初っ端からぶっ飛んでるのもいいが今まで愛し合ってきたのにすれ違いから病んでしまう嫁にぐっとくる。病み始めが好きだ。
付き合ってたり結婚後の別れ話や痴話喧嘩なんかですごく取り乱す嫁の様なんか病みの原因として最高。というわけで
(いない。どうしていないの)
その夜私の誕生日パーティが開かれた。紅魔館のホールでは幻想郷の重鎮達が思い思いに宴を楽しんでいる。
しかし会場のどこにも私の最愛の夫○○の姿が無い。
(約束したのに。今日はずっと一緒にいるって)
私が最も生誕を祝って貰いたい男の姿が無い。それだけで煌びやかな宴の光景全てが下らないものに見える。
カリ。知らない間に私は爪を噛んでいた。
「お嬢様」
咲夜の心配そうな声で我に返った。慌てて親指を口元から離す。そうだ。私はもう子供じゃないんだ。不安な顔をしてはいけない。
私は紅魔館の主なのだ。必要以上に豪奢なパーティには紅魔館の力を外部に示す意味合いもある。
「大丈夫よ咲夜。少し疲れただけ。さてと挨拶回りに行ってくるわ」
まだ何か言いたげな咲夜をその場に残して私は主賓席を立った。
私がしっかりしなければ紅魔館の皆を守れない。きっと今に○○も来てくれる。
隙間妖怪の祝辞を聞きながら私は自分にそう言い聞かせていた。
ああ、こんな胡散臭くて長ったらしい祝辞をどれだけ聞くよりも○○がたった一言。おめでとう、と。
そう言ってくれるだけで、私は――。
結局その晩パーティーが終わっても○○は現れなかった。
翌日。
「旦那様は昨晩妹様の地下室にいらしたそうです」
咲夜がそう教えてくれた。
「昨晩、突然に
フランドール様の精神が不安定になりました。いつ暴れ出してもおかしくない状態でしたわ」
フランは突然、発作のように暴れ出す。最近は幾分か良くなったがそれでもパーティーに参加させられるような状態では無かった。
だから昨日も部屋で大人しくしているようにと言ってあったのだ。
「旦那様は一晩中妹様を宥めていたそうです。妹様も旦那様には懐いていらっしゃいますから。もしも妹様が暴れ出していればパーティどころではなかったでしょう」
その通りだ。パーティーが滅茶苦茶になれば私の面目は潰れ紅魔館の威信も失墜する。
あの人は私の知らないところで私を守ってくれていたのだ。
「そ、そう……。さすがは私の夫ね。咲夜○○と話がしたいわ。呼んで来てちょうだい。二人きりにしてね」
一礼して咲夜は私の部屋を出て行った。すぐに○○を呼んで来てくれるだろう。
私のために。一晩中、あのフランドールの相手をしてくれていた。私は最愛の夫にお礼を言うべきなのだ。
けれど事情を知って私の心に最初に浮かんだのは――。
「そう。フランと二人きりでいたの」
軽いノックの後、○○が入室した。疲れ果てているのが一目で分かった。
不安定なフランの相手を一晩中していたのだ。これでもまだ幸運だろう。
(お礼……言わなきゃ。フランの側にいてあげてくれて、私のパーティを守ってくれてありがとうって)
「あら?今更何しに来たのかしら。あなたの大事な人のパーティーならとっくに終わったわよ」
(あ、あれ?)
「そんな言葉が聞きたいんじゃないわ!私が一体どんな気持ちで――!」
(こんな事が言いたいんじゃないのに……。ど、どうしよう止まんない)
「へぇ。フランを二人きりの地下室で宥めていたの?どんな宥め方をしていたのかしら?」
(あああああ――。違う。違うのよ。○○、そんな目で見ないで)
「自分の妻の誕生日に人目の無い地下室で義妹と二人きり?随分楽しかったでしょうね」
(そ、そうだ、謝ろう!ひどい事言って、素直じゃなくてごめんなさいって言おう!そうして今すぐ仲直りしよう!)
「まさかあなた――」
(○○、○○、大好きな○○)
「フランドール目当てで私に近づいたのかしら?」
(―――――――)
そこまでだった。最後の最後。私は決して言ってはいけない決定的な一言を言ってしまった。
それを聞いた瞬間○○はすごく驚いた顔をして、とても悲しそうな顔になった。そして最後にその顔から一切の表情を消した。
そして無表情のまま私に背を向ける。振り返る事もしないままそのまま扉を開き私の部屋から出ていく。
「あ……、ま、まって、今のは、ちが……○、○……あ、なた……」
蚊の鳴くような私の呼びかけに扉が閉じられる音だけが冷たく答えた
最終更新:2011年02月11日 16:42