〇〇「おはようございます旦那。今日も仕事ありますか?」
幻想郷の朝、人里にある雑貨屋から青年の元気な声が聞こえる。
彼は〇〇と言う名前の外来人だ。
少し前に幻想郷に迷い込んだ所を魔法の森にある外来の品を扱っている香霖堂の店主に保護され説明を受け、人里に案内された時に幻想郷が持つ独特な風土や雰囲気に魅了されしばらくの間だけ留まることにしたらしい。

店主「お、〇〇!今日は『いつもの所』の御用聞きをお願い出来るか?」
〇〇「構いませんよ~。」店主「毎度、毎度悪いなぁ〇〇。危ない橋を渡らして。」
〇〇「いえいえ、大丈夫ですよ。皆さん優しい方々ですし道中はコレで安心ですから。」
そう言って出したのは、破魔札や携帯用のマジックアイテムに通行手形だった。
何処でも住むには食い扶持を稼がないといけないが、幸いにも〇〇自身の手先の器用さと明るい性格に人手は幾らあっても困らない人里には日雇いだが仕事が幾つかあり、それらの仕事を日々ローテーションに勤め生計を立てていた。
今日のこの仕事もその中の一つだ。人里の雑貨屋は人妖問わず利用するが御用聞きや配達は誰もが難色を示していた。
だが、〇〇は幸いにも香霖堂の店主に人里に住むにあたり強力だが手軽な携帯用のマジックアイテムを餞別に渡されていたから初めはおっかなびっくりだった仕事内容も今では客である二つの神社や幻想郷屈指の妖怪達からも信頼を得て、道中の安全のために破魔札や通行手形を渡されていたから安心・安全だから進んで了解が出来るのである。

店主「いやいや、それでも有り難い限りだ。何せお前さんのお陰で売上がいいからな。」
〇〇「そう言われると何か照れますね。」
店主「でもよ〇〇、こう言っちゃあ何だが器用貧乏な生活止めた方がいいぞ?どこかにしっかり勤めたらどうだ?」
〇〇「いや、でも向こう【外界】でも似た生活していたものでこれがしっくり来るんですよ。」
店主「そうかい?お前さんがいいなら無理強いはしないが。」
〇〇「ははっ、じゃあ行ってきます。」
店主「おう!頼んだぞ!!」

それから〇〇は二つの神社にマヨヒガ、永遠亭、白玉楼、紅魔館と幻想郷を駆け回り行く先々で世間話しながら全ての御用聞きをした後、夕方には里へ戻り店主に注文書を渡し注文された品の配達準備を済ませ家路についた。
少し気になったのは、全ての御用聞きの注文にいつも品は無く、普段…いや女性が使わない寧ろ男性が使うであろう日用品を注文を受けたのが気掛かりだが、「偶然だろう。」と深い詮索は失礼だと思い考えを止めた。


翌日ー、
〇〇は雑貨屋の前で台車に配達荷物を乗せさっそく注文先へと向かった。
一番始めの配達先は…。


【永遠亭の場合】
輝夜「あら、〇〇早いのね。そんなに一緒に暮らすのを待ち兼ねていたの?私達もよ…。」

永琳「ふふっ、何を驚いているの?それは貴方のために頼んだのよ?」

てゐ「全く何て間抜け面…でも、そこがかわいいウサ。」

鈴仙「大丈夫ですよ〇〇さん、ちゃんとお部屋も用意していますし家具は私達が持って来ますから。」


【守矢神社の場合】
早苗「おはようございます〇〇さん。そして今日ほど嬉しい日はありません。」
神奈子「おや、もう来たのかい〇〇?さぁこっちに来て一緒に飲もう。」

諏訪子「あーうー。大丈夫だよ〇〇、ね?」


【白玉楼の場合】
妖夢「いらっしゃっいませ…いえ、これからは『お帰りなさい』が正しいですね〇〇さん。え?意味がわからない?」

幽々子「配達があるからもう行く?そう…でも、貴方は直ぐに戻って来るわ。この蝶がどんな蝶か、わかるかしら?」


【紅魔館の場合】
美鈴「〇〇さん、今日からの私は門番としての使命感を今まで以上に強く思います。」

パチュリー「貴方という知識は毎日見たい、知りたい、聞きたいわ。」

フランドール「私は〇〇は壊さないから、〇〇も壊れないでね?」

咲夜「お待ちしていました〇〇さん。さぁ、お部屋へ案内します。」

レミリア「紅魔館の主として新しい住人を歓迎するわ。今日から私達と貴方の新しい運命が始まるのよ。」

【マヨヒガ】
藍「家具は紫様がもう運んであるぞ〇〇。早々と目覚めていたからな。」

橙「藍様~、今日から毎日が楽しいですね。」

紫「〇〇~、一緒に家具の配置を考えましょう?え?意味がわからない?あらあら、忘れたかしら〇〇。ここは『迷い家』なのよ?」
【博麗神社の場合】
霊夢「〇〇さん、『通りゃんせ』って童謡わかる?行きはよいよい、帰りは怖いってね。だから決界を張った神社が安全よ?だってもう貴方は出れない、出る必要はないわ。」


何処に一番先に行こうともみんな、虚ろの目に歪んだ笑顔で迫られあっさりと【永久就職】することに気付かない〇〇であった。

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最終更新:2023年11月16日 08:58