父よ 母よ 妹よ 長らく心配をかけたが俺は今日、やっと家に帰ります
いやはや、この世界に来て苦節3年。ようやく帰れるチャンスが回ってきた
博霊さんの言うことにゃ、今日を逃せば次の帰還日はまた数年先になっちまうらしい
にとり「○○ー、感度は良好、聞こえてるー?」
○○「ああ、ばっちりだ。出発まではあと30分、モニターしっかり頼むぜ」
にとり「まっかせといてよ」
耳に取り付けた通信機から盟友の声が響く
にとりは今回の帰還ミッションにおいて非常に重要な役割を成しているのだ
つまり、風見幽香の監視である
なぜかは分からんが、俺は彼女に惚れられている
それが普通の恋仲 とかなら俺だって逃げるように帰ろうともしないさ
まずは帰ってくるのが遅いと平手で打たれる
メシが遅いとぶたれる
他の女と会っていたと殴られる
妻を大切にしていないと蹴られる
しかも本人に悪気が無く、当たり前のことと思ってるのが余計に感に障る
ちなみに幽香はうちに勝手に住み着いてるだけで、妻でもなければ恋人でもない
と友人に愚痴ったら指折られた、ちくしょう
そんな幽香に今日という輝かしい日がバレてみろ、間違いなく台無しだ
○○「にとり、幽香はまだそこにいるか?」
にとり「うん、よく見えるよ。守屋神社で○○が待ってるって言っただけなんだけど、すごく上機嫌みたいだね」
○○「ずいぶんと調子よさそうだねぇ……だまされたとも知らずに」
にとり「……○○、小悪党みたいだよ」
やかまし
今まで虐げられてきた俺が、あの風見幽香に最初で最後の抵抗をしようってんだ。テンションも上がるってもんだ
それから数十分、博霊さんと身辺整理についての話をした
俺の金、家財道具は全てにとりたち友人(妖怪)に譲渡してほしいだの、いろいろな
そうだ、最後ににとりにも挨拶をしなきゃなるまい
なんだかんだで、俺が幻想郷にいる間一番世話になった盟友だしな
○○「おーい、にとりー」
「………」
○○「あれ? どしたー?」
「………」
○○「管制室、ちゃんと援護しろよー」
「………」
故障か? おかしいな、さっきまでちゃんと動いてたのに
霊夢「どうしたのよ、さっきから」
○○「いやね、にとりとこれで連絡を取ってたんだが……」
「その声、霊夢ね」
……まて、今の声って、まさか
「博霊神社ね。今から行くわ」
その声を最後に、通信は途絶えた。装置ごと叩き壊したような音を残して
○○「………あの、今から大急ぎで支度して出発は何分後ですか」
霊夢「あと五分もあれば帰れるわよ」
○○「つかぬ事を聞きますけど、守屋神社から風見さんが全力でここに向かってきたらどのくらいかかります」
霊夢「なにそれ? まあ、おおよそ三分くらいだと思うけど」
その間、わずか二分! じょ、冗談じゃ………
その二分が俺の生死の分かれ目だ
どうすればいい、どうすればその二分がかせげる?
どうすればどうすればどうすればどうすれどうすれどうどうどうどうどうどうどうどうどう―――
「つかまえた」
最終更新:2011年03月04日 01:21