子ども扱いしないで
一日に一度、必ず言ってる言葉
わたしは頭があんまり良くないし、愛や恋って言うものがどんなものなのかもわかんない
それでも、大好きな人がわたしの言葉を真剣に受け止めてくれてないってことくらいは分かる

「○○、大好きだよっ」

「あはは。俺もお空のことは大好きだぞ。ほれ、アメ食うか?」

「むうう~。子ども扱いしないでよぉ」

「だって、お空は子供だろ」

「子供じゃないもん! ○○よりもずっと年上だし、体だって成長してるもん! 恋人にだってなれるし、よ、夜のことだって……」

「あと四、五年たったら考えてみる」

毎日こんな調子
地上と地霊殿の間で御用聞きをしてる○○がわたしといっしょにいてくれる時間は、一日長くて一時間がいいところ
その一時間、いつもわたしは○○をふりむかせるためにがんばってる
手をつないだり、抱きついたり……ちょっと恥ずかしかったけど、キスしたりしたこともあった
けど、○○は相変わらずわたしのことを子供としてしか見てくれない
もう、いったいどうしたらいいんだろう?

「○○、わたしのこと嫌い?」

「んなこたぁない。なんでんなこと聞くんだ?」

「だって、○○は離れてる時わたしのことを考えてくれてる? わたしは、一日の半分は○○のことを想ってるよ」

「いや、俺もいろいろと考えててなぁ。ここに持ってくる商品の仕入れはどうしようとか、明日のご飯のこととか」

「……わたしはご飯以下なの?」

「同レベルかな」

「………」

「ああ、泣くな泣くな。ご飯ってのは、人間が生きるうえで必要不可欠なものなんだぞ」

そういう問題じゃないよ、○○
わたしは○○のことが大好きなんだよ
それはご飯が好きって「好き」とは違うんだよ
○○のバカ。どうして分かってくれないの?

「もしも、もしもだよ? ○○がいっつも私のことを考えてくれるようになったら、わたしたちは恋人になれるの?」

特に深い考えでもなく、そんな言葉が口をついて出た
おバカなわたしからすればいい考えだったけど、どうせ笑われておしまいになるに決まってる
―――そんな風に思ってた

「そうだな。もしも俺が四六時中お空のことを考えるようになったら、そのまま結婚を申し込んじまうかもな」

だからその言葉は、天啓のように聞こえた

「えっ、それって……本当に?」

「ああ。お空を想うようになって、俺の住んでる村の皆公認の関係になったら結婚してもいいかな」

「そっかぁ……そうなんだぁ………」

その時、わたしは笑ってたと思う
なんにも見えない暗い道で、ようやく一筋の光を見つけたんだもん。当然だよね

「おいおい、何考えてるか知らんがこりゃまだまだ先の話だぞ。なんせお空はまだ子供なんだから」

「……でも、体は子供じゃないよね?」

「まあな。背はちっこいけど、その巨乳はすごいそそると言うか……いや、これは子供にする話じゃないな」

「また子ども扱いして~~。見たいなら見せてあげてもいいのに……」

「あと三年したらこっちから頼んで見せてもらうよ」


その日の夜、わたしは住み慣れた場所を後にした
本当は逃げるみたいに出るなんて嫌だったけど、、さとり様に心を読まれちゃ駄目だから
わたしが何をしようとしてるのかバレたら、きっと止められちゃうから
ごめんなさい。でもすぐに帰るから
その時は恋人も一緒に帰るからね

次の日まで外で過ごして、日が高くなった頃に○○の村に行く
一度だけ連れてきてもらったことがあるから、どこが○○の家なのかは覚えてるよ
わたしはバカだけど、本当に大切なことは忘れないもの
○○のことは、何だっておぼえてるんだよ
そのまま誰にも見られないようにこっそり家に入って、押入れの中に体を滑り込ませた
これでよし。あとは夜になって○○が帰ってくるのを待つだけだ
……
………
…………くぅ~~


「ただいまぁ~~ 誰もいない我が家よぉ~~」

はっ、わたし寝ちゃってた?
でも○○の声で起きられてよかったよ
もしもいびきでもかいてバレちゃったら、計画が台無しだもんね

「飯は……朝の冷や飯でチャーハンでも作るか。うぉぉぉぉっ! スーパーネギたっぷりみじん切りぃぃぃいっ!!」

うわぁ、いいにおい……
そういえばわたし、昨日からなんにも食べてなかったなぁ……
お腹すいたよぉ……

「そういや、今日は珍しくお空いなかったな。昨日の夜からって、どこほっつき歩いてんだか……
 明日も帰ってなかったら、俺も探してやろうかね」

あっ、○○がわたしのことを心配してくれてる!
会わなかったから想ってくれるなんてちょっと複雑だけど、やっぱり嬉しいなぁ……
でも○○、これからはずーっと私のことを想ってくれるようになるから、楽しみにしててね

