某所の泣き崩れるゆうかりん読んで思いついたネタ話
というかうみねこパロです。不愉快だと思う人がいれば今後は止めます



 その切っ掛けは、ただの妖精メイドの報告だった。
 神社で行われるという大宴会。…その参加の誘いがあったというだけのことだった。
 しかしそれは、彼女の主人を酷く不愉快にさせたようだった。
 レミリアの罵声を聞くと幼い容姿の妖精メイドはひどく震えあがり、すぐにペコペコと頭を下げた後、飛ぶように部屋を出て行った。


「駄目だ駄目だ駄目だ!! そのような些事に費やす時間など必要ない、そんな暇があったなら、……、あったならッ!!
 …私は会いたい。もう一度会いたい! ○○に今一度会いたい!!
 あぁ、○○、どうしてこれ程までに私を拒むの!?
 ○○、頼むわ後生よ、聞こえているんでしょう!! 私の前にもう一度現れて、そして笑って欲しい!
 望むなら、今こそ私の命をお前にくれてやってもいい! ああ、○○ぅ、○○ッッ!!」

 妖精メイドに向けたはずの怒鳴り声は、いつしか誰に向けたものでもない絶叫になり、慟哭になっていた。
 レミリアはいつしか床に伏し、両手で床を掻きむしりながら涙を零していた。

―――

 レミリア姿は自室にあった。
 気だるさが残る重い体を椅子より起こし、……カーテンの隙間から除く満月を眺める。
 その月の輝きは、いつの時代も変わっていないように思える。そう、■■■年前から見える光景とまったく同じだ。
 そしてレミリアはその両手を、天上の何者かに訴えるかのように広げた。

「……私はいつになったら、お前と再開できる? あぁ、○○…。…………死んでもいい! 
 貴方の姿を見ることができるのならこの命は惜しくない! あの日お前が望んだように、私の心臓をくれてやる!
 だから、…後生よ、貴方に、……もう一度会わせてちょうだい…。
 そして、その時にこそ、私の愛を伝えさせて、私の罪を謝らせて!! うぅぁあぁぁぁぁぁ……。

 ……だが逃がさんッ!! お前は私のものだ!

 髪の毛一本から爪先まで、爪の垢すらも私のものだッ!! お前の肉一片までも私のもので、その体を流れる血流の一滴すら私だけのものだッ!!
 逃がさんぞ、今度こそこの手から零さんッ!!
 今度こそお前は永遠に私のものになる! その血を、体をッ、魂をッッ!! 私の眷属にして全て手に入れてやるッ!!
 二度と逃がすものか、二度と逃がすものかッ」

 吠え猛るレミリアは、突然、震えだしながら、…自身の体を掻き抱きながら崩れ落ちる。
 ……それはいつの間にか、嗚咽になっていた。

「…………ぅうぅ、うっく…、違う、私が言いたいのはこんなことじゃないんだぁぁぁ、○○ぅうぅぅぅ……ひっく。
 頼む、もう一度会わせてくれ。一言、伝えるだけでいい……。ぅうううぅう、○○ぅ、……。
 …ひっく、…うっく…! うわああああぁああああああぁああぅああぅあぅあぁ…!!

 お前が愛しい、恋しい…! 私が間違っていた…!
 貴方と共に過ごせるだけで、それだけで他には何もいらなかったのに。私が、私が間違えた、私がそれを間違えて、……うぅぅぅううぅぅ……」

 その、震えながら泣く少女の小さな背中を見て、誰が彼女を恐ろしい吸血鬼だと連想するだろう。
 その背中に、一対の蝙蝠のような羽がなければ…。ただの、何かに赦しを請う、幼い子供にしか見えないはずだ。

 ……やがてその震えが収まり、すすり泣きが止む。
 レミリア・スカーレットは、その虚ろな、何も映していないかのような瞳で月を見上げ、…呟いた。

「……アナタを、……愛しているわ…。……○○…………」

 …………。

 ……。

 …。




「……何を怒鳴っているのかさっぱりだぜ。結局、アイツの言う○○ってのは何者なんだ?」

「軽々しく他人の心に踏み込むような真似はどうかと思うわよ、魔理沙。……どこで聞いたの?」

「別に聞くつもりはなかったが、……あんな大声で叫んでたら聞きたくなくても聞こえちまうぜ、パチュリー

 それもそうね、と溜息を一つ。動かない大図書館は読んでる本に顔を落としたまま、目線だけを白黒の魔法使いに向けて言った。

「ただの普通の人間よ。……もう何百年も前に死んでいる、ね」

「…はぁ?」

 その予想外の言葉に、霧雨魔理沙は思わずぽかんと口を開けてしまう。
 もっとこう、すごい経歴の大魔法使いとか、吸血鬼の王とかを想像していたのだが……。

「詳しくは知らないわ。私がこの紅魔館にやってきた時には、すでに死んでいたから…。
 いえ、そもそも当時のレミィは死んだ○○を生き返らせる方法を躍起になって探していたわ。私が館に招かれたのもそれが理由。……魔道の知識に縋ろうとしたみたいね。
 ただ――」

 そう言うとパチュリーは読んでいた本をパタリと閉じ、地下室の天井――レミリアの部屋がある辺りを見つめた。
 その瞳の中にある感情は読み取れない。彼女が、100年以上の時を共に過ごしてきた親友へ向ける想いは、いったいどのようなものなのであろうか。

「ただ一つ確実に言えるのは、レミィが○○を愛していたということだけよ。……狂気に駆り立てるほどにね」

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最終更新:2013年11月25日 21:53