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「ぇ…………?」

 腹に刺さる衝撃。
 何か冷たいものが。
 腹が熱い。
 あれ?

「魔…………理沙……?」

 俯いたままの魔理沙
 ナイフを握っている両手は、血液で真っ赤だ。

「私はさ、お前と恋人になりたいよ……」

 声は頼りない。

「でもさ、お前はさ……いつも、アリスや霊夢と楽しそうにしている……」

 手は震えていた。

「私はさ、どうすればお前が私を見るかをずっと考えてたよ」

 思いっきり、ナイフを抜き去る魔理沙
 抜いたときの衝撃で、鋭い痛みが走る。

「っ、が……」

 俺がよろけた勢いで、魔理沙に組み伏せられた。
 痛みや出血や驚愕で、抵抗できない。
 マウントポジションを取った魔理沙の顔は濡れていた。

「それで、出た結論がこれだよ…………」
「!?」

 振り上げられるナイフ。
 避けられない。
 このまま、胸にナイフを突き立てられて、俺は死ぬ。

「私を見てくれないんだよな……、お前は。だから、私しか見れないようにしてやるよ…………」 

 死ぬのか…………?

 馬鹿か。

 死ねるわけねだろ。


「っ!?」


 壊れかけの体に鞭を打つ。
 伸ばすことすら面倒な両腕を使い、今ある渾身の力で魔理沙を抱きしめた。


「……ごめん、魔理沙。俺、知らないところでお前を傷つけちまったんだなぁ」
「…………○…………○………………」
「詫びにもならないかもしれないけどさ。本当にごめん……」



 今、俺が刺されて死にかけてるのは、他ならぬ俺自身のせいだ。
 だから、魔理沙を責めるの道理じゃない。

 俺が原因だから。

 こんな行動を取らせる程に追い詰めたのは俺なんだから。


「本当にごめんな、魔理沙。もう、お前しか見ないよ」
「ぅ…………、く…………」


 あまりに都合が良すぎるのかもしれない。


「俺はお前のことが好きだよ。他の誰よりも、愛している」
「ぅ、く、うあああああああああああああああああああああ」


 伝えるべきことは伝えた。


「こんな、俺でいいなら、恋人になってくれるか……?」
「あぁ、っぅ、私たちは恋人だ、っ、もう、ずっと、一緒だからなっ、」


 これで、もう何も無いだろう。


 後は、そうだな。
 もう眠い。

 それじゃ、少しだけ、眠ってしまおうか。











後日談





「あら、魔理沙。もう行くの?」
「ああ、もう行くぜ」

 博麗神社の境内に二人の少女がいた。

「そう、じゃ気をつけてね。○○さんによろしく」
「おう、任せとけ」

 箒に跨り、空へ発つ少女。

「さて、掃除でもしますか」

 もう一人の少女は立ち上がる。

 飛び立った少女は、もう見えなくなっていた。









「着いたぜ」

 魔法の森の一角に、少女は降り立った。

「元気にしてるか」

 いつの間に持っていたのか、手には花束が握られていた。

「ほら、恋人からのプレゼントだ」

 花束を置く。

「じゃあ、今日は用事があるからこの辺でな」

 言葉は霧散する。

「明日も来るぜ」

 そう言って、再び箒に跨り、少女は空へと発った。




 魔法の森にある、小さな小さな一つの塚。
 少女が巻き起こした埃だけが動いていた。












あとがき

はい。
読んでくれてありがとうございます。

うん。
○○はそういうことなんだ。

冥界で会えるんじゃねえの? と、いうツッコミは無しの方向でな。

ほら、雰囲気って大事じゃん。






感想

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最終更新:2019年02月02日 19:13