パチュリーネタを書こうと思っていたら別の物に変わっていた。ぬえぇぇぇぇん
興味を持った物はとことん調べる。そんな性質が俺には昔から染み付いている。例えば何故空が青いのか。とか、地下鉄にはどうやって電車を地下に送り込んでいるか。とか、臭いと分かっていてもなんで嗅いでしまうかなど。とにかく、自分が疑問に思った事や不思議に思った事は調べないと気がすまない。
だからこの幻想郷に入ってしまったのも、神隠しがよくある場所があると聞いたので、それが本当かどうかを確かめるために山に向かったらいつの間にか幻想郷の中にいたという訳だ。
最初は外にまだ調べたい物などがあったので直ぐに帰ろうと思っていたが、此処には外の世界には絶対に無い不思議な物が色々あったので、俺の興味がそそられ、この幻想郷に留まる事にしたんだ。
幻想郷は本当に凄い場所だ。妖精・妖怪・幽霊・魔女・天人など他にも沢山の説明がしきれない奴らや場所がある。それぞれを調べたたくても此処で調べられられる方法といえば、紅魔館にある大図書館や阿求さんが書いているらしい本を読む事だろう。後は聞き込みなどか。
残念な事に阿求さんが書いている本は結構な値段のため買えそうに無い。そうなれば残る二つの手段しかないだろう。
紅魔館に向かい、大図書館を使わせてくれるかどうかを聞きに行く。先にこっちの手段を使う事にする。いくら吸血鬼が住んでいる館と言われていても、無害な人間が頼み込めばもしかしたら図書館ぐらいだったら使わせてもらえるかもしれない。
俺は少しの希望を持って紅魔館に向かった。
事情を話せば紅魔館の門の前にいた妖怪は快く紅魔館の中に入れてくれた。
門番がそれでいいのか・・・
中に入って暫くうろうろしていると、メイドさんが目の前に出て来た。メイドさんは俺をじろじろと見て、口を開けて聞いてきた。
「事前に来るという連絡はされましたか?」
「い、いえ・・・」
「貴方は誰ですか?」
「○○です・・・」
一つ一つの質問に緊張しながら答える。何か間違った事を言えば取り返しがつかなくなるような気がする。そんな雰囲気がこのメイドさんから出ているからだ。
一通り話した後にメイドさんが何かを聞いてくると言って俺の前から消えた。ほっ、とする時間も与えられずにまたいきなり目の前に現れる。
「運が良かったわね。許可が下りたわ」
「本当ですか!?」
「嘘を言ってどうするの・・・」
メイドさんは呆れながら図書館まで案内してくれた。
想像していた以上に館の中は広く。図書館に着くまで時間が掛かった。俺は疲れが出てきているのにメイドさんは涼しい顔をしている。本当に人間か・・・?
「ここが図書館よ。中にいるパチュリー様に迷惑が掛からないようにね」
どうやらすでに先客が居るらしい。まぁ、変な事をしなければ追い出させる事は無いだろう。
俺は図書館の扉を開けた。
パチュリーさんとは本を読む事で趣味が合い、意気投合が出来た。お陰で前よりも図書館に行きやすくなったし、紅魔館の面子とも少しは仲良くなれたと思う。そんな中で一つの課題みたいなのが出来た。俺が調べた事をパチュリーさん自身に伝えて欲しいらしい。魔女である彼女の方が知識があるのは明確だ。なのに何故俺みたいな奴から知識を教えてもらおうというのだろうか?
