何か書きたくなったので投下
「○○~?」
「…おかしいな、人はいないはずだが」
「○~○~?」
「…なんだこいしか」
「ウフフフッ」
彼女は透明だ。いや、透明に見えるだけだ。
そこに意識を向ければ、帽子をかぶった白髪の少女が居る。かわいい。
彼女は俗に言う『妖怪』ってやつだ。人間の様な姿だが人間ではない。
彼女は俺よりも長生きだ。何歳かは知らん。てかどうでもいい。
彼女は嫌われ者だ。持ってた力のせいで昔は迫害を受けたそうだ。
彼女の持っていた力は『生き物の心を読む力』だそうだ。
ゆえに人々から嫌われ、煙たがられたそうだ。
そして彼女は心を閉ざしたそうだ。ゆえに少々感情が不安定だ。電波入りだ。天然だ。
でも、それが俺好みだ。
彼女は心を閉ざした為か、元々の力の代わりに
『人の意識範囲から外れ、そこに居ないように出来る』という力を手に入れた。
彼女は普段はSATUGAISATUGAI言ったり、グロテスクな何かを持ってきて差し入れにしたり
よく分らない事を言いながら部屋の中を走ったり、
そして、今の様に能力で見えないようになったりする。
何をやるかは俺にも分らない。なにせ彼女は無意識だから。
でも、それが俺好みだ。
「○○~」
「んー?」
「髪の毛とすね毛ってどっちが抜く時痛いの~?」
「…はい?」
「えい」ブチッ
「アッー!痛い痛い痛いやめろ!髪引っ張んな!ちぎれるちぎれる!!」
「えへへ~」
「…まったく」
彼女は何をするか分らない。
この前は勢い余って近くの人間を殺した。近所の同世代の女の子だった。
まぁ、彼女は能力で見えなかったからばれなかったが。葬式には一応出た。
一昨日は近くの林に火を放った。消防員が頑張ったから火は消えて良かったけど。
彼女いわく、俺を驚かせたかったそうだ。イヤ、やり過ぎだろ。
でもいい。どうでもいい。
…そして、
昨日は腕をもがれた。
茨のツルの様なもので右腕を引きちぎられた。
激しく痛い、だけどどうでもいい。
血は止まったし、そもそも俺は左利きだから生活に支障は無い。
一応病院で診てもらった。交通事故と言い張った。
大丈夫だ、問題ない。
ただ、いたずらが過ぎた為彼女を叱ったら、彼女は目に涙をいっぱい浮かべて謝った。
「驚かせたかっただけなの…うっ、うっ…」
だからいい。許す。かわいいもん
それに、一か月前は左足をちぎられたから余り変わらない。
もう車いすの生活にも慣れた。
彼女も敵意があってやってるわけじゃない。むしろ好意だ。
だからいい。
嫌われて心を閉ざした彼女の慰めになれるなら。
彼女の閉ざした心の支えになれるなら。
「○○」
「ん?」
「好きだよ」
「俺もだ」
…俺がこの覚妖怪と付き合い始めたのには訳がある。
彼女に対する贖罪だからだ。
実を言うと俺にも変な能力がある。
それは『前世の記憶を受け継ぐ力』だ
稗田一族にもそんな力を持ってる奴が居るらしい。良く分らんが。
時々、頭の片隅から前世の記憶を引っ張り出して物思いにふける。
ある日、暇だから変な記憶を呼び出した。
記憶の中で俺は、彼女『達』を迫害していた。
桃色の髪の少女と、白髪の少女だ。姉妹だろう。
俺は、仲間たちと共に聞くに堪えない罵声を彼女たちに浴びせていた。
「バケモノ」やら「死んでしまえ」やら「公害」やら、
前世の俺ひどいな。
そうしていた理由はその少女たちに、
『心を読む力』があるからだ。
人と違うから彼女たちを俺達は差別し、迫害していたのだ。
白髪の女の子泣いてたな…
…さすがきたない前世の俺きたない。
で、ある日
こいしと出会った。
そして俺はびっくりした。
記憶の中に出てきたその少女だったから。
しばらく付き合って俺と彼女は相思相愛になった。
でも、俺は心の中でずっと悔やんでいた。
彼女は、迫害されて心に傷を負い、そして、心を閉ざしたらしいから。
俺が、腕をもがれようが、脚をちぎられようが彼女と共に居るのは
彼女に対する贖罪だからだ。
「…そうなんだ○○」
「…どうした?」
「ちょっと心読んだ」
「…お前その力捨てたんじゃなかったのか?」
「閉ざしただけ。時々なら読める」
「…そうか」
「○○、私のこと嫌い?」
「前世の俺はそうだったかもな」
「今は?」
「好きだ」
「…贖罪なんかしなくていいよ」
「何でだ?」
「だって、○○は心から私の事が好きだって心で言ってた」
「…ああ」
「じゃあ、気にしなくていいよ。今は幸せだから。」
「そうだな」
「…私が無意識で貴方にヒドイ事しても、私から離れないの?」
「ああ。お前が好きだからな」
「…もう片方の足と腕を千切っても?」
「おう」
「…貴方を殺しても?」
「来世でまた会うからいい」
「…ありがとう…うっ…ひっく」
「はいはい」
最終更新:2010年12月05日 18:56