前スレの969の続き。ヤンデレ夫妻の日常。



紅魔館サロン


第○○回目 外来人支援会会議


そんな立て看板が掛けられた室内では、円卓に4人の人物が長椅子に腰掛けていた。
彼らの前には書類や本が積み重ねられており、疲れた表情は長い討議を重ねている事を示していた。

「さて、越冬に関する事案はこれ位だが……他に質問や異議や意見は?」
「ありません」
「問題なし」
「ちゃー」
「そうか、じゃ、今回の会議はこれで終わりだ。お疲れ様」

外来人達の住んでいる家々の補強や補修に対する討議が終了し、3人が大きく伸びをしたり首の骨をコキコキと鳴らす。

「まぁ、俺達で援助出来るのはこれ位だな。やりすぎて依存させたらいけないし……」
「その懸念は解りますよ。私達の出来る事はたかが知れてますしね」
「だぁな。その辺は幻想郷になって変わらないと」
「ばぶー」

と、4人の手前に突然紅茶が並べられる。
一人前だけ、哺乳瓶に入ったミルクだったが。

「咲夜、ご苦労様」

時間を止めて仕事をしたのであろう従者に労いの声をかけ、○○は紅茶に添えられた血液の入ったビロウドの瓶を開ける。
紅茶にトクトクと注がれていく血液を見て……半透明の作務衣姿の青年××と紫色の長衣を来た青年□□は顔を顰めた。

「何だよ……しょうがないだろ。血液飲まないと身体の調子悪くなるし、レミリアと咲夜の機嫌が悪くなるんだから」

ちなみに吸血鬼である○○は、レミリアか咲夜の血しか飲むことを許されない。
そして最近のレミリアは○○の血を愛飲し、他の人間の血は滅多に飲まなくなった。

「愛がありますねぇ」
「だな」
「ちゃ」
「そんな事言うなよ。お前達だって同じ様な愛を受けているじゃないか」
「「「…………」」」

4人は顔を合わせて嘆息する。
ちなみにこの会議、メンバーは総数で五名だが今日は1人欠席している。
永遠亭の薬師の旦那である◇◇は嫁が調合した『愛のあるビタミン剤』を静脈注射した結果、外出出来ない状態になったという。
彼を迎えに行った××の脳裏に白目を剥いて滝のような汗を掻いていた◇◇の姿が過ぎる。
と言うか、『愛のあるビタミン剤』って何だろうか。効能は知りたくもないが。




「ちゃーばぶー」
「おお、悪いな△△。早苗さんじゃなくて俺が飲ませてやるよ」
「ぶぅー」

××がその場の雰囲気を飛ばすように、補助席に座った赤ん坊……△△の口に哺乳瓶をくわえさせる。

赤ん坊△△は去年までは二十代前半の青年だった……年明けの頃に赤ん坊になっていたが。
△△に事情を聞くと、気が付いたら嫁さんである東風谷早苗の胎内に自分が仕込んだ受精卵に居たらしい。
暫くの間フランス人のスタンド使い状態になっていたが、どうやら嫁さんが奇跡の力を惜しみなく使い自分の子供として産み直したとか。

嫁達のアレな行動に慣れていた他の4人ですら驚嘆させた行動であるが、△△曰くまぁ、納得はしてるとか。

『俺、赤ちゃんプレイとか憧れてたんだよ。だから、こんなのも悪くねぇかなって』

思念翻訳機から出て来たこの一言で同志4人にドン引きされていたが。

と、ズズンと鈍い音が床を揺らす。

「ん、なんだ。魔理沙でも押し掛けて来たのか?」

迷惑そうにクッキーの皿を押さえる○○に、□□がカーテンを少しだけ開けて顔を顰める。
確か、向こう側では自分達の嫁達が集まってお茶会を開いている筈だ。
その筈だったが、ガラスの割れる音や建築材が粉砕される音が絶えず聞こえるのは何故だろうか。

「いや、どうやら向こう側のサロンで弾幕戦やってるみたいだ」
「蝶々飛んでる……ゆゆちゃん、やる気満々だねぇ。妖夢だけじゃ止められないみたいだし」

白玉楼の女主人に死んで婿入りさせられた××が、頭をポリポリと掻きながら呟いた。
あの様子では女房は喜んで弾幕合戦しているらしい。
元々血気盛んな従者(兼愛人)も興が乗れば参戦して被害拡大確実だろう。

パチュリーも止めてないみたいですね。小悪魔さん(愛人)とも連絡が取れませんし……全く。魔法使いは冷静たれって僕には何時も言う癖に」

気が付いたら魔法陣の上に寝てて、気が付いたら人間止めて魔法使いの身体になっていた□□がぼやきながら防御陣を部屋の隅に描き始めた。

『ばぶ?』
「え、何が原因で大喧嘩してるかって? 大方旦那へ対する愛情とか夫婦生活の自慢の仕合で互いにケチつけてカチンと来たんじゃないか」
「まぁ、大方そうでしょうねっと。一応防御してありますがあんまり持ちませんよ。逃げる時はさっさと逃げてくださいね」
「あいよー。でも○○は大変だな。ここが家だし」
「全くだ……もう少し自重して欲しいよ私達のお嫁さんは」

自重できるような人達だったら、もう少しまともな恋愛を育んでただろうね。と4人は嘆息する。

スペルカードが炸裂したらしく、向こう側のサロンの天井が吹き飛ぶのが見える。
天空に向かって飛んでいく魔力で出来た槍を見送りながら○○はぼやく。

「曇天だからって頑張り過ぎだぞレミリア。また妖精メイド達を動員して補修しなきゃいけなくなるな……」

溜息を付いた○○の嘆きは、より高くなった弾幕音に掻き消されて聞こえなくなった。

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最終更新:2011年02月11日 21:22