俺達は外来人達で構成された部隊だ。俺はそこで隊長みたいな仕事をしている。まだ部隊名は決まってないが、近々決めようと思っている。
第一にこの部隊が出来たのは俺がある女から逃げ出した事から始まる。何の抵抗も出来ずにただ、搾りとられるような毎日にうんざりしたのと、「力が無い」という事を嫌でも認識させられていたからだ。だからこそ、俺は隠しておいたナイフで相手を切りつけて、ひるんだところで脱出した。
後は相手に見つから無いように色々な手段を使った。草を纏い、森林の中に潜んだり。岩の僅かな隙間に隠れたり。水の中にいた時もあった。だが、逃亡生活を繰り返しているうちにそれが無駄な事だと気付いた。
運命はいつ変わるか分からない。いくら逃げていても偶然ばったりと会ってしまうかもしれない。その時に俺はまた逃げ出せるような抵抗が出来るだろうか?そう思った俺は部隊を作る事にした。抵抗するための力をつけるために。
最初に基地を作るのは大変だった。なにしろ0からのスタート。村から資源を貰い、やっと出来たのも、掘っ建て小屋を少しマシにしたくらいの物だったが、俺一人なので十分な物だった。
次に隊員集めをした。一人きりなのは戦略的にも心理的にも辛いものがある。そこで、村のお知らせ板みたいなところに貼紙をして集めようと考えた。表向きには妖怪退治などを受け持つ所。裏向きには抵抗するたのめの戦力。最初の頃は集まる人もまちまちだったが、最近は集まりが良くなっている。やはり同じ男がやっているから安心感があるのだろうか。どちらにせよ集まってくれるのはこちらとしては歓迎だ。人は多い方がいい。
武器は知り合いの河童から提供してもらっている。どれも実弾ではなく、弾幕を発射するものだが。俺が絵に書いたり、口で説明したものを、河童は「盟友のために頑張るよ!」と言って心よく作ってくれる。最近の発明はアーマードスーツで、力や防御面をカバーするための物らしい。
今では人も増えたので、基地も大きくなった。紅魔館を少し小さくしたくらいのサイズだ。余裕が出来始めたので、そろそろ一人一人に、なぜこの部隊に入ろうと思ったか聞く事にする。入った理由がわからなけば、部隊全体を統制する事は難しいだろう。
俺は一人一人に聞いて知った。俺と同じように逃げ出してきたやつらがほとんどだという事を。そして、どいつも俺と同じように抵抗するための力を手に入れるためにここにいるという事を。
俺は驚いたが、同時に感動した。同じ苦しみを知る者が他にもいた事が嬉しかった。
共感できた俺達の動きはより連携がとれたものへと変わった。妖怪を取り囲んで一斉射撃したり、遠くにいる妖怪をスナイパーで覗いて、
「スタンバイ・・・スタンバイ・・・」
バンッ!
「ビューティホー・・・」
という遊びまでする仲になった。だが、そんな楽しい時間も長くは続いてくれなかった。
博霊の巫女から俺達に宴会に来ないかと誘いがあったのだ。仲間に聞いてみたが、どいつも「行きたくない」、「嫌だ」、「俺に死ねってか!」という返答ばかりだった。仕方がないので断りに行くために、博霊神社まで向かった。ちなみに俺を含めて隊員の奴らはみんな顔を覆い隠すような装備をしている。顔を隠しておけば相手からは分からなくなるし、なにより逃亡者としては、どうしても顔は隠しておきたいものなのだ。特に宴会といった誰が集まるか分からない場所に行く時には外さないように気をつけなければいけない。
博霊神社に着いた時には既に騒がしかった。どうやら今日もやっているらしい。取り合えず博霊の巫女を探すべく辺りを見渡す。
俺の視界に忘れたいものが写った。
特徴的な服。ショートカットの髪。スタイルのいい体。そして最初に目を引く尻尾。俺を縛り付けていた張本人、藍。あいつがまさか宴会に来てるとは思わなかった。
俺が藍から目を離せずにいるとあちらも気付いたらしく、膝の上にいた猫を降ろし、俺に近づいてくる。俺はまだ目を離せなかった。
藍「私に何か用か?」
目の前まで来た藍に俺はただ、
「いや、別に・・・」
としか答えれなかった。
