「あー、暇っすね」
「そーだな」
「そーなのかー?」
ここは、人里の自警団本部。
腕に自信のある若者や術者が集い、慧音の指揮の下人里内での治安を守っている。
最近は外来人に被害が集中している所為か、彼らを除けば里は概ね平和続きである。
「ちょっと待ちなさい□□! さっき話してた女は誰なの!?」
「頼むから落ち着いてくれアリス、何時も行っている茶屋の娘さんじゃないかー!!」
2人の目の前を、外来人の若者とそれを追い掛けるアリスが通過する。
「全く、里に買い出しするたびにあれだな」
「ま、弾幕までいかないから可愛いもんじゃないすか」
「そーなのかー?」
2人の自警団員の緊張は欠片もない。のんびり茶菓子をかじりながら出涸らしを啜っている。
「待ちなさいこの泥棒猫! ▲▲はあたしのもんだしまだ死んでないでしょーがぁぁ!!」
「べーだっ、悔しかったら追い着いてみなさいよこの猫又、おにーさんはわたしのだー!!」
「だ、誰でも良いから俺に平穏をプリーズゥゥゥゥゥ!!!」
猛然と砂埃を立てて本部前を通過する猫車と、それを追い掛ける猫又。
迷惑そうにお茶を入れ直す2人だが、猫車に見覚えがある青年が乗っていた事に気付いてた。
「あれ、▲▲か?」
「ああ、外来長屋きっての猫好きだったな。あんだけ注意したのに……無茶しやがって」
「そーなのかー?」
やれやれを首を横に振りつつ、熱いお茶を慎重に啜る2人。やっぱり緊張感は欠片もない。
「私と◇◇は、来年の秋口まで同棲するの、姉さん邪魔しないでよ!」
「何言っているのかしらこの芋娘、◇◇は来年の紅葉の時期まで私の別荘でひっそりと過ごすのよ!」
「……タ、タスケテ」
もう2人は肩を竦めて茶を啜るばかり。
病んだ目付きの女に挟まれた◇◇が哀願の視線を送っても見向きもしない。
「はぁ、平穏って尊いよな」
「ああ、平穏は素晴らしいな」
「そーなのかー?」
しかし、不意に里の安穏とした空気は打ち壊された。
「変態だ、変態が出たぞー!!」
「「な、なにっ!?」」
顔色を変えた2人が立ち上がり、走ってきた男を捕まえる。
「どこだ、どこに現れた!」
「しょ、商店街端の洋式喫茶店で、外来人のあんちゃん相手に暴れてる!」
2人は顔を見合わせた。既に鎮圧用の手にし、表情は真剣そのもの。
「病んだ女は捕まえてもしょうがねぇ」
「ああ、全くきりがないからな」
「だが、変態は許さねぇ!」
「ああ、そうだ!里の秩序を揺るがす奴は許さん!!」
捻りハチマキをきりりと絞め、2人は颯爽と本部を飛び出した。
「「里の平和は、俺達が守る!!」」
「そーなのかー?」
そして十数分後。
「わ、私は変態じゃない、変態という名の淑女だ、○○、そうだよな。私の無実を証明してくれー!」
「藍さん、面会には行くから……頭を冷やして更生しよう」
スッパな美女がしょっ引かれて留置場へと放り込まれたという。
ここは幻想郷。
ヤンデレは許しても、変態は許さないよ。
同時刻、某所
「藍が捕まってカツ丼を食わされたそうよ」
「ククク、藍は我等四淑女の中でも最弱の変態性……」
「相手に逃げられた揚げ句里の自警団如きに捕まるとは淑女の面汚しよ……」
しかし、まだ変態はいた。
最終更新:2011年03月04日 02:00