俺は外来人と呼ばれる○○だ。
気が付いたらこの幻想郷と呼ばれる世界にある人里の側に倒れていた。
帰る事も出来るそうだが、好奇心旺盛な性質の為か暫く留まる事にした。

案内された長屋はガラガラだった。
俺のような時折現れる外来の人々の為に、作られた共同住宅らしい……が今はほんの数人しか住んでないそうだ。
適当な部屋を決めた後、案内役の老人に連れられて人里のあちこちを案内される。

里、と言う割には人口は多く、店舗も多くて品揃えが良い。
(日本のちょっとした田舎よりも充実していた)
人々の服装や日用的な技術は明治頃だろう。
意外な程西洋の品々があったのは驚きだった。

珍しい文化形式で注意力が散漫だったのだろう。
あちこち見ていた俺は向こう側から近付いてきた存在とぶつかってしまった。

「きゃっ」
「うわっとと、ごめん。」

可愛らしい悲鳴と共に地面に落ちそうになった箱を受け止める。
謝罪を言おうとして……固まった。
彼女は……少女はなぜかバニーだったからだ。

「え、えーと、すまない。これ、落としそうだったよね?」
「あ、は、はい、どうも。こっちも不注意だったから……」

うさ耳が生えていたものの、俺が謝ったせいかその後は大したトラブルにはならなかった。
薬売りと名乗った少女に大きな救急箱を返し、危なげなく俺は彼女と別れた。

「はぁ……お前さん達は何か惹き付けるものでもあるのかの?」
「……はい?」

俺とうさ耳少女の会話を離れた場所で聞いていた老人がぽつりと呟いた。
その目線は、遠くを見ている。

俺もそっちに目を向けていた。

日傘を差した緑髪の美女が、同じ髪の色の赤ん坊を抱えて買い物をしている。
里の守護者と紹介されていた妊婦さんが、大量のおしめを運んでいた。
新聞を配っている鴉天狗の号外は自分の婚約記事だった。
茶屋の軒先で数少ない長屋の住人とベタベタな感じで将棋を打っている白銀の鴉天狗。
「うーまーれーるー!」と大騒ぎしながら台車に乗せられて運んでいかれる大きなお腹の竹林の案内人。
執事服を着た青年にお姫様抱っこされながら買い物をしている紅魔館の主……と彼女に大きな傘をさしているメイドと同じく執事服姿の男。

「…………あれが、何か?」
「……いや、今度は、何日で君もこの風景の一部になるかと思っただけじゃよ」

老人はそう呟くと「何か困った事があったら世話役に相談しなさい」とだけいい、去っていった。

「……何なんだよ」

俺がこの老人の言葉に気付くのは、数日後うさ耳娘が長屋に遊びに来た時だった―――。

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最終更新:2011年03月04日 01:59