藍は俺に興味を失わずにそのまま喋りかけてきた。
藍「お前は私が愛した男にどこか似てるな」
藍は俺を覗き込みながら言う。それは何かの当てつけだろうか?それとも確信を得て言ってるのだろうか?いずれにせよ俺の緊張は解かれない。
藍「こうしてやると恥ずかしがってな」
藍はいきなり俺を抱きしめて強く引き込んだ。それは俺に過去を思い出させるには十分すぎるもので、全身に危険信号が送られた。
俺は恐怖によって、慌てて藍の腕からもがいて抜け出した。抜け出した時に藍の顔を見ると納得したような顔をしていた。まるで「やっぱりな」と、思わせるような。
霊夢「あぁ、あんた来てたの・・」
博霊の巫女がなにか言っていたが、それどころじゃない。あいつに知られてしまったからには、早く手を打たなければ大変な事になる。俺は急いで基地へと走り始めていた。
俺が基地に駆け込むと何人かが驚いたらしく、何があったか聞いてきたが、それどころじゃない。早く態勢を整えなければ、基地の崩壊は止められない。隊員達にとにかく銃を持って防御態勢をとるように指示する。隊員達はいつもと違う事が分かるとすぐに準備に取り掛かった。
△△「相手はなんですか?」○○「狐だ!」
△△「狐?」
○○「あぁ、尻尾を何本も持ってるやつだ」
話し掛けてきた△△にそう言うと、そいつは一瞬硬直したが、すぐに銃を構え直した。構えている手が震えているところをみるとなにかあったのだろうか。だが、今はそんな事を気にしてる場合じゃない。いつ突撃してくるか分からないのだ。気が抜けない。
突然、正面の扉が吹き飛ばされた。藍かとも思ったが、あいつの弾幕の中に一発で固い扉を破壊できるものは無かったはず。もくもくと立ち込める煙の中で出て来たのは緑の髪で、日傘を差している女だった。女は少し見渡した後、何かを見つけたらしく、そちらに飛び掛かった。□□の方だと分かった時には遅く、既に連れ去られた後だった。
「ちっ!みんな気をつけろ」そう言った途端に、今度は窓を突き破って白狼天狗が飛び込んできた。一気に銃を構えて発砲するが、盾で塞がれてしまい、当たらない。そちらに気をとられているうちに上から侵入されたらしく、ドガンッと鈍い音がした。入って来たのは鬼女で、××が必死の抵抗をしていたが、かつがれて連れていかれた。
次々に仲間は連れていかれてしまい、残るは俺と△△だけだった。ありったけの装備をして身構える。
壊れた扉から入ってきたのは割と知っている顔だった。橙だ。藍の命令で俺を捕まえにきたのか?よく見るとのその目は俺ではなく、△△を捕らえていた。
橙「まったく、わたしになにも言わないで何処かに行っちゃうなんて。許さないよ!」
橙は△△を睨んでいるが、その目のどこかに嬉しさがあるように見える。獲物を見つけた時のようだ。
藍「やっぱりここだったか、○○。探したぞ」
本命が来てしまった。銃を構える。△△は・・・俺の後ろで震えている。
橙「藍様~」
藍「よく見つけたぞ、橙。いい子だ」
橙「えへへ~嬉しいです」
○○「なぁ、藍。なんで△△は橙を怖がってるんだ?」
藍「私がお前を愛していた時に橙も自分もなにか欲しいと言ったからな。ちょうど良く幻想郷に△△が来たから橙にやったんだ。想像以上に愛されたみたいだがな」
○○「止めようとは思わなかったのか?」
藍「愛を与えているのにそれを止める必要があるのか?」
主がこれじゃあ、下もそうなるわけか。俺は藍に銃を向けた。
藍「私にそんな物を向けるなんてなぁ。お仕置きが必要かな?○○」
藍に銃身を掴まれる。とんでもない力で引っ張られ、銃は取り上げられてしまった。
藍「前逃げた時みたいに私の隙をついて攻撃したらどうだ?」
俺は言われたとおりにナイフを取り出して藍に飛び掛かった。だが、藍に攻撃がとどく前に地面にたたき落とされた。
藍「やっぱりお前は無力だな、○○。あれもまぐれだったか・・・心配しなくていいぞ?力を使わなくても私がお前の力になってやる」
藍は○○を包み込んだ。強く、魂さえも逃がさないように。
最終更新:2013年01月28日 21:25