村のほうから、教会の鐘の音が響く
今日は大切な人の結婚式
私の愛した男と、私の大切な友人の結婚式
友人は、毎日毎日実直に門の前に立ち続けていた
行商をやっていた男は、そんな彼女に惹かれていった
もともと人当たりのいい○○は、館の中でも人気があった
私もそんな男に惚れた一人
それでも彼が門番との結婚を発表したとき、皆はその感情を捨てた
捨てられなかった愚か者は二人だけ
私と、お嬢様の二人だけ
館の者はほとんど休暇をとって教会に行っている
これから増える新しい家族を迎えるために
二人の新しい門出を祝福するために
祝福していない者は一人だけ
私ではなく、お嬢様
本音を言えば、私だって彼女が妬ましい
けれど私が彼を愛したように、彼女も彼を愛してる
そして彼女は恋敵だけど、大切な友達なのだ
だから私は二人を祝福したい
それが、到底無理なことだとしても
「咲夜、そこをどきなさい」
嫉妬に狂った女とは、醜いものだと思う
「私は、家族を害するものを許せません」
それは偽らざる本音
でも、私は無理をしていた
「あなたにとっても、美鈴は恋敵なのでしょう? 消えてほしいとは思わないの」
思わない、と言えば嘘になる
○○とずっと一緒にいられたら、そんな想像が浮かんでは消えていく
私らしくないけれど、そんなふうになりたい
だけど……私はそんな結末は望んでいない!
「あの教会にいけるのは、二人を心から祝福できる者だけ。……私たちは、入れない」
「咲夜さん、来てくれませんでしたね」
「それにレミリアさんもいなかったな」
「……やっぱり、私たちの結婚に反対を」
「そんなことないさ、きっとどこかで、俺たちを祝福してくれているはずだよ」
「……そうですね」
最終更新:2010年10月26日 00:18