興味本位で白黒魔法使いが○○さんをからかった時だけは別。
全力で練り上げた日符が炸裂し、無制限と言えるほどに降り注ぐ賢者の石。
パチュリー様の本気具合を理解した白黒魔法使いが全速で逃げ出すまで攻撃は続いた。

「はぁ……でもまぁ」

あちこち修復や管理が滞り、本棚が倒れたままになったり掃除されてない図書館の中を歩く。
今頃、お二人は愛を交わしているだろう。正確に言えばパチュリー様の愛を、○○さんが、だけど。

「ほんと、妬けちゃいますねー。本当は……なのに」

自分の部屋に入りながら呟く。
多分、○○さんは話してないだろうな。
パチュリー様が傷付くし、もしそれがばれたら私は契約破棄どころか殺されてしまうだろう。

この紅魔館に仕え始めた頃の○○さんと一番早く仲良くなったのは私だ。
あれこれ相談にも乗った……当然、性欲の事もだ。
そりゃ、自分以外女性ばかりで、彼の意識を引く外観の持ち主も多い。
かといって職場だし、一番無力な唯の人間な彼は持て余したモノをどうしたら良いかと悩んでたようだ。

「だから、パチュリー様よりも先に、○○さんとしたのに」

まぁ、パチュリー様に従って自分も長々とこの図書館に引き籠もっていたのだ。
久し振りに人間の男を誑かしてみるのも悪くないと思って○○さんを自室に引き込んだ。
なかなか味が良かったのを覚えている。必死な○○さんはとても可愛かったし。

それから、○○さんを強く意識し始めたのだと私は思う。
それから半月毎に彼の『処理』に付き合ったのもあったかも知れない。
回数を重ねる毎に、○○さんの存在は私の中で大きくなって言った。
途中で、パチュリー様に横取りされてしまったけど。

困ったな。人を誑かすのが仕事の悪魔が人に誑かされてしまった。
クッキー作りのお師匠様からは「まさにミイラ取りがミイラになる、ですねぷっくっく」と笑われる始末。

…………さて、どうしようか。
このまま自分の中で燃え盛っている歪んだものを放置するのは悪魔らしくない。

「なら、悪魔だけに、悪魔らしくやらさせて頂きますか」

その時の私の笑みは、確かに悪魔だったと思う。
彼の体液を保管してある試験管に写った自分の顔は、確かに悪魔だった。
最終更新:2010年10月08日 23:15