いつもあの我が儘な天人の隣にいるお姉さん。聞けば竜宮の使いだそうだ。俺が知っている竜宮の使いは外に居る時にテレビで見た物だったので、その話を聞いた時には少し驚いた。

深海に住んでいて、体は長く。赤と銀の色で構成された深海魚。それが俺が知ってる竜宮の使いだ。あれ?あれはカタカナだったか?

だから最初に聞いた時はそれが擬人化したものかと思った。俺がその事をあの人に言って、あの人がその魚の事を知っていたら間違いなく俺は雷を落とされてドリルで串刺しにされてグルグルと回転させられるだろう。

だが、やはり思った事は誰かに伝えたいもの。俺は友達である魔理沙にそれを打ち明けることにした。

魔理沙は少しの間固まっていたが、直ぐに何かを思いだしたらしく、笑い始めた。どうやら前に紅魔館の図書館に忍び込んだ時にその魚が載っている本を見たそうだ。どんな本読んでんだよ・・・。

魔理沙と一通り盛り上がった後、別れを告げて家に帰る。やっぱり話て良かった。モヤモヤしていた物も取れたし、何よりすっきりした。友達はやっぱり持つものだな。

俺はどこか充実感に浸りながら家への帰路を歩いた。



人間には人生の中で最大級の危機がいつかあるらしい。今まさにそうだ。俺はただ相手がこちらに興味を失ってくれるのを待つしかない。

目の前・・・と言っても本当に目の前だ。顔と顔の間は数㎝しかない。肩をしっかりと掴まれているので出来る事といえば顔を逸らす事くらいだ。

「あの黒い魔法使いから聞きましたよ。私を何かとんでもない物と勘違いしていたそうですね・・・」

衣玖さんは光が無い目でこちらを見透かすように見ている。魔理沙はいったいどんな説明をしたんだ!深海に住む化け物とでも言ったのだろうか?あながち嘘でもないが・・・。だが、本人に言っていいかというと話は別だ。俺は必死の思いで弁解をしようとするが、衣玖さんはただ俺を見つめるだけだった。

「まったく・・・ひどい人ですね○○さん。仮にも竜宮の使いをあんな物と一緒にするなんて・・・。これはしっかりと一から竜宮の使いの意味を教えないといけませんね。それから私がどのくらい貴方の事を想っているかも」

やばい・・・。このままでは色々と再教育されてしまう。

俺は衣玖さんの腕をなんとか振りほどくようにして逃げ出そうとした。だが、俺の体に衣が巻き付いたかと思ったら、強いショックが体を襲い、その場に膝を着いてしまった。聞こえるのはさんの「さぁ、楽しい勉強の始まりですよ。○○さん」という声だけだった。



「○○さん。竜宮の使いとはなんですか?」
「竜神様から伝えられた危険などを人里に伝える役割の事です。断じて深海に住む魚ではありません」
「ふふ、ちゃんと分かってくれたみたいですね。嬉しいです。じゃあ次は私の愛し方について教えましょうか」
「も、もうい(i「さぁ、始めますよ」



○○は竜宮の使いについてはよく分かった。だが、衣玖さんの愛し方を覚えるまでは帰されはしないだろう。
最終更新:2011年03月04日 01:43