冬の夜は寒い。幻想郷の冬の夜もそれに当然当て嵌まる。今夜も俺は風呂から出て、服を着替えた後にブルブル震えながら敷きっぱなしの布団の中に体を入れていく。少しでも体が出ていると冷えるので俺は布団の中心で丸くなる。やっと体温で少し暖かくなってきたと思ったら次の問題が発生しちまった。

スパァーン

藍「○○。暖めに来てやったぞ!」

勢いよく戸が開いたと思ったら案の定、藍さんだった。俺はもぞもぞ動きながら布団から頭だけ出す。見上げると来てやったぞ感がバリバリな藍さんが仁王立ちしていた。今思い出せば藍さんとの最初の出会いは何とも言えないものだった覚えがある。

俺が昼飯として稲荷寿司をモリモリ食べていたら遠くから見つめられてる気がしたのでそっちの方を見てみるとそこに藍さんが居た。
最初の時には「藍」という名前も分からなかった上に何故見詰められているかも分からなかった。 たけどこの後で名前も何故見詰められているかも全て分かった。

藍「少しいいかい?」

さっきまで割と遠くに居たはずのその人は少し目を離した間にかなり近くに来ていた。

藍「私の名前は「藍」と言うのだが、少し君に例え話をしたい」

現状が上手く分からない状態が続いていたが、取り合えず話を聞いて欲しいと言われたのを理解出来たのでで、黙って聞く事にしていた。

藍「君の目の前にお腹を空かした小狐が居たとしよう。可哀相な事にあまりの空腹にもはや立っているのもやっとだ。そして小狐は君に助けて欲しそうな視線を送っている。さぁ、君だったらどうする?」

○○「出来れば助けて上げたいですけど・・・」

藍「ほぅ・・・」

少しだけ藍さんは考え込むような表情をしていたが
、すぐに納得したような顔になった。

藍「君の考えは良く分かった。じゃあ、話は早いな」

そう言うと藍さんは手を差し出してきた。丁度犬にお手をさせるような感じだ。俺は思わずその手の上に握った拳をのせる。

藍さんはきょとんとした後にもう一方の手も差し出してきた。そして俺もまたその手の上に拳をのせる。

ますますきょとんとする藍さん。俺はというと「ワン!」っと、言ってみたりしていた。

藍「そうじゃなくてそっちをだな・・・」

藍さんは苦笑いをして、何かを指差していた。どうやら包みに入っている稲荷寿司のようだ。

○○「これがどうかしましたか?」

藍「さっき君に話しただろ?小狐の話を。それが今の私の状態なんだ」

早い話がその稲荷寿司をよこせという事なのだろう。俺は包みから怖ず怖ずと稲荷寿司を差し出す。すると俺の手は掴まれてそのまま藍さんの方に引き寄せられた。

藍「もぐもぐもぐ・・・」

なんと藍さんは俺の手に稲荷寿司をのせたまま食べ始めたのだ。人の手を皿にしなくても・・・。



食べ物は食べていれば何時かは無くなるもの。やっと俺の手の上にあった稲荷寿司も藍さんの胃の中に消えていった。俺の手には若干こぼれた米粒が残るだけだった。俺はやれやれといった感じで手を戻そうとしたが、藍さんは離してくれかなった。何故か俺の手に残っている米粒を見ている・・・。

冗談だろ・・・?嫌な予感がしたので急いで手を戻そうとする。だが所詮は人間の力。妖怪の力に敵うはずが無く、手は突っ張るだけだった。そんな中で藍さんは手に顔を近付けていく。そして嫌な予感は見事に的中してしまった。

藍「・・・レロレロレロ」

藍さんが手を舐め始めたのだ!今まで手を舐められた事なんて無かったので背筋を何かが這っていくような感覚がした。

○○「ちょっ!藍さんやめて!」

全くそんな事は聞こえないかのように手を舐め続ける藍さん。俺はそれに従うしかなかった・・・。


終わった時には俺の手は唾液まみれでべったりしていて、藍さんは舌なめずりしながら「ご馳走様」と言っていた。その時の藍さんの顔はかなり妖艶だったはずたが、俺は早く手を洗いたい事で頭の中が一杯だった。


それからというもの稲荷寿司のお礼をするために何回も家にやって来るのだ。

最初の一回くらいは飯を作りに来てくれたくらいだったので普通に感謝していたが、最近は間違った方向に走り始めてる。

寝る時には自分の尻尾を布団にしろと言ったり、床に寝転がろうとしたらいつの間にか藍さんの膝が待ち構えていたりと、何か落ち着かない。

だから今回のこれもその一つだろう。適当にあしらっといて早く帰ってもらわなければ。

藍「○○。寒いんだよな?私の体温で暖めてやるからな」

そう言った後に藍さんは何処から取り出したか分からない布団を俺が寝ている隣に敷き始めた。なんで枕が二つあるんだ?

藍さんは敷いた布団の中に入っていき、頭を枕にのせた。そしてこちらを向いてもう一つある枕をポンポンと叩いてる。横に来いという事なのだろう。まぁ、行かないが。

俺は藍さんと反対方向を向いて寝る事にした。それがこの場をしのぐ唯一の方法に思えたからだ。

だが、現実は厳しかった。後ろから伸びてきた尻尾に気が付かなかったせいであっという間に藍さんの布団の中に引き込まれてしまったのだ。

藍「そうか。そんなに暖めて欲しいのか。大丈夫だぞ○○。しっかりと暖めてやるからな!」

むぎゅうと抱きしめられる。正面から抱きしめられてるわけでは無いので少しは恥ずかしく無いが、やはり全体としては恥ずかしい。少しでも離れるために抵抗をしてみたが、無駄な事だった。今日は諦めるしかなさそうだ。俺は次からは戸に鍵でも付ける事を考えながら瞼を閉じた。


○○が寝息を立て始めた事を確認すると、藍は次の行動にでた。

○○を正面に動かしてじっと顔を見る。そして気付かれないようにそっと舌を首筋に這わせる。○○の味だ・・・。最初の時の手と同じ味。

そのまま顔や耳にも舌を這わしていく。○○も若干反応しているのか、ピクピクと動く。だが起きる事は無かった。

そしてまた首筋に顔を動かすと強く吸い付いた。一番目立つ場所にまるで印のように。

藍「この私がここまで欲しくなるとはな・・・。紫様にお願いして・・・いや、ここはやはり自分の力で・・・」

藍が色々考えている時に○○は藍に吸い付かれ所を寝ぼけながらポリポリとかいていた。何か虫にくわれたと考えながら・・・。全てを吸い付くそうとする存在がすぐ近くにいる事を知らずに・・・

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最終更新:2019年12月12日 17:48