鈴仙の日記

□月○×日

私が長期の診療に行っている間に、師匠と○○さんが付き合うことになったらしい
まったく、あの人は何を言っているのだろう
○○さんは私の夫となるべき人なのに、そんなことも分からないのでしょうか
きっと人を疑うことを知らない○○さんは、師匠に一服盛られてしまったに違いありません
そうに決まってます
○○さんは、私のものなんですから


□月○▽日

○○さんに師匠が一日べったりくっついていた
まったく、邪魔でしょうがないです
隙があれば、すぐにでも私が○○さんの目を覚まさせてあげるのに
結局、一人になるタイミングを掴むことができないまま、一日が過ぎてしまった


□月×☆日

ついにやった
師匠が診察に忙殺され、○○さんは薬の材料を買いに村へ降りた
そして、帰ってきたところで私の魔眼を見せたのだ
てゐのイタズラで目にゴミでも入ったらしく、痛がっていたところを診てあげると言って目を開かせたのは、我ながらうまくいった
偶然とはいえてゐに助けられたわけだし、こんどニンジンでも奢ってあげよう
その後、医務室に行った○○さんの悲鳴が聞こえ、一日部屋から出てこなくなった
当然だ。今の○○さんには師匠も姫様もみんな怖い怪物に見えるようにしたんだから。もちろん、私以外ね
これで、やっと○○さんも誰を愛するべきなのか分かってくれるだろう
ああ、いいことをした日は気持ちがいい


□月□△日

○○さんは面会謝絶になった
師匠は彼に会えないと嘆いているけど、自業自得です
人の恋人に手を出してしまったのですから、もっともっと嘆いてください。これは報いなんです
……だから、○○さんに食事を運ぶ役目を私に譲ってください
それと、一日てゐを見ていないと思ったら、○○さんに害した罰として白玉楼に預けられたらしい
一言お礼を言いたいから、食べられずに帰ってきてくれるといいんだけど


□月●■日

食欲が無いみたい、と師匠がため息をついていた
当然のことですよね。魔眼で見えるようにした怪物と膝を突き合わせて食事する気なんておきるわけないでしょうに
けれど、まだ○○さんは師匠達の見た目が変わったと言ってはいないらしい
あの人は優しいから、かつての、以前の、昔の恋人を傷つけまいとしているのでしょうね
ああ、はやく○○さんをこの手に取り返したいです


□月▼◆日

やっぱり、○○さんは私のものでした
明日往診から帰る予定の師匠がこれを知ったらどんなに悔しがることでしょう
材料は師匠が使い尽くしたせいで好きなものは作れなかったのに、私がいたおかげで○○さんはご飯を久しぶりに完食してくれたんです
目にはいかにも自分で巻いたと分かる包帯がありました。きっと怪物になった皆を見たくなかったのでしょうね
でも大丈夫。この世界で、私だけは見てもいいんですよ
そんな風に思って包帯を一気に取り去ってしまうと、○○さんは私の顔を見ながら、笑顔で涙を流していました
本当の恋人の顔を見て感極まってしまったんでしょう

私は明日の朝に帰ってくることになっている師匠に、帰宅しだいすぐに告げようと思います
いいかげん○○さんとの恋人ごっこはやめて、彼を私に返すようにって
いくら表面上を取り繕ってみても、○○さんは皆を怪物にしか見えていないのですから、篭絡はたやすいでしょうね
ああ、早く明日にならないかなぁ

○○の日記

□月○×日

鈴仙が帰ってきた。ずいぶんと長い診療期間だったが、まぁまずは無事に帰ってくれて何よりだな
そのせいか、晩飯はいつもよりもニンジンが二割増しってところ。永琳と暮らすようになって唯一嫌な事がこれだ
飯の時間→ニンジンいらないよ→うわぁ……(山盛り) の悪夢再び
そんで地獄の食後に俺と永琳が交際することになった旨を伝えると、なんか額にものごっつい青筋を立てて祝福の言葉をくれた
まったく、女の子はデリケートだな。いきなり師匠を取られたのがそんなに気に入らなかったのか


□月○▽日

今日もいつもの永琳とのラブラブ日記を綴ろうかと思う……んだが、そんな気分にどうしてもなれない
だって、なんか一日中鈴仙の凝視からくる視線の針で背中がチクチクしっぱなしなのだ
おい、なんか気に入らないことがあるなら直接言え。なんてことは間違っても言えない
だって俺、骨無しチキンだもん! ただの人間が妖怪に歯向かうなんて身の程知らずもいいとこだもんね!
自分の力をわきまえてるからこその英断なのだ、はっはっは……書いてて泣きそうになってきた


□月×☆日

てゐのバカヤロウ。なにが手製のスタングレネードだ。いたずらってレベルじゃねーぞ!!
リグルからもらった光蟲と、石と粘着物質からできた玉で作ったらしいが、マジでその閃光で何にも見えねぇ
記憶と手探りで戻ったら、鈴仙に息がかかりそうな距離で診てもらったのは役得だったがな。診察だから! 疚しくないから!
怒ってたと思ってたが、機嫌直ったんだろうかね。まあよかったよかった
しかしまた手探りで医務室に行ったら、何にも見えないせいで足の小指を思いっきり強打して絶叫した。ちくしょう
しかも永琳に目を休ませなきゃいけないと言われて、自室に強制監禁コースになっちまった
てゐのやつ、目が治ったらおぼえてやがれ


□月□△日

永琳によると俺は面会謝絶らしい
私がいると、目の包帯を取って恋人を見たくなっちゃうでしょ? とのこと。うん、EXACTORY(そのとおりでございます)
まあたまには休暇と思ってのんびりするのも悪くない。うん、悪くない。悪くないんだけどさ………
強制ニンジンフルコース(しかも病人食)はやめろ。いや、やめてくださいお願いします
永琳のお手製なのはわかる。嬉しいし、食べたいとも思うよ。しかしニンジンだけってのは、ね?
悪いと思いながらも、どうしても半分以上残しちまう。なんでみんなこんなの食べるんだぁ?


□月●■日

また今日もほとんど残しちまった
腹は減ってるんだがこれだけは食えないって物はあるもんだ。俺はよりにもよってそれがニンジンなだけなんだ
飯のお盆を下げる永琳の寂しそうな顔を見ると俺も悲しい
しかしいまさらニンジンは俺の敵だなんて言えないだろ、常識的に考えて


□月▼◆日

朝起きたら包帯がすっかりほどけてた。まあ寝相の悪さには定評のある俺だが、まさか目に巻いてた包帯まで解けるとはな
自分で適当に巻いたから永琳に見られたら確実にバレるんだろうが、来たのは鈴仙だったから事なきを得た。と思う
彼女お手製の昼飯を食わせてもらったが、オムライスとスープという簡単なもの。けどそこに、あの悪魔の野菜は無かった
泣きたくなるほど美味かったね
その後包帯をほどいてもらったら三日ぶりの光が目に入って痛み、涙が出てきた
まあしかし見えるようになったのはありがたい。これから×☆日から今日までの日記をまとめ書きしちまうか

永琳が帰ってくるのは明日の朝らしいが、ちょっと朝は隠れて厨房に篭り、昼飯の支度をしておこう
みんなに任せると、俺の快気祝いはまたニンジンフルコースになっちまうからな

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最終更新:2011年03月04日 00:56