「…」
「…」
「……」
「……」

俺が桃色の髪の女の家に拉致、監禁されて一週間。
その桃色の髪の少女 古明地さとりと俺は向き合っている。
ただし、俺の足には枷。手には手錠。

「………」
「………」
「…はぁー何だかなぁさとりさん」
「…あ、やっと喋ってくれました○○さん」
「…だんまりもアレだからな」
「じゃあ、次は弾幕がいいですか?」
「それはマジ勘弁」

仲のいいカップルの様に冗談を言い合うが、俺は監禁されている。
事実、俺の足には枷が、手には手錠がはめられている。
ただ、風呂に入れない、外に出れない、動きが制限されているという以外は
…それこそ宿に泊ってるのと変わらない。
…トイレは部屋にあるよ?垂れ流しじゃないよ?
飯は三食ちゃんと出る。
羽根の生えた緑のリボンの呑気な女の子が持って来る。

一週間前、嫌われた妖怪と鬼が集まってるらしい地下の旧地獄街道に遊びに来た。
気さくな鬼達や色モノの集う妖怪たちと話すのが楽しいからだ。
「かれこれここに来るのは八回目だな…」とか思ってた。
そしてすぐ後に、白髪の帽子の女の子と、猫耳の赤毛の女の子にいきなり拉致された。
具体的には…帽子の方が気配を消して背後から手錠をかけ、足枷をはめ、
んでもって猫耳の方がネコ車に状況が理解できてない俺を乗せて超高速で連れ去った。
そして、帽子の方の姉、猫耳の方の飼い主が住む 
…えーっと、『地何とか殿』…だっけ、とかいう建物に連れて来られた。

で一週間たった。
行動の制限、風呂に入れない、手足の自由が利かない以外は快適だ。

「…なるほどなるほど、中々好印象ですね。あと、『地霊殿』ですよ」
「…心読んだのか」
「はい。それが私の能力ですから」
「…まぁ、別にいいけど。…それより俺を拉致った理由教えてくれないか?」
「……………分りました○○さん」


○○さん、私は貴方に一目惚れしました。
貴方が街で、ふらふらと何も考えず歩く姿に妹の面影を見ました。
貴方が街で、気さくに妖怪たちと話す姿に飼い猫のお燐の姿が重なりました。
貴方が街で、楽しそうにご飯を食べる姿にペット鴉のお空の姿がフラッシュバックしました。
見た目も、性格も、感じも、全て私の琴線にストライクしてしまいました。
分け隔てなくどんな妖怪にも話しかけられる貴方に、私の心がグレイズしてしまいました。
内気で陰気な私が、あまり男の人に興味の無かった私が、嫌われ者の私が、
貴方を好きになってしまいました。
それで、どうにかして連れて帰りたくなりました。
お持ち帰りしたくなりました。
お泊りして欲しくなりました。
…でも、私は嫌われ者です。貴方に振り向いてもらえなさそうな気がしました。
そこでペットの二人と妹のこいしと一緒に策を練ってこの結果になりました。
反省はしてません。
だって貴方が欲しかったから…

「(°д°)…」
「…と、いう訳です。」
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤおかしいおかしい」
「え?何でですか?」
「もちっとやり方があるだろJk…」
「『恋は盲目』って妹が教えてくれました。ちょっとズレててもいいじゃないですか」
「…分った。でも」
「でも?」


「…君を見て分ったんだが、可愛いな」
「…えっ?も、もう一回いいですか?」
「いや、可愛い」
「わ、わ、私が…?」
「ああ可愛い」
「い、一度も可愛いって言われた事無かった…」
「くどいな…可愛いよ」
「(…///)」

彼女は俺に聞く

「…わ、私の、の、能力は怖くないのですか?」
「うん、君に対してやましい事考えた事無いし。…そもそもそんな能力で君を嫌ったりしないからさぁ」
「…監禁について、お、怒らないのですか?」
「もうでどうでも良くなってきた」
「わ、私のこ、事好きですか…?」
「…拉致監禁犯にしては丁寧でおとなしいし、飯を出してくれる上に、…そもそも俺の事が好きならそれでいいぜ? まぁ、拘束具はもう勘弁だが」
「じ、じゃあ…?」
「ああ、好きになってもいいぜ」
「き、嫌われ者ですよ私。ひ、人のこ、心覗くの好きですし」
「だからくどいって」
「………うれしい」

彼女が泣きだした。

「お、おい、泣くなよ」
「…貴方にひどい事したのに…可愛いって、それに私の能力の事気にしないって…好きになってくれるって」
「だからもうどうでもいいから…。それより枷とか外してくれ…あと風呂貸して…」
「…分りました。でも、じゃあ少しこうさせてください。」


ぎゅ


「!?」
彼女が抱きついてきた
俺よりも少し背の低い彼女の体は温かかった。柔らかい感触も感じた。
それにいい香りだった。

「ちょ、おま」
「しばらくこう居させてください…」
「……じゃあ今度から閉じ込めるとか拘束するとか強引な事やめろよ?」
「…ハイ」





んで、俺に変な彼女が出来た。
普段は陰気で多少S気有り、でも根は優しく素直な子だ。
そして俺はいま地何とか殿で一緒に暮らしている。

「…だから『地霊殿』ですよ○○さん」
「わーったよ」


「お姉ちゃん嬉しそうだね」
「アタイの運搬テクが役だったのさ!」

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最終更新:2011年03月04日 01:54