「さあ○○、ゲームを始めましょう?」


目が覚めると薄暗い洋間で、
目の前には青い髪の少女が座っていた。
「・・・誰?」
「誰だって良いじゃない?あなたの運命の相手よ」
「・・・あれか、天使とかか?」
「ふふ・・・その真逆ね」
悪魔かー、いやいや。
じゃなくて一体何故こんな状況に・・・ん、
足枷が嵌められているな、
というか見回してもこの部屋窓も扉も無いじゃないか。
どんなマジックだよ。

「さあ、ルールを説明するわね、
あなたはこれまで自らの宿命に気付く事なく生きてきた。
やるべき事があるのに、収まるべき鞘があるのに、それを無視し続けた」
宿命?運命?
こんな世界に紛れ込んだだけでも相当な不運だってのに。
「運命を拒むのなら、それに打ち勝ちなさい?その為のゲームをするの。
ルールは簡単、あなたはこの扉の無い部屋から逃げ出せば良いの」
「扉も無いのにどうやって?」
「そこは自分で考えて頂戴、10分毎にペナルティ、あなたの血をちょっとずつ抜くわね」
時間が掛かると貧血になるとでも言いたいのか?
こんな少女が、大の大人を押さえ込んで注射機を正確に扱えるとでも?
そういう意味では恐怖か。

「じゃ、ゲームを始めるわね・・・」
少女が言い終わるや否や、俺はそれに飛び掛かった。
「・・・嬉しいわ、あなたがこんなに近くに来てくれて」
ああ、
そういえば運命の相手だか言ってたな。
「どうやって出るのか吐いて貰おうか?」
「愛しいあなたの質問に答えない訳にはいかないわね、
何もしなければ良いのよ?」
何もしない、だと?
「みすみす貧血になって倒れていれば、
俺を拉致した様に別のどこかに監禁でもするのかね」
「あなたが運命を受け入れるならね」
「じゃあ受け入れよう、二人でどこか遠くへ逃げようじゃないか」
少女はクスりと笑い。
「約束よ、私は自力じゃここから出られないけどね」
「・・・クソっ!」
少女を突き飛ばす。
拉致監禁を実行したのは第三者なのか?
なら、人道に反するが・・・
この少女を痛め付ければ実行犯が出入口から中に入って来る可能性もある。
いや・・・
流石にそれはしたくない・・・
「ふふ・・・これもあなたの愛の形なのかしら?
それと・・・そろそろ10分よ?」
声に振り向いた瞬間には、
巨大な蝙蝠の翼が体を包み、
少女に凄まじい力で押し倒される。
何だ・・・吸血鬼!?
「ふふ、いただきます・・・」
首筋に牙を立てられ、血を吸われてる・・・のか?
全身の力が抜け、夢見心地の様な感覚に包まれる。


「・・・あ?」
終わったのか?
少女は既に俺から離れ、
元の場所に座っていた。
「気持ち良かった?」
「・・・まさか」
しかし何だ、寝起きみたいに頭が・・・
「それはそうと、後1分で二度目の吸血よ?」
9分近く呆けてたのか!?
いや・・・時計はちゃんと動いてるし、
とりあえず壁を壊すしか無いのか?
何か叩く物・・・
「うわっ!」
後ろから翼が逃げないように体を包みこむ。
再び首筋に牙が立てられ、
全身が虚脱していく。
「んふ・・・♪」
「ぅ・・・」
とにかく意識をはっきり持つ。
力が抜け切る前に何とか壁を壊さないと・・・

しかし、彼女が吸血を終えた瞬間、
腰の力が一気に抜け、ガクンと崩れ落ちた。
「え・・・」
下半身に力が入らない、
もう立ち上がれ無い・・・
「嘘だろ・・・」
這って壁まで・・・駄目だ、
椅子とか、重い物はもう持てない、
壁際に落ちていた銀のナイフで、壁を削る。
壁を突き抜けるには相当時間が掛かるか?
何としても逃げなければ・・・
壁をナイフで削る、削る、
壁紙に浅い切れ目が入り、
また浅く削られていく。
突き抜けるのはまだか、
ただ壁の材質からして壊すのは不可能じゃない。
とにかく
「10分経ったわ」

振り返ると、少女はにこやかに微笑み、
ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「その様子だと次の吸血に耐えられそうにないわね?」
さっきまでの少女が、
自分よりも歳を喰った女に見える。
焦って俺は、
体重を掛けながら、
気を失わない様に自分の舌を噛みながら、
壁を削る、
削る、
削る、
削る、
撫でる。
首に牙、
手が上がらない、
顎が絞まらない、
傷口が舐められる。
ナイフで指が切れてた。
甘い感覚しかわからない。
ずっと浸って











勝者が敗者の亡骸を始末するかのように、
目を覚ますと俺は、さっきより一回り広い、
扉の無い部屋に閉じ込められていた。
勿論、彼女と一緒に。
朝日が昇る事なく夕日が沈み、
終わらない夜の中、ゲームは続く。

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最終更新:2011年01月15日 20:04