騙して悪いが幽香ネタだ


「ごめんなさい。僕とあなたでは、到底つり合いが取れません」

そう一言残して、僕は家路に着いた
年齢=彼女いない歴の僕からすれば、あんな美人に告白されるなんて一生に一度あるかないかだろう
でも、どう考えても無理だ
ここ幻想郷の中でも最強の一角に数えられるフラワーマスターの恋人なんて、僕には荷が克ちすぎる
それに……本音を言ってしまえば、怖い
やろうと思えば気まぐれに僕を粉みじんにすることが容易な恋人
しかも数ある妖怪の中で、それをやりかねない妖怪
そんな彼女と仲睦まじくやっていくなんて、僕には到底できそうも無い
ふと、肩越しに小さく振り返る
彼女は同じ場所で、とても悲しそうな顔で僕の背中を見ていた


それから三日後
彼女の姿は僕の村で見ることができた
世間の評判からでは考えられないような笑顔で村人にパンを配っている
彼女の農場で取れた小麦を使って作ったらしく、美味しいとここだけでなく近隣の村々でも評判だ
実はもらいに行ったことがあるけれど、僕には後でもっと特別なものを用意していると言われて、その時はもらえなかった

「もう暴れたり怒ったりしない。私は変わったの」

そして変わった自分を見て欲しいと言って、彼女が自ら始めたボランティアだった
そんな風に思ってくれていたなんて男冥利に尽きる
正直、以前交際を断ったことを後悔するほどの嬉しさだった
けれどやっぱり駄目だ
いくら気持ちは嬉しくても所詮僕はただの人間
友達にならなれるけれども、恋人となれば話は別だ
彼女にはもっと強くふさわしい男が現われるはずだ


それから二日後
僕の姿は彼女の屋敷で見ることができた
昨日の夜、目から生気の失せた村人数百人に取り囲まれ、ここに連れてこられたんだ
なんでもあのパンの中に魔法植物か宇宙植物かの種が仕込まれていたらしく、それを食べさせた人間を操ったのだという
種は脊椎から成長を始め神経系統にまで根を張れば、もうその人間は彼女の意のままになるらしい
しかし数百人操るのはさすがにエネルギーを相当使うようで、今彼女は太陽光とイオン溶水を浴びながらお昼寝中
だからといって逃げようとすれば、屋敷の外で待ち受けている彼女の奴隷と化した村人に見つかって連れ戻されるだけ
まさに八方塞だ
唯一の希望は、この異変を察知して巫女や魔法使いが駆けつけてきてくれないかなぁということくらいか
僕が無事でいられる間に早く来てほしいと、切に願う

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最終更新:2011年03月04日 01:21