「ふあぁ、ねみい……。湯屋は明日にして愛しき万年床よ、今日も俺を受け止めてくれぇ~~~…………ぐぅ」

……すっごい寝つき
布団に飛び込んで8秒でいびきかいてるよ。まあわたしにとっては好都合だけどね
これだけの高いびきならめったなことじゃ起きないと判断して押入れから出る
だらしない格好だけど、可愛い寝顔だなぁ……
このまま朝まで見ていたいけれど、やることはやらなくちゃ
………すっごく恥ずかしいけど、決心を固めて、わたしはシャツのボタンを一つづつ外していった



「○○、○○っ」

「ファー うるせえな、だまれ」

「もう~~。えいっ!」

「いてえ! テメエ何しやがんだ! ……って、お空?」

「うん。おはよう、○○っ」

「……何でここにいんだ。何で俺の布団に入ってんだ。そして服はどうした」

「これからおせわになります。一緒に寝たかったから。畳んで枕元。だよ」

「すげえ的確な答えだがそういうこと聞きたいんじゃない」

普通の調子を保ってるけど、それが演技だってコトはいっつも○○を見てるわたしには一目瞭然だよ
息が荒いし、体温は一度くらい上がってるし、なにより布団の中で少しずつわたしから離れようとしてるし
もちろん、逃がさないんだけどね

「ほら○○、こっちに来てわたしを暖めてよ。そんなに離れちゃ寒いよ」

「服を着ろ」

「嫌。○○こそそんな風に逃げるってことは、わたしに欲情してるんでしょ?」

「ヒューッ、言うようになったなこのおバカが」

「うん。わたしはおバカだよ。……でも、どうやったら○○の恋人になれるかは知ってるよ」

「なに?」

「いっつも○○が私のことを想ってくれるようになったら結婚するって、言ってくれたよね?
 だから私は、○○の絶対に忘れられない女の子になればいいんだって分かったんだ」

「……何する気だ」

「わかんないの? ○○のバカ。わたしがどうしてこんな格好でここにいるんだと思う?」

「………」

布団から飛び出そうとしてるのを察して、すぐに腕を掴む
甘い甘いよ、○○
妖怪の力からは逃げられないし、絶対に離す気なんて無いんだから
ああ、できれば最初の子は女の子がいいなあ
それじゃ、いただきまーす!


紅魔館

パチュリー「そこまでよ!!」

咲夜「えっ?」

レミリア「援護するわ。キング・クリムゾン! 我以外の全ての時は消し飛ぶっ!!」

咲夜「ええっ、時は私の専売特許なのに?」

小悪魔「気にしないでください。きっと世界のどこかで、skmdyな事態があったんですよ」

咲夜「?」



「……お空、降りてくれ。もう明日は立つことすらままなりそうも無い」

人間って弱いなぁ
あれから3時間でもうへばっちゃった
私はまだまだ満足してないんだけど、続きはいつだってできるし……いいや、仕上げをしちゃおっと

「じゃあ○○、目をつぶってて」

「何だ? キスならもうさんざんしただろ」

「違う違う。最後に大切なことをするんだよ」

「……や~な予感すんだが」

「じゃあ……もっかい、する?」

「目を閉じたぞ。もう完璧に、完膚なきまでに閉じたぞ」

なんか引っかかるけど……まあいいや
○○を見下ろしながら、宙に掲げた右腕に力を込めて、一点に集中させた弾を空におもいっきり放つ
屋根を貫いた爆発性の弾は、高度数十メートルで破裂し、真昼のような光とすっごい爆音を村に投げかけた

「おい! なにやってんだ!?」

「大丈夫だよ。村にはなんにも被害なんて無いんだから」

あー。わたしのこと信じてくれてない
目でわかるよ。目を細めてるときは○○が何かを疑ってるときの癖だもん

「さて問題です。○○が家で寝てたら、となりの家からすっごい光と爆音がしました。○○はどうする?」

「何を差し置いてもやじ馬根性丸出しで見に行く」

「つまりはそういうことだよ。……こんな状態のわたしたちを、ね」

「……降りろ。いや降りてください。マジでお願いします」

「だーめ。村の皆にも、村の外から見に来る新聞記者にも、みーんなにわたしたちを見せるの」

「………いや、ほんと、ちょっと、マジで、どういうこと」

「新聞に書かれて号外にでもなれば、わたしたちのことはあっというまに幻想郷に広まる
 そうなればいくら○○でも、いつだってわたしのことを気にして、想ってくれるよね? 恋人になれるよね?」

「……バカだバカだと思ってたが、これほどだとは思わなかったぜ

……家の外から、屋根に開いた穴から、集まった野次馬たちの声が聞こえてくる
中に踏み込まれるのは、もう時間の問題だよね
そのときの○○の表情は、疲れと諦めと、そして少しの笑いが混じったような、とっても複雑な表情だった

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最終更新:2011年01月05日 11:47