だが、やっぱり図書館を使わせてもらっている義理があるので断るわけにもいかない。なので今も一通り調べて、まとまったらそれをパチュリーさんに伝えに行くという事をしている。
それが苦になっているかと言うとそうでもない。パチュリーさんとの会話も楽しいので、もう一つの趣味みたいになっている。
今回もパチュリーさんに自分が調べた事を伝えに行った。魔法について今回は調べたのだが、パチュリーさんの反応は中々良かった。
次は何を調べようか?そんな事を考えながら帰っていると途中で村の人が何かを話しているのを聞いた。
正体不明の少女がいるらしい。ある人はその少女を光の塊に見えたと言っていたし、ある人は色々な動物が混じり合ったように見えたと言っていた。
・・・調べてみる価値はありそうだな。
俺はその少女の「ぬえ」という名前だけを頼りにして調べる事にした。
調べるのは予想を越えるくらいに困難だった。その「ぬえ」 という名前は一応は歴史の本に書いてあったりするのだが、時代によって姿形が全く違うように書かれている。だが、どれも最終的には正体を暴かれて退治されているらしい。しかし、その重要な「正体」の部分がどこにも書いていないのだ。俺はその「ぬえ」という少女が変化したという姿を一つずつ調べる事にした。どこかしらにヒントはあるはずだ。
やっと・・・やっと調べ終えれた。「ぬえ」という少女の正体は「」だったのだ。随分と時間が掛かってしまった。だが、その分今回の調べ物はかなりの出来だと思う。早くパチュリーさんに見せたいものだ。だけど、その前に休憩が必要だ。ここ最近は頑張り過ぎてろくに寝ていない。見せに行くのはその後でもいいだろう。
窓の所に不思議な翼を生やした少女が○○の事を見ていた。自分の正体を明かそうとしている奴がいると気付いたからだ。
準備を整えて紅魔館に向かう。今回はどんな反応をパチュリーさんは見せてくれるだろうか?今から楽しみで仕方がない。
俺は紅魔館への道を急ぐ事にした。
後ろから突風が吹いたと思ったらいつの間にか木に押さえ付けられていた。羽みたいな物で拘束されているので逃げられない。
「あんたが私の事を調べ回っていた奴?退治屋には見えないわね」
「な、なんだ!?誰なんだ!?」
「あれ?私の事調べてたんだよね?だったら分かってるんじゃないの?」
「お前なんて知らない!早く離してくれ!」
謎の少女は首を横にヤレヤレといった感じで振ると、再び顔を近づけてきた。
「こっちにとっちゃ力が無くなるかもしれないっていうのに随分と呑気ね」
「どういう事だ・・・。!、まさかお前が・・・」
「そうだよ~。私が封獣ぬえちゃんだよ~」
まずい事になった。まさかあっちから来るとは思っていなかった。確かこいつは本に載っていた話では、正体を見破られると退治されていたはず。だから、その情報が漏れないよう俺の口を黙らせるめに来たのだろう。
「な、なぁ、正体の事は黙っとくから見逃してくれないか?」
「う~ん。人間はよく嘘つくからね。それに誰かに弱みを握られたままいるのは嫌だし」
ニヤニヤしながらそう言ってくる。多分どちらにしろ逃がす気は無かったのだろう。こうなった最後の手段だ。 こいつは力が無くなると言っていた。つまり、正体を言えば今の不利な状況を変えれるかもしれないという事。俺はこいつの正体を言うために静かに深呼吸した。
「封獣ぬえ!。お前の正体は・・・」
そこまで言いかけた所で中断させられた。口を口で塞がれたからだ。俺が必死の抵抗をしてもぬえにはなんの効果も無く。むしろ、より奥を探るように舌まで入れてきている。
ぬえの拘束から暴れて逃げ出そうとする中で、何かが喉を通っていった気がした。
やっと口を離されたと思ったら今度は体の調子がおかしくなってきた。とても熱いのだ。
「ぐ・・・ぐぁぁ・・・」
「どう?未確認の種の味は・・・。美味しいでしょ」
どうやら未確認の種とやらを俺の体の中に送り込んだらしい。背中の感覚が変だ。まるで何かが生えてきているような感覚。
「私と同じような種をあげたからね。私と同じ存在になれるよ」
そんな事を俺は望んでい無い。そう目で伝えようとするが、ぬえは面白い物を見るかのように俺を見詰めていた。助ける事はしてくれないだろう。
俺は、はいずりながらその場を離れようとするが、後ろからまた抱きしめられ動けなくなった。
「駄目だよ。もうすぐあんたがあんたじゃなくなるんだから。私がしっかり見ててあげないとね」
体の異変はより大きくなっている。もはや止める事は無理だろう。
「あんたが自分自身を分からなくなったら・・・。もう調べようと考える必要も無くなるからね」
着ている服を何かが突き破った気がした。外側からではなく、内側から。
俺の意識は笑っているぬえの声ゆを聞いた時に途絶えた。
彼はもう何も調べようとはしないだろう。自分自身が分からなくなってしまったから。だが、もしかしたら彼は自分の正体を突き止めるために調べようとするかもしれない。しかし、それさえも無駄な事なのだ。幻想郷に入ってしまった事ですでに彼は幻想郷では正体不明なのだから。
最終更新:2011年03月04日 01:42