霊夢/6スレ/594
久し振りにカリオストロの城見て思いついた。
そのやる気がない巫女が正式に神社に住まい始めてから暫くした頃。
自分をこの神社の巫女に仕立てた隙間妖怪が、彼女を連れ込んだのは幻想郷の闇だった。
「ここは……?」
「貴方の住む神社の地下に広がる世界よ。この郷が始まってから、連綿と、深く広く形成されてきた世界」
朽ちた物置小屋の床を所定の手順で弄ると開く階段を潜った先にある世界。
そこは、常軌を逸した、およそ神聖たる神社の下にあるとは思えない人間の業と病みを貯蓄したものだった。
「……凄いわね。随分と深いんじゃない?」
「ええ、代が変わる毎に新しい階と部屋が作られるの。ほら、見えるでしょ」
妖怪が扇子で指差した先、其所には格子の向こう側で朽ちた2つの遺体。
布団で事切れたらしい遺体と、それに縋るようにして抱き付いているボロボロの巫女服を着た遺体。
「彼女の代は代替わりが大変だったわ。後追いしちゃったから」
幾つもの牢を除き、巫女は歴代の巫女達がどの様な結末を迎えたから見続けた。
様々な様子から末期が窺えたが、どれも共通しているのは必ず巫女は男性の遺体に寄り添っていた。
「なぜ、彼女達は意中の男をこの地下牢に閉じ込めたか、解る?」
「解らないわね」
興味なさげに呟く巫女を、扇子を口元で隠しながら妖怪は続ける。
「貴方の気質と同じく、博麗の巫女はそのお役目上全てに置いて平等で無くてはならない」
「無論、男を好むなんて以ての外。女は男を知ると変わってしまうからね」
「だけど、この地下牢の世界を利用した巫女達の様に、愛を知ってしまった者はどうすればいいかしら?」
続きを促すように沈黙を守る巫女を横目で見て、妖怪はスラリと扇子を広げる。
「全て、此処に隠し、封じるのよ。彼女達が『特別』を許されるのはこの薄暗い闇の中だけ」
「表では博麗の巫女として万事に平等にならなければならない。唯一の例外は断じて表に出てはいけないわ」
「それが博麗の巫女の在り方よ霊夢。貴方も好きな男が出来たら此処へ送りなさいね」
「……馬鹿らしいわ。そんな事、する必要もないわね」
醒めた口調で、巫女―――霊夢は肩を竦めた。
「こんな世界、私には理解出来ないし、するのも面倒臭いわ」
もはや居る意味もないとばかりに背を向けて階段を上がっていく霊夢。
その小さな背中を、隙間妖怪は見送る。表情は扇子で隠され、窺う事は出来なかった。
数年後。
「……○○、待っててね。もうすぐ完成するから」
「……大丈夫よ。ちょっと暗いけど私が居れば大丈夫よね?」
「私の事、好きって言ってくれたんだから。あの女やあの妖怪なんか、興味ないよね?」
「でも、あいつらしつこくて五月蝿くて○○を奪おうとするから……仕方がないのよ」
「ここなら、ここなら○○だって私だけを見てくれるし。ふふ、私も此処に住んじゃおうかなぁ」
「こんな薄暗くて湿っぽい場所だって、2人で居れば文字通り楽園よ」
「だって私、楽園の素敵な巫女だもの」
感想
最終更新:2019年02月09日 